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読書記録 | アーヴィングの「リップ・ヴァン・ウィンクル」の回想

現代は小説家のアーヴィングといえば、ジョン・アーヴィングを想像する人が大体ではないかと思うが、私にとっての小説家アーヴィングはワシントン・アーヴィングである。

ではこのワシントン・アーヴィングがどのような作品を遺しているかというと、代表的なものに「スケッチ・ブック」という作品集がある。

こちらは数年前古本屋で見つけたもので、他にも岩波文庫の上下巻構成なども古本市場では買い求められるものではあるが、私が所蔵している最古のもので明治時代の書籍がある。

こちらは文章の至る所になぜかボッ点だらけで、目に障る感じがある上、旧字で文語体のため読みにくいことこの上ないが、当時の風情を感じるのにうってつけの書籍といえる。

さて、この新潮文庫版は現在求めやすいのは、「スリーピー・ホロウ」の首なし騎士デュラハンがカバー画のものであり、それはジョニー・デップ主演の同タイトルの映画の一場面である。

閑話休題、この「スケッチ・ブック」は地方の口碑伝承を小説化したものや、作者アーヴィング自身の体験と思われるいわゆる随筆と小説の間のような独特の作品が集まったものである。

特に随筆の叙情性高い内容は、読者の情感を誘うもので、どの作品においても甲乙付け難いものである。

そして口碑伝承の小説側になれば、最も有名な「リップ・ヴァン・ウィンクル」という不思議な話が興味深い。

そもそもタイトルが主役の名前であるこの作品は、主役のリップが森の中の奇怪な酒宴に参加したのち18年間眠り続け、起きたら周囲ががらりと変わっていたという、変型タイムスリップものである。

あの森の中の酒宴に居た人々は何だったのかという点は少しゾットするのであるが、リップ自身のよい意味で臆面なく素朴な人柄が、読者をおとぎ話を読んだような感覚にするのである。

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