地域価値におけるKPI #1-5
地域価値の評価は、長期スパンで計測する必要があり、客観的な数字だけで測れる「富」ではなく、それぞれの主観も含まれた「豊かさ」を測ることになる為難しい。企業の場合はROIC>WACCという超過利潤を最大化にするという経済合理性に基づいた明確なKPIを設定することが可能であるが、地域に場合は独自にそのKPIを持つ必要がある。
ここでは従来の指標であった「地価」と私たちが新しく提案する「関係係数」を紹介する。
これまでの地域開発において「地価」が優先的な評価指標であった。地価によって、その地域に住む人々の所得帯が決まるからである。しかしこれは、所得が基準となっていること、過疎地域においては不動産市場そのものがなく信憑性に欠けることから、評価指標としては課題が残る。
地価はKPIになるか?
地域において、重要視されてきた指標は地価だった。なぜなら、地価は、その地域において一般消費者が購入することができる新築住宅価格や毎月定額で支払いが発生する賃貸に応じて定まっており、従って地域に住む人々の所得が決まるからである。
すなわち地価もその変数を辿れば所得に行きつき、地域の「富」の指標とはなりうるものの、「豊かさ」の指標とは言い難い。これが「地価」を指標としてきた問題点の一つだが、もう一つは、過疎化が進む地域においては、住宅市場自体が存在せず、地域ごとに指標の精度に差があることがある。
なぜ、過疎化した地域において、住宅市場が存在しないのか?地域においては築年数の長い物件が散見されているが、その物件たちはほとんど存在しない。
この背景には、住宅市場の価格決定、買い手、売り手双方に課題がある。日本の住宅市場においては、現在も土地と建物がばらばらで評価されるため、建物にお金をかけて改良を重ねていっても、その価値は個々の建物の質とは関係なく、法定償却されて毎年価値が落ちてゆく。売却する段になると、結局、建物の価値は限りなく小さく、土地の価値でしかなくなってしまう。だから、中古住宅市場が育たない。
売り手にとっては、過疎地域であるため土地の価値が低く、価格がつきにくい上に、地域の住宅は住んでいなかったとしても思い出があり、お盆や正月には集まるなど年に数回利用する。また、固定資産税も安いために、維持することにお金がかからない。このような背景から、売却や賃貸として貸し出すことが難しいのである。また、買い手にとって、生活環境の改善を求めて地域に住みたいと考えたとしても、十分な収入を得られる働き口が見つからず、ニーズはあるものの実現しない状況にある。
このような背景から、住宅市場がほぼ存在せず、相対でのみ取引が成立する地域が存在し、その地域において地価は、正確性が担保できないのである。
住宅の二次市場を作らなければ、地価が地域の価値をあらわすK P Iにはなり得ない。しかし、日本においては都市の二次流通も始まったばかりであり、多少の無理があるように思える。
日本における不動産の二次流通市場を開拓する先駆的な企業として、(株)ツクルバがある。ツクルバは「場の発明を通じて欲しい未来を作る」ことを企業理念として標榜し、主に中古・リノベーション住宅の流通プラットフォームの開発・運営を通じて、住まいの流通構造の革新を目指している。一方、同社の運営する「cowcomo」は不動産のリノベーション・二次流通プラットフォームであるが、現在の展開エリアは首都圏に限られている。
また、地域での不動産価値の向上を行う企業に(株)NOTEがある。同社が運営する事業「NIPPONIA」では、過疎地域における古民家や歴史的建築物を、その土地の歴史性を残した宿泊施設へとリノベーションを施すことで再生・二次提供を行っている。物件の発掘と改修から宿泊事業者マッチングまでワンストップで行っており、再生物件は150棟と着実に実績を重ねている。再生を行う際は、地域の有志の人々と外部人材からなる事業体を組成し、その土地の歴史文化資産を尊重した再生を志向していることも特徴である。一方で、ホテルへの改修といった高付加価値化を志向した二次流通を中心に取り組んでおり、一般の方々が住む賃貸などについてはまだ着手していない。
地域開発において、地価は「豊かさ」の指標ではない点、「富」の指標としても正当性が疑われる点から、KPIには設定し難い。そこで、私たちが提案したいのは「関係」という指標である。
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