わかってるよ

丸くなって寝るのが好きだ。というより、私の癖なんだと思う。「最近腰の調子はどう?」と恋人が云う。わかってるくせになあ。

「丸くなって寝るのは腰に負担なんだよ。ちゃんと仰向けで寝ないと。」

うるさいなあ、と私はそっぽを向く。わかってるんだけど丸くなって寝るのが落ち着くの。私の癖なの。彼の"お小言"は私を思ってのことだとわかっても煩わしく感じてしまう。

「ホラ、また、ささくれ。」

ああ、またやってしまった。苛々している時にささくれを剥くのも私の癖。ねえ、全部わかってるよ。お母さんじゃあないんだからさあ。いちいちうるさいってば。でも、私も彼の煙草の量に対して文句を言ってしまう。

「わかってるよ」と彼は云う。不貞腐れた横顔を愛しいと思う。珈琲にミルクと、砂糖を2つ入れて彼に渡す時、わざわざ珈琲にしなくてもいいのに、と笑う。わかってることをお互いに言い合いたいんだ。これが私たちの愛なんだと思う。

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