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国境を超えた働き方

2017年からデジタル・プラットフォームを使って色々な専門家と仕事をしています。これまでは社内に人材を確保することが重要でしたが(いまでも大事ですが)、いまはデジタル上で人材確保が容易にできる。僕はこれをtalent curationと呼んでいます。年末のいまもプロジェクトがひとつ進んでいて、毎日のように海外クリエイターたちとやり取りしています。「プロダクト・イノベーション」のプロジェクトです。守秘義務の元、時にはクライアント名を伏せて彼らが抱える課題をプラットフォーム上に提出する。それに対してごく短期間で50くらいのアイデアや提案が集まる。そして、そのアイデアの傾向や内容を分析検討しながら将来の可能性を探る。かつては英語のみでしたがいまでは日本語でレポートをまとめるのでクライアントさんも使いやすい。外国人クリエイターのアイデアに価値があるのは、彼らがまるで違う文化的背景や生活習慣を持つので、日本人の僕たちには実に斬新なものが多いことです。いまはこの仕組みを企業向けだけに使っていますが、近い将来、これを国や自治体向けに人口問題や都市問題など「社会課題の解決」にも使うつもりです。

人材採用のオプションとして「国外からリモート勤務」も増えています。僕のやっているイノベーション・プラットフォームはこれのプロジェクト版だと言えます。やはりデジタル、IT分野で働く人材を対象に、例えばインド在住の人材が東京の企業に「ログイン出社」して仕事をする。スキルがあれば自国にいたままで「どの国で働くか」を選べる時代になったと言えます。

このような働き方の変化は各国の移民政策にも影響を与えているようですね。12月6日の日経新聞には『移民なき時代、世界で人材争奪「低賃金で来ず」常識に』と題して「リモートワークビザ」をアラブ首長国連邦やエストニアが導入することを発表しています。リモートワークビザ。エストニアやUAE国内で働かなくても、月給3500ドル以上稼ぐ人材には1年間居住を認めるものです。つまりデジタルを使うことで国境を越えて仕事をする「デジタルノマド(遊牧民)」向けのビザで、技術革新の中心になろうとする国が相次いで導入を検討しているわけです。『稼ぐ移民は国内で良い消費者となり経済を廻す。将来は地元社会に根付いて国に貢献してもらえるかもしれない。移民=低賃金労働者という発想はもうない(日経新聞12月6日)』

考えてみると「国境って一体、何だろうか」。地縁的なアイデンティティを示すものではあるものの、「仕事」という機能的なつながり、ことにデジタル時代のなかでは形骸化してきているのかもしれませんね。