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世界的ブームとなった2つの「フルネス」とは

①ファクトフルネスって、当たり前のことでは?

ファクトフルネスとは、事実に基づいて世界を見ること。これだけを見ると、至極当たり前のことを言っているだけに思う人も多いのではないか。昨今のAIブームの波に乗って、機械学習や深層学習などの、データという事実に基づいてた世の中の森羅万象を分析しよう、という考えが普及が進んでいる。それでは、この本が世界的ベストセラーになったのは、AIブームの波に乗っただけの便乗本なのだろうか?

②「問い」の建て方が秀逸!

本には「問い」と「答え」がある。そして、それぞれ読者にとって「既知」のことなのか、「未知」のものなのか、によって分類できる。

この本の「答え」は、前述の通り、「事実に基づいて世界をみることは大事」という陳腐な内容だ。この本が秀逸なのは、「問い」の建て方にある。冒頭に世界の事実に関するクイズが13問の3択問題が出される。具体例を見てみよう。

問1:現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう? A:20%、B:40%、C:60%

問3:世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう? A:約2倍になった、B:あまり変わっていない、C:半分になった

いかがであろうか。答えはともにCと最もpositiveな内容だ。いわゆる先進国に住んでいる学生でも、自信をもって回答するのは難しいのではないだろうか。学校卒業をしたのがはるか昔という大人にとっては猶更ではなかろうか。

と言っても、落ち込む必要はない。已むを得ないことだと本書では慰めてくれる。なぜなら、世界のエスタブリッシュメントとされるジャーナリストですら、この問いに正解することが出来ないのだから、その情報を見聞きする立場の私たちも間違えて当然なのだ。これは人間社会の構造的な課題なのである。

③ファクトフルネスに人々が求めるメリットは?

それでは、ファクトフルネスの考え方を習慣にすると、どういうメリットがあるのであろうか?その答えはこれである。本書の後書きにある言葉、

事実に基づいて世界を見ると、心が穏やかになる。ドラマチックに世界を見るよりも、ストレスが少ないし、気分も少しは軽くなる。

コロナ禍により世界中に混乱を巻き起こっている最中の昨今、偏った、不安を煽るニュースに辟易としていた人からすると、なるほど、とストンと腹落ちした言葉である。敢えて意訳すると、「心を整えること」と言えるかもしれない。

④ファクトフルネスとマインドフルネスの共通点

これを見て、おやおや?と思った方もいるかもしれない。そもそもファクトフルネスという造語は、マインドフルネスを参考にして作られたとされる。ちなみに、マインドフルネスの意味は以下である。

「マインドフルネス」という言葉の意味
「マインドフルネス(mindfulness)」という言葉は、仏教の経典で使われている古代インドの言語の「サティ(sati)」という言葉の英語訳としてあてられたもので、「心をとどめておくこと」あるいは「気づき」などと訳されます。英語には、「気づかう」「心配りをする」という意味の「マインドフル(mindful)」という形容詞があります。マインドフルネスの概念では、マインドフルとは「『良い・悪い』などの価値判断をすることなく、完全に『今この瞬間』に注意を向けている心の状態」を指します。

ファクトフルネスの方向性が外部(世界)、マインドフルネスが内部(自分の心)と方向性が違うものの、求めていることは同じく「心を整えること」と言えるのではないだろうか。

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2つの「フルネス」は、どこかの1つの国のブームではなく、世界的ブームになっている。このことは、世界中の人々が、以前よりもネットやスマホの普及により情報の洪水にさらされる中、心の平穏・平安を得られる方法が求められている。要は、繰り返しになるが、「心を整える」術を求めている、ということの証左と言えるのではないだろうか。



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