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エビデンスベースドマーケティングの考えをDevRelに転用したい理由

最近、マーケティング関連の本を読みあさっている。

その中で、アカデミックな分野のマーケティング手法が、DevRel活動の成果を最大化することができるのではないかと考えるに至った。以下、読んだ本をまずは紹介したい。


バイロン・シャープの「How Brands Grow」

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11を読んだ。

コトラー時代のマーケティングから科学的手法のマーケティングへと誘っている。ダブルジョパティの法則を筆頭に今まで語られてきたブランドのあり方を見直している。

態度が行動を促すのではなく、行動が態度を促す

認知は持続性。広告は関係性構築の基盤となり、辞めた時の影響が大きそうだと知った。ブランド想起で考えると、「ケンタッキーにしない?」といった最近のCMのバランス感覚も理解できる。

 独自のブランド資産の強さを判断するときに、考慮すべき2つの重要な基準が存在する。

1.ユニークか?
2.広く認知されているか? 

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11
p.182

差別化ではなく独自性を主張する点はむしろ競合意識以上にブランドの在り方と見せ方の重要性を感じた。結局、市場浸透率を意識していくしかない。消費者に記憶してもらい、思い出させることで独自性を確保するのだ。

メンタルアベイラビリティを全力で向上する。そのためにも、フィジカルアベイラビリティで購入機会をちゃんとつくること。これは、UI/UXにも関わることで、入り口のデザインの話も絡んでくると学んだ。

なお、続編となるブランディングの科学 [新市場開拓篇] エビデンスに基づいたブランド成長の新法則も読んだ。こちらは冒頭が復習がてらの要点まとめなので導入部がわかりやすい。

フィジカルアベイラビリティ(physical availability)
 ブランドの存在感が高まっていく多くの消費者に幅広い購入機会が提供さている状態。具体的には配下の質と量のこと

ブランディングの科学 [新市場開拓篇] エビデンスに基づいたブランド成長の新法則
序文 p.006

特にフィジカルアベイラビリティの言語化の詳細が参考になる。第9章では、競合よりも常に購入しやすい状態について細分化している。これは、ブランドのデザインの話にも通ずると感じた。

Presence(プレゼンス):ブランドに存在感はあるか?
Relevance(レレバンス):ブランドは買いもとめやすいか
Prominence(プロミンセンス):ブランドは目立っているか?

ブランディングの科学 [新市場開拓篇] エビデンスに基づいたブランド成長の新法則
p.225 図8-1 フィジカルアベイラビリティの3要素 より

認知したから即購入するとは限らないが、ブランドの存在や購入したあとの存在感がロイヤリティを高めることを我々に教えてくれる。なお、相変わらず、様々な俗説をぶった斬っている点が続編も爽快だった。

エビデンスベースドマーケティングをDevRelに適用する

マーケティングのアカデミック分野には多くの学派が存在している。フィリップ・コトラーの時代にはじまり、進化論マーケティングやデータドリブンマーケティングなどもあり、様々な考え方が提唱されている。

どの学派も歴史とともに語られ、様々な分野で補助的な役割を果たしている。先ほど紹介したエビデンスベースドマーケティングと合わせて、関係性マーケティングと進化論マーケティングの本も読み進めている。

マーケティングの核心は利用者の行動を理解し、行動変容を促すことだ。これはDevRelの活動においても同様で、初期からマーケティングの手法が強調され、昨今はコミュニティとの関係性も重要視されている。

そこで、DevRelや採用活動にこの考えを転用し、理論をベースに後付け分析を行い、体感したことを明確にしたい。エビデンスベースドマーケティングにおいては、以下の二つの法則をおさえておきたい。

ダブルジョパディの法則

ダブルジョパディの法則は、ブランドの市場シェアが低いほど、顧客のロイヤルティおよび購入客数が低いという現象を指す。そのため、市場での存在感を増やすことは、顧客ロイヤルティを高める前の重要なステップとなる。

