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ヴァイオレット・エヴァーガーデン

こんなにも目を泣き腫らしたのはいつ以来だろうか。本当に参ったと思うくらい何度も何度も泣かされた。泣かされるヒューマンドラマ作品が好きな方には是非ともお勧めしたい。

作品を見るまではタイトルがヒロインの名前である事すら知らなかった。それぐらい予備知識無しで観始めた本作品ではあったけれども、この名前に込められた意味を物語を追いながら知る事で、名付ける者と名付けられる者の想いを更に深く知る事になる。

愛を知らない女の子が、人々の様々な愛の形を目の当たりにしながら成長していく、そんな物語。

ヒロインのヴァイオレットが、愛を知る事で深く傷つき、更に深い愛に気づくという話の流れが、押しつけがましくも無く俯瞰的で綺麗に描かれているので、ただただ感情移入して最後まで観入ってしまった。

途中もしかしたら彼女は愛を知らない方が幸せだったのかもしれない。と少しだけ思った。けれども彼女が愛を知りたいと思ったキッカケは何だったか。愛しているともし言われなかったら彼女はどういう生き方をしていたのだろう。

人が人に気持ちを伝えるという事は、その人のその後の生き方を変えてしまえる程の力があるのかもしれない。この作品を観終えてからそんな事を考えている自分に気づく。

このヴァイオレット・エバヴァーガーデン、実は自分にとっても少しだけ因縁がある。

自分がアニメ作品を観るようになったのは割と遅くオッサンになってからだ。アマプラやネットフリックスような動画観放題サービスはまだ主流では無かった頃なので、名前は知ってはいるが内容は知らないみたいなアニメ作品が身近に多くあった状況だったように思う。

そんな当時に、親しかった”とある女性”が大の漫画アニメ好きで、言うならばオタクではあったと思うけれども、そんな彼女に勧められて観たアニメの「魔法少女まどかマギカ」に見事に感性がバチっとハマった。
今のアニメってこんなにクオリティ高いのか!と驚いたのを今の事のように憶えている。

その後も、まどかでハマるならこれはどう?と教えて貰った作品群は大体がものの見事に面白かった。そんなツボを外さない彼女が、風の噂でヴァイオレット・エヴァーガーデンを絶賛しているのを知る。

絶対に面白いのは分かっているが、今観たら当時の色々な感情が揺さぶられるんだろうなと敬遠していた。
しかし幾らかの時間が経ち、そんな自分も今やもう既婚者だ、もう観ても問題無いだろう。そんな思いでようやく観始めた今作品ではあった訳だけども、やはり時を経ても外さない彼女の思惑通り、キッチリと感情を揺さぶられているのだった。

彼女からの影響はアニメだけではなく、自分には持ち合わせていなかった様々な価値観を貰ったように思う。
完全に効率主義者で感情のスイッチが壊れてかけていた当時の自分にとって、彼女の周りでゆっくりと流れる時間そのものが新鮮だった。こういう生き方をしている人が居るんだという事を知る事が出来た。そんな事をこの作品を観ながら、ふと思い出した。

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのテーマは間違い無く「愛」だとは思うけれども、では愛とはどうやって形作られるのだろう。

人が何を想い何を考えたか。行動や言動の裏にはどんな感情が隠れているのか。
複雑な人の感情は縺れた糸のようなもので、勿論全てが分かる訳では無いけれども、分かりたいと思う気持ちが原動力となり、人と向き合う中で自分の想いに他者の想いがぶつかり合う。

河の石ころのように時の流れと価値観のすり合わせが行われ、自分の譲れない大切な部分を残しながら徐々に角が取れていく。
残念ながらお別れしてしまった人からも貰って大事にしている想いや価値観はあるし、自分もきっと誰かになんらかの影響を与えている。

幼い時代を共にした姉弟への想いや、育ててくれた親への想い。いずれ自分の子供が生まれた時には今まで気づけなかった親の深い愛情にも気づかされる事でしょう。
ヴァイオレット・エヴァガーデンは、そんな自分の中にも色濃く残る、様々な記憶を辿りながら、過去の心の動きを思い出させる。そして愛とは何かを深く考えさせられる美しくも素晴らしい物語なのでした。

この作品の素晴らしさが、何処かの誰かに伝わりますように。

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