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試し読み:『Bamboo 背景画集』

2021年5月21日刊行の『Bamboo 背景画集』。本書はアニメーション背景制作会社・Bambooによる初作品集です。
18作品、500点以上の美麗な背景美術を収録した1冊となっていますが、絵だけではなく、Bambooさんによる解説やメイキング、インタビューも見どころ。

今回は特別に巻末インタビューを一部公開。Bamboo代表の竹田さん、『攻殻機動隊 ARISE』『ペンギン・ハイウェイ』『泣きたい私は猫をかぶる』美術監督の益城さん、『SHIROBAKO』美術監督の垣堺さんにお話を伺っています。

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Bamboo スタッフインタビュー
竹田 悠介/益城 貴昌/垣堺 司

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──みなさんはBamboo 初期からのメンバーとのことで、会社のことやお仕事のこと、絵作りについてなど色々なお話を伺いたいと思います。まずはアニメーション業界へ入る前後のご経歴や入社のいきさつなど教えて頂けますでしょうか。

垣堺 経歴については、恥ずかしながら成り行き的なところがあるのですが…美大の在学中にProduction I.Gさんと取引をされていた先生がいまして、その先生の紹介でI.Gへ制作進行として入社しました。その後デジタルと紙描きが過渡期の時期に、背景をスキャニングして色を調整する仕事をやってみないかと声をかけられ、デジタルワークスという部署へ異動しました。そこでスキャンしながら見ていた背景が素晴らしくて、自分でも描きたいと思うようになり、背景のスキャンでご縁のあった小倉工房の小倉(宏昌)さんに頼み込んで移籍することになりました。しばらくは紙描きでやっていたのですが、自分の技術的な限界を感じることなどもあり小倉工房を退社しようかと考えていた頃『精霊の守り人』(美術監督を竹田氏が担当)の打ち上げで竹田に会い、後日うちに来ないかという話になって。
竹田 垣堺はデジタルワークスをやっていたので、デジタルにすごく強いんですよ。小倉工房を辞める際にゲーム業界などにも興味があったみたいなんですが、この人材をゲーム業界に放出してはいかんぞと思って。
益城 自分は絵を描くのが得意だったので絵の仕事に就きたいと思い、代々木アニメーションの背景画の1年コースを卒業して美峰へ入社しました。採用面接の際、竹田が面接官だったと思います。
竹田 益城が入社した年は25人近くも新人を採った年で、串田(達也)さんと2人で教えていました。その中で突出して上手かったのが益城と、今フリーで活躍している東地(和生)の2人でした。代アニでもツートップだったみたいで。
益城 代アニは職業斡旋に長けていて、アニメ業界への就職率が高いのが特徴でした。授業時間が短かったので基礎的なことをすべて学べるかというとそうでもなく、本人のやる気次第というところもありますが。授業はポスターカラーを使って手描きでやっていたんですが、最初はほとんど白黒だけで描くという内容でした。カラーで描くのは夏休みが終わって後半になってからで。白黒で描くと、カラーで描く時よりも陰影のバランスを意図的に覚えることができるんです。今思えば、在学中にその感覚が身についたのはためになりましたね。白黒で描くということは、就職してからは普通はやらないので。美峰には8~9年ほど在籍して、その間に竹田が美峰を退社したんですが、「もし新しい会社を立ち上げるなら自分もついていきます」と気軽に話してたんです。その1年後くらいに竹田から「まっすー、いつうち来るの?」って電話がきて(笑)その月の内に美峰を退社してBambooへ入りました。ああ言ったしな、って。

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──竹田さん、その言葉を覚えてらしたんですね(笑)竹田さんのご経歴を伺えますでしょうか?

竹田 僕は学生時代は専門学校の作画コースに行っていました。もともと絵を描くのが好きだったんですが、動画って本当に細い線を描かなければいけなくて。筆で塗る方が好きだったので、やはり筆で描きたいなと思うようになりました。ところが当時って、背景美術を教われるところがあまりなかったんですよ。調べてみると、『機動戦士ガンダム』や『風の谷のナウシカ』で美術監督を務めた中村光毅さんのメカマンというスタジオで背景の塾をやっていることがわかって。専門学校に1年通ったあとその塾に通うことを決めたのですが、ちょうどそのタイミングで欠員が出て、塾生としてでなく社員扱いで入社することになり、この業界へ足を踏み入れました。
メカマンには1年半ほど在籍していました。業界では『王立宇宙軍 オネアミスの翼』が公開され『AKIRA』の現場が動いていた時で、仲のいい先輩が2人、『AKIRA』をやるために抜けていっちゃったんですよ。これは僕もうかうかしてられないなと思って、『AKIRA』には間に合わなかったんですがフリーになりました。1年半ほどフリーでやっていた頃、お世話になった出渕(裕)さんに『機動警察パトレイバー』に呼んで頂き、小倉さんの現場に入ることになりました。その時に知り合ったのが美峰の代表の平城(徳浩)さんや串田さんでした。1993年にそのメンバーと美峰の立ち上げに参加して、そこから十数年は美峰に在籍していました。

──フリーの期間もあったとのことですが、会社を立ち上げた理由は何だったのでしょうか?