これをDevRelに転用すると、既存顧客と新規顧客のバランスをどのように取るかが鍵となる。既存顧客のロイヤリティ向上だけでなく、新規顧客を引きつけるためには、参加しやすさを意識的に設ける必要が大事となる。

1.ブランドの成長と維持には顧客の獲得が極めて重要である。
2.すべての消費者層、特にブランド購入頻度の低いライトユーザーにリーチすることが極めて重要である。 

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11
p.89

たとえば、connpassなどのイベントプラットフォームの活用や定期的にSNSやWebで技術情報を発信することは、DevRelで日々行っている活動の一つだ。このとき、新規顧客へのリーチ意識を怠らないことが学びとなる。

また、イベントの頻度を増やすことも、サービスへの関心を持続させる上で効果的だ。より多くの幅広い層へのリーチを強化することに繋がり、技術的認知度やエンゲージメントを向上させる効果がある。

現場視点では、直感的には「わかっているつもり」のことを学術的な視点から裏付けることで、より自信を持って活動することができる。特に、まだ顧客ではない人々へのアプローチを継続することの重要性を再認識できた。

この流れを踏まえると、次にKPIやROIの指標設定が必要になってくる。その際に改めてブランディングであるという視点に立ち戻りたい。独自性をアピールし続けることが大事なことは次の法則からも読み取れる。

メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ

次に、メンタルアベイラビリティ(心理的可用性)とフィジカルアベイラビリティ(物理的可用性)の法則に焦点を当てたい。この二つはブランド成長に不可欠な要素とされている。

メンタルアベイラビリティ(mental availability)
 消費者のブランドにかかわるすべての記憶のことで、ブランドロゴやパッケージの形やブランドカラーなどのブランドの構成要素から、なぜ・いつ・どこで・誰と・何と一緒に買う・使うのか

ブランディングの科学 [新市場開拓篇] エビデンスに基づいたブランド成長の新法則
序文 p.005

この法則は、製品やサービスが消費者にとって容易に入手可能であり、心理的にもアクセスしやすい状態を維持することが重要であると強調している。これは製品の想起やアクセシビリティの重要性と直結している。

これらの原則を理解することで、広範囲にわたるエンゲージメントとサービスの認知度向上を実現できるはずだ。開発者コミュニティの関係性構築と強化においても、これらの原則は転用可能だろう。

前述のイベントの頻度を増やすことも、ブランドのメンタルアベイラビリティを高める一例でもある。ブランドやイベントの認知が参加申込みに影響を与え、参加時の関係性構築とコミュニティ形成に貢献する。

そして競合他社との差別化に注力するのではなく、独自性(本書にもあるが奇抜さではない)に向き合って発信し続けることが関係性を維持しし続けることにつながると理解した。

これには、コアファン(ロイヤリティが高い人)だけでなく、ブランドを「なんとなく知っている」という人々にもアプローチし、ブランディング努力を続けることが含まれる。

他のマーケティンングも戦略的に取り入れたい

DevRelも定量やROIが求められている昨今でもあり、戦略的な行動がますます重要となっている。採用や育成においても、多面的な能力が必要とされている。

DevRelにおける持続可能性の重要性は、テックブログの運営を例にとると明らかだ。知識を持続的に更新し続けていることが大事で、辞めた途端にその効力が失われる。知ってもらい続ける必要がある。

この手の書籍を読みながら、実践したことを自分たちのロジックとエビデンスに基づいて整理し、ルンバのようにぶつかりながらでも最適な行動パターンを見つけることが重要であると再認識した。

まずは行動。その上で、これらの学術の力をお借りする。

特にリソースの適切な管理が今後のポイントになるだろう。そのためには、現在調査中の別のマーケティングの理論を借用し、さらに効果的な考えを展開していきたい。


引用画像:https://dl.ndl.go.jp/api/iiif/12772597/R0000005/664,686,1512,1096/,800/0/default.jpg

滝沢清 編『求古図録』,松崎半造,明18.3. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/12772597/1/5/ (参照 2024-05)


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