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武蔵野地域の印象

_4年ほど前、東京の西の文化圏から引っ越し、今の場所では丁度一年ほど生活している。ここは、埼玉県の武蔵野地域。
_初めの印象は、大きなベッドタウン。クレヨンしんちゃんの生活圏をイメージしてもらうと近い気がする。まさしく埼玉県春日部市を題材とした漫画ゆえ、埼玉県をとても的確に表している世界観であって、一見平凡に見えるしんちゃんの住む住宅地は、日本全国どこにでもありそうだけど、多分埼玉県でしか見られないであろうとても特色ある風景なのだと最近は考えている。というのは、埼玉県を覆う関東平野というだだっ広い平野部には、満遍なくJRと私鉄が張り巡らされていて、川や沼を除いてその殆どが人が住めるような平地なのだ。そこへ昔からある農地や新興住宅地、商業施設が延々と広がっている。何よりクレヨンしんちゃん足らしめているのが、人口の新陳代謝が活発である点であるように感じる。
_クレヨンしんちゃんの世界は、1990年に連載が始まり、今年で34年が経つが、私の今住む場所を眺めてみると、子供の数や町の活発度、地域的な格差の均等度合いなどその世界観がおよそ変わっていないのだ。それは、人口流出、出生率の低下という問題を抱える街を幾つも転々と暮らしていた私にとって非常にショッキングで、正しく私の産まれた三十数年前の世界を見れているような高揚感が芽生えている。
_以上は、新興住宅地の話である。私がもう一つ興味があるのは、この土地に根付く農村部の生活様式だ。車や自転車で走っていると、農村部に多く出くわす。というか、住宅地のすぐ裏は赤土の巨大な畑の風景が広がっている。私の暮らす地域は田園と野菜畑の丁度真ん中で二つの特徴的な農地風景を見ることができるのだが、今回は、野菜を主に作っている「武蔵野の落ち葉堆肥農法」という農法に因んだ農地の特色に注目したい。
_再度アニメの話になってしまうが、となりのトトロを想像してほしい。この映画も埼玉県西部を題材としたものだから、正しくその風土が今も根付いていると思っていいと思う。畑と小川と沼と小高い丘、小さな神社が山の中にあったり、畦道が幾本も走り、ところどころに大きな農家が建っている。耕作放棄地は皆無でどの畑も繊細に手入れされている印象だ。
_トトロの劇中ではどうだったかわからないが、武蔵野地域の農地はとても特殊だ。というのは、農地が細くてめちゃくちゃ長い所謂「短冊農地」なのだ。これは、富士山の火山灰で出来上がった関東ローム層の特徴から、いかにして野菜作りの土壌を作っていったのかが目に見える形であり、その苦労も垣間見える。それを説明する三芳民族資料館の画像を見るとわかりやすいのだが、平野の中に二本の丘を作り、雑木林を育てた。林は防風林の役割をするので、片方の林に家を建て、もう片方の林までの間に細長く幾つも区切った農地を整備し皆んなで分けたのだ。連作しないように区切った農地には時間差で様々な作物を育て、冬には雑木林から肥沃な堆肥を撒くことができる。お墓も林の中にあり、トトロに出てくるような巨木が幾本も生えていることから、今でも大切に管理されていることが窺える。
_そんな農地を何より身近に感じるのは、正に火山灰で何も作物が作れなかったこの土地を短冊状に地割する政策をとった当時川越藩主の柳沢吉保という人物が武田滅亡後徳川家に組み込まれた武川衆の末裔であり、現在恵林寺に墓のある方だったという発見があった。
_以上が一年経っての備忘録。

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