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加古川刑務所の一般区には、まだ顔つきが犯罪に染まっていない連中が集まる。変な初々しさと…
「さすがに手が震えましたよ。10万円ですからね。100円が10万円。いや、正確に言うと800円、で…
明るくて短い髪に、コーヒー色のニットベストがよく合っている。切れ長の目と薄く整った唇か…
鈴虫の鳴き声につられるような夜だった。衝動買いしたコーチジャケットをクローゼットに仕舞…
ナマケモノくんはギャンブルが大好きです。 とりわけ舟の競走がお気に入りで、いつも最終レー…
水面の青は、あらゆる色相に跨っていた。 航跡が上がるにつれて、心地よい高揚を認識する…
ナポレオンが消えた。 新緑に被さる朝靄は、どこか荘厳であった。いつものようにナポレオンを誘って、拾い煙草で一服つけるつもりだった吉川は、生あくびをするほかなかった。 「ナポさん、仕事っすか?」 路上で缶に細工をしていたサワムラに声をかけた。汚れた髭を撫でながら、缶のプルタブにライターの火を近づけている。答えはなかった。サワムラの日課の邪魔をしては悪い。吉川は返答がなければさっさと立ち去るつもりだったが、その無言に胸騒ぎがした。 「え、まさか――」 その先は続けられなか
目が覚めると、男は崖の端に立っていた。重たい雲が遠くに見える。それを跳ねのけるように、…
いつものようにレモンサワーとハイボールを買い込んで、古くさいインターホンを押した。甲高…
不快な音に起こされた。顔に汗の玉が転がっているのを感じる。どうやら寝ている間にリモ…