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仕事中に焼きたてのメロンパン
最近、パン屋でメロンパンを選ばなくなった。
昔はすごく好きだったのに。
何年か前に生クリームがサンドされたメロンパンを食べて以降、シンプルメロンパンが並んでても「生クリーム入っていないんだなあ」とちょっとだけがっかりしてしまうようになってしまった。
私の中で『美味しいメロンパン』が生クリーム込みの思い出になった。
生意気だ。
何なら他のパンも生クリームをつけて食べたい。
そんな私。
ある日仕事で外を歩いていると、いつも外まで5.6人並んでいるパン屋がガラガラな事に気が付いた。
平日の11時はこんなにパン屋が空くのか。たまたまなのか。考えているうちにお店に吸い込まれていた。
いらっしゃいませーの元気な声とパンが焼けた匂いに包まれる。
パン屋に入ると自分もちょっと膨らんだ気がしちゃうのは、いつもより呼吸の吸が多くなるからかもしれない。
1人きりのパン屋ってなんて贅沢な空間なんだろうか。もし魔法が使えたなら、スーツ姿をふわふわのドレス姿にビビデバビデブーしていただろう。
ゆったりとショーケースの中のパンを眺める。
お店の顔は塩パン。クロワッサンも見るからにサクサク。でも私が一番好きなのはこのお店のクリームパン。
気の向くままにパンを買えるのも贅沢だけれど、ここで最高の一個を決めるのも贅沢。
今日はこの中から一つ選ぼう。
店員さんがにこやかに待ってくれている。
いつもだったら焦って注文してしまうところだけれど、今日の私は違う。ドレスをフワフワさせながらめいいっぱい悩ませてもらう。
そろそろスーツ姿に戻りそうで焦ってきた時、奥からメロンパン焼き立てでーす!と元気な声が聞こえた。
それぞれ作業をしていた店員さんたちも焼き立てでーす!と続く。
私の為に焼きあがったといっても過言ではないほど手厚く教えてくれる。
目の前でメロンパンがきれいに並べられていく。
メロンパンにしか目がいかなくなってしまった。
一目ぼれってこういう感じなんだろうな。と思いながらメロンパンを注文した。
ふかふかした気持ちでお店を出る。
紙の袋越しにも焼きたて具合が伝わってくる。
今日のお昼にしようと思って買ったのだけれど、さすがにこれを冷ますのは大罪だろう。
でも一応仕事中なのでメロンパンをかじるのは気が引ける。
少しちぎって食べる分には良いかな。
立ち止まってひとくち分、ちぎる。
優しい甘さの湯気がのぼる。
食べる。
あまりにも美味しくて少し笑ってしまった。
パンはきめ細かくてふわふわ、クッキー生地はサクサク。
もうひとくち、ちぎる。
もうひとくち、ちぎる。
口いっぱいにほおばりたくて、かじりつく。
道の端っこでメロンパンにかじりついている自分を客観的に見て、サボってるなあといじりながらも、この人は楽しく生きるんだろうなあと嬉しくなった。
あっという間に食べ終えてしまった。
もう一個買いたいところだけれど、もう少し食べたいの気持ちを楽しんでおこう。
久しぶりのメロンパン。
美味しいメロンパンの記憶は生クリームありなしどちらも丁寧に保管しておくことにした。
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