竹田 若い頃メカマンを辞めてフリーでやっていた時期はいわゆる武者修行時代という感じで、いろんな美監さんの仕事を受けに行ったり、I.Gさんから頂いた単発の仕事をやったりしていました。平城さんたちと美峰を作ったのは、『電影少女 -VIDEO GIRL AI-』というOVAのシリーズに参加していた頃です。みんな当時まだ20代前半くらいで、フリーの立場で3~4名で集まってやってたんですが、その頃パソコンでPhotoshopを使って描くということを見聞きしていて。「みんなでお金を出し合ってパソコンを買おうか」という話になりました。昔はMacintoshとプリンターのワンセットで100万くらいしたんですよ。そういうこともあったので、ちゃんとスタジオにしようかという流れになったのがきっかけだ ったと思います。

──機材を共有できるのは会社を構える際のメリットだったのですね。フルデジタルで作業されるようになったのはいつ頃からでしょうか?

竹田 『BLOOD THE LAST VAMPIRE』からです。当時業界の中ではI.Gさんがフルデジタルでの制作の先駆けでした。『BLOOD~』に参加したときに学んだ技術を美峰に持ち帰って、デジタルを正式に運用していこうとなりました。 1999年ごろだったと思います。

──Bambooを立ち上げたきっかけは?

竹田 僕が美峰を退社した頃、3Dに依存した背景制作にどんどん傾倒していた時期でした。当時社長がそういう方針を打ち出していたんです。3Dモデルで背景を全部作って、そこにテクスチャを貼る。作業内容としては素材描きとレタッチという感じですね。でも僕はその路線ではなく、もう少し2Dで頑張りたいなと思 っていて。僕のチームの同僚も同じ考えだったので、それで退社して独立しました。 Bambooの立ち上げメンバーは僕と同じく元美峰の面々で、最初は2人でちょっとエッチなゲームの仕事を受けていました。そこに更に2人合流して各々自宅作業をしていたんですが、メンバーに場所を構えませんかと提案され、不動産屋へ行ってアパートを借りました。その後長編で90分くらいの作品をやることになり、人を増やしました。個人事務所として始めたのが2005年で、法人化したのが2007年です。それで新人を採り始めて。新人の1号が長島(孝幸)、2号が落合(翔子)です。落合は現在京都アニメーションさんで活躍しています。

作品をやる上で大切にしていること

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──日常ものやSF もの、ファンタジー作品など幅広いジャンルを手がけられてますが、各作品で気をつけていることはありますか?

竹田 全部通して言えるのは、「色彩でリアリティを残したい」ということです。勘違いされやすいですが写真的なリアルというわけでなく、「リアル」と「リアリティ」は使い分けたいと思っていて、リアリティは作品固有の説得力、その作品の現実感みたいなことです。『GREAT PRETENDER』は色彩で言うと写実的なリアルではないんですが、グレプリのリアルはあの色彩の中にあると思っています。あれはちょっと飛び出したところにある作品ですが、どんな作品をやっても色彩の使い方だけは現実で目にするものを基準にしたいなと。ファンタジーの世界は自分たちで見ることはできないですが、普段目にするものでファンタジーの世界に置き換えられる、発想のもとになるものが必ず何かあるんですよ。その根拠から外れなければ、絵空事もちゃんとリアルに描けるという風に信じてやっています。根拠なく描いちゃったものはふわっとして見る人にも伝わらないので、根拠は大事ですね。ファンタジー世界は一見自由度が高いように見えても、そこにリアリティを持たせるために相当しっかりした根拠がないといけないんじゃないかな。リアルもののジャンルの作品をやるときは、素材感をどうやって描き分けるかというのを大事にしています。素材をちゃんと描き分けてあげれば、見る人にはちゃんと実在感を持って伝わるので。
益城 例えば中世ファンタジーものだったら、建物に金属っぽい質感があったらだめじゃないですか。石っぽいとか、漆喰が塗ってあるとかでないと。逆にSFものだと妙に金属っぽく作るとか、そういった素材感は作品によって変わってきますね。家の中の何の変哲もない壁でも、別の素材感にするだけで全然違うと思うんですよ。
竹田 『銀河英雄伝説 Die Neue These』なんかだと、あれは途方もなく未来の話で、その時代にプラスチックがあるのかコンクリートがあるのかってことは設定の問題であって。それは一回横に置いておいて、今目の前にあるものに置き換えて、これはコンクリなんだ、プラスチックなんだ、鉄なんだと決めて描かないと。

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・・・(続く)

いかがでしたか?
本書では、このほか「描きたい絵の原点は?」「自然物と人工物の描き分けで気をつけていることは?」「各作品のコンセプトはどうやって作っているのか?」などなど、Bambooでの絵づくりについて貴重なお話を沢山伺いました。

圧巻の作品群に浸れるだけでなく、解説やインタビューなど通じてBambooさんのお仕事に迫れる内容となっていますので、気になる方はぜひ本書をお手に取ってみてください!

Bamboo 背景画集
現在、全国の書店やネット書店などで好評発売中です。
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【書籍情報】
ISBN:978-4-8025-1206-0
定価:本体3,200円+税
仕様:A4判/194ページ
発売日:2021年05月21日


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