オタクはぼっち・ざ・ろっくから逃げるな
2022年秋アニメとして突如として現れた彗星、それが「ぼっち・ざ・ろっく」だ。
ぼっち・ざ・ろっくとは、まんがタイムきららで連載中の、高校生になるまでろくに友人もできずにぼっち(孤独)な主人公、後藤ひとりが中学生からひっそりと続けていたギター(クッソ上手い)をキッカケに、結束バンドという名のバンドを組み、バンドマンの聖地、下北沢でバンド活動を始めていく物語である。
親愛なるオタクくん諸君はきらら×バンド×アニメというだけでピンとくるだろう。
2011年に放送開始した後、楽曲はMステのランキング上位を席巻し、ランキングを読み上げるアナウンサーは感情が死に、タモさんは微妙な表情を浮かべるなど社会現象になるまで一世を風靡したアニメ、けいおんを意識せざるを得ない。
しかしはっきりと言うが、まるで違う!
オカンがアニメのことマンガって言うくらい違うし、オトンがプレステのことファミコンって言うくらい違う。
福岡の人間が「ひよこは福岡銘菓だが?」と主張するくらい強い気持ちで否定したい。
けいおんがカワイイ女の子たちによるゆるふわバンドを体現したアニメだとしたら、ぼっち・ざ・ろっくはカワイイ女の子のガワを被った青春スポ根である。もはや令和のBECKだ。
筆者が何よりもこのアニメに強く興味を惹かれたのは、LIVEシーンの表現だ。
ピッキングの細かさから手元の角度に至るまでギターをやっていた人間なら"理解る"。
ここまで演奏シーンに力が入ったアニメを観たのは初めてだった。
楽曲の力の入り具合もハンパない。
劇中では結束バンドのベース担当、山田リョウが作曲し、ギター担当の後藤ひとりが作詞を担当している…という設定だが、実際はゴリゴリのプロが作詞作曲編曲をしているので、楽曲のクオリティが異常に高い。こんな高校生バンドがあってたまるか!
ここで一つ、劇中のLIVE映像を観ていただきたい。
うわっ…このバンド…カッコよ…
アニメ8話の結束バンド結成後初LIVEシーンにて、実力不足を痛感する結束バンドのメンバーたちを鼓舞するために後藤ひとりがアベフトシよろしくなカッティングテクを魅せたシーンだ。
普段は陰キャを拗らせに拗らせた主人公、後藤ひとりが覚醒するわかりやすいギャップが嫌いなオタクはいない。
ちなみにこちらの曲は鬼滅の刃の紅蓮華を作曲した草野華余子氏が作曲である。
売れっ子〜〜〜〜〜!!!
もう一つ、聴いた瞬間一発で引き込まれたシーンがある。
アニメ最終話、劇中の文化祭ライブのシーンである。
うわ〜〜〜〜〜!!
好き〜〜〜〜〜!!!!!!
2曲目、バンアパぼ〜〜〜〜〜い!!!!!
そもそも最終話、レベルが高すぎる。
OPも無く唐突に始まるLIVEシーン。
1曲目でしっかりパンチを効かせたところで2曲目でトラブルが発生する。
主人公後藤ひとりのギターの1弦が演奏中に切れ、2弦もペグの故障によりチューニングが出来なくなったのだ。
ギターソロを控えて1.2弦が使用できなくなったことでパニックになる後藤ひとり。
苦肉の策の結果、目についたのはカップ酒の空き瓶。
そしてまさかまさかのボトルネック奏法!
別名スライドギターと言い、ブルースなどのジャンルで専用のアクセサリーを使用して演奏するのだが、酒瓶を使用するという60年代ギタリストみたいなことをやりだしたのだ。
このシーン、後藤ひとりが平成〜令和生まれのギタリストであるという印象を強く感じる演出であったように思える。
ギターマガジンを買い、CDやレコードを聞いて耳コピする時代と違い、今はYouTubeがあり、音楽のサブスクがある時代だ。
スマホひとつで'60年代'70年代の音楽に簡単にアクセスすることができる時代だ。
原作では後藤ひとりは他に歯ギター(歯でギターを弾く)を披露するシーンがあるが、恐らくYouTubeなどの影響なのだろうという、作品全体への解像度が増す。解像度が増すということは作品への没入感が増すのだ。う〜〜〜ん…わかりみが深いぜ後藤ひとり。
まさかけいおん放送から10数年経ってこんなアニメが放送されるとは思いもしなかった。
久しぶりにギターが弾きたくなる、そんな作品でした。
これからは「ぼっち・ざ・ろっくでギターを始めたオタクくん元気ぃ〜?w」という煽り文句が巷で呼ばれるようになるのだろう。
かつてけいおんを観てギターを始めた君たち、まだ弦は鳴っているか?
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