第５５回理学療法士国家試験PM８２

解説

義肢装具の過去問解説です！

幻肢：手や足を失った患者がその失われた部位に痛みを感じるという身体的感覚のこと。

【幻肢】
・持続時間は平均６M～２Yと個人差がある。
　幻肢は徐々に短くなり消失することが多い。
・幻肢の大きさは健側とほぼ同様。
・幻肢の形態は、外界温度・湿度により左右される。
・幻肢の現れ方は1種類ではない。
・幻肢は６歳以下の小児切断例では出現しないとされていた。
　理由：幼児期の早期に姿勢・運動および触覚の刺激によって身体図式を
　獲得し、６歳頃にこの図式が安定するといわれているから。
　しかし
　⇒小児切断の幻肢は、切断者の95～100％に切断直後から幻肢発生する。
　そのうちの70％に幻肢痛が出現する。
　先天性四肢欠損の10歳以上の患者７６人のうち15人（19.7％）にも幻肢が
　あったことから、先天性四肢欠損の患者においても幻肢は出現していた。
・小児の後天性四肢切断は男児時に多い。
・小児の義手政着開始時期は4～6ヶ月頃が適切。
　下腿切断では成長に伴い内反膝変形を生じやすい。
　化学療法により患肢温存が可能となったことで、骨肉腫が原因の切断は
　減少した。
・四肢末梢部ほど明確に感じ、強く出現する。
　下肢より上肢の方が起こりやすい。それは大脳体性感覚野の領域が大きい
　ため。
　術直後義肢装着法には、幻肢の予防効果がある。それは視覚的イメージや
　断端感覚の熟成で効果がある。
　リジッドドレッシングは、創治癒が良好で早期から断端の成熟、断端痛・
　幻肢痛が少ない。だが血管原性による切断の場合、治癒が遷延するため
　使用を避ける。
　ソフトドレッシングは、術創部の治癒過程の確認・簡便であることが利点
　である。

幻肢痛：体の一部（通常は手や足）が切断されたにもかかわらず、そこに感覚や痛みを感じるものである。
先天性切断：一時的な子宮内成長阻害、または二次的な正常胚組織の子宮内破壊により四肢が欠損した状態のことである。

参考文献
日本整形外科学会：義肢装具のチェックポイント、第9版第1刷、医学書院、2021。