最後の晩餐

最後の晩餐は何がいいか、と聞かれたらまっさきにビーフフォーと答える。早期退職してひっそりとフォーの店を開こうと企んでいるほど、私のフォーへの情熱は燃え盛っている。マレーシアに来るまではフォーにそれほど特別な思い入れはなかった。日本では何故かチキンのフォーをよく見かけるが、チキンフォーはそれほど熱狂的に愛してる訳では無い。おいしいとは思うが、それだけだ。加えて、大抵の店では乾麺を使用していて、モチモチ感があまりない。ベトナムへ行く機会もあったが、ビーフフォーの美味しさを知らなかったので、ブンチャーや生春巻きばかり食べていた。

私の「フォー観」を変えたのは、マレーシアで出会ったAn Vietというお店である。友達に進められたビーフフォーのスープを1口飲んだ瞬間、感動した。あっさりしていながらも牛の旨味が詰まっている。さらに麺をすすった瞬間、更なる衝撃をうけた。自分の知っているフォーの麺とはまるで違う、半透明で柔らかくモチモチした少し縮れた麺だった。薄くスライスされた牛肉も柔らかくて美味しい。自家製だというシラチャーソースもさらなる魅力を引き出してくれて最高だ。この瞬間、私はビーフフォーに恋をした。

それからは狂ったようにフォーを食べ続けた。ロックダウン中は週3ペースでデリバリーを頼んでいたように思う。他のベトナム料理店にも行って食べ比べもしたが、An Vietのフォーはかなり私好みであった。日本に一時帰国した時でさえ、ベトナム料理店を探してはフォーを食べに行った。もはや中毒である。(ちなみに私のおすすめは国立駅そばのPho Nanaというお店だ。)

もはや私の体の3分の1くらいはビーフフォーで出来ていると言っても過言では無い。こんなに夢中になれる食べ物に出会わせてくれた友達と、An Vietに感謝。


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