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開発者直伝! FORTH&MAZE 1Day ワークショップ

2022年10月27日
名古屋商科大学大学院 915教室
ファシリテーター:ハイス・ファン・ウルフェン
文責:西村祐哉

3年ぶり・5度めの来日講演、千秋楽。

「誰の」がなくとも何故かココロが踊ってしまうような響き。
そしてその“演者” が、あのハイス・ファン・ウルフェンときたらそのわくわくはいかばかりか…!

2022年10月。
この数年にわたり世界を覆い続けたコロナ禍の、欧米を中心とした徐々に本格的なウィズコロナシフト。
満を持してハイス・ファン・ウルフェンが日本にやってきました。
到着したその日は、それまでのどんよりとした空模様が嘘のようにすっきりとした青空。
ハイスが青空をつれてやって来たかと、羽田空港へ迎えにゆく道すがらに空を見上げたことを思い出します。

2度のFORTHイノベーション・メソッドの公認ファシリテーター育成プログラム、シミック/NTTデータ2社での講演とまさに息つく暇もないという言葉はこのことかと思うばかりのスケジュールを精力的にこなし、今回の滞在最後のステージが2022年10月27日。開発者直伝! FORTH&MAZE 1Day ワークショップ。

逗子でのFORTHファシリテーター育成プログラムの合間を縫いながらFORTHやMAZEのプロセスさながら着々と、それでいて今の日本の新規事業開発やイノベーション創出には何が足りないのか・その壁を乗り越えるにはどうすればいいのか・日々これらに対峙している君たちは何を思い、どのように向き合っているのかを“共演者” であるBMIA理事メンバと対話しながら紡ぎ上げたプログラム。

日本のイノベーション創出を解き放とう!

そして当日。ハイスの宿泊するホテルに迎えにゆくと、そこには“イノベーターのコスチューム” に身を包んだハイス。さながらイノベーション・ロックスター。いざ会場の丸の内ビルディング、名古屋商科大学ビジネススクールへ。

プログラムの始まりは、『素晴らしいイノベーターになるための、10の指針』と題したハイスのKeynote(基調講演) から。
虹の根もとには黄金のはいった壺が埋まっている、その壺を探しあてようという言葉が参加者を引き込みます。
想いは言葉を超えるとはこういうことかと思わせる熱のこもった講演と、それをさらに盛り上げてゆく山本伸理事の息のあった逐次訳。
現状へ挑もう・集中しよう・賛同させろ・オープンマインドであれ・顧客志向・体験・柔軟さ・情熱・機敏さ・規範的であること…
これらの10の金言がエピソードとともに紡がれる60分。
最後はまさかの展開とともに(この「まさか」は当日ご参加いただいたかたがただけの、秘密です) 大団円を迎えました。

イノベーティブなマインドセットとは何か、をあらためて参加者にインストールして、いよいよワークショップのはじまり、はじまり。
イノベーション創出に立ちはだかる迷路を駆け抜け、『日本のイノベーション創出を解き放つ』ための指針と思索をハイスみずからのファシリテーションで参加者が考えます。

イノベーション創出をさまたげるもの/こと って、何だ?

きわめてシンプルではあるものの根源的な問いかけから始まったこのワークショップ。
参加者が、自分自身が日々対峙しているイノベーションの障壁を挙げてゆきます。

そのそれぞれに対して「それはどういうことなんだ?」と問いかけるハイス。
言葉が通じないのではなく、本質は何だ? 問題の本質はどこにある? とより深い課題の探索を促される参加者。
つい小難しい表現に陥りがちなところをよりシンプルで普遍的なかたちへの整理を求めるハイス…。

FORTHのプロセスにある、Idea DirectionのセッションやOBSERVE&LEARNのプロセスを思わせるようなアクティビティ。
参加者全員での課題の共有と深掘りを繰り返しながら、この日のメンバーがたどり着いた“イノベーションの阻害要因” はこの5つ。

イノベーションの阻害要因:失敗への恐れ・保守的な経営層・危機感の欠如・ニーズの無知・適切な人材の不足

みなさんも心当たり、ありますか?

イノベーション創出のために、自分たちはなにができるかを考える

ワークショップ後半戦は、これら5つの阻害要因を乗り越え、日本のイノベーションを解き放つための取り組みを考えました。
ますます熱を帯びるハイスの問いと、その問いに向き合う参加者。
ちょっとした体験セッションなどにありがちな、にこにこ仲良く和気藹々、というにはあまりにも真剣な議論をみなが戦わせながら、自分たちだからできる具体的なアクションにたどりついたときには、参加者それぞれがイノベーションの迷路の駆け抜けかたの一端を体感しつつイノベーションの解き放ちかたにたどり着いた瞬間だったのかもしれません。

イノベーションの迷路をかけぬけろ

「イノベーションの迷路」の歩きかたを体感したあとは、既にさまざまなイノベーションの迷路に立ち向かいこれらをかけぬけている3人のBMIA理事がそれぞれの事例やエピソード、そこから得られた学びや気づきをシェアするショートセッションが開催されました。

自分自身の講演と参加者ワークショップだけでは、より身近なところにある先行事例に触れることができないからぜひ具体的な話を参加者に伝えてシェアしてあげてくれ、というハイスからの依頼でもありました。

山本伸理事・三宅泰世理事とともに私も講演。

イノベーションの迷路の4つのルートのうち、カスタマーイシュー・テクノロジー・ビジネスチャレンジの3つのルートにちなんだ内容をそれぞれの経験から語りました。

三宅泰世 常務理事
山本伸 常務理事
西村祐哉 理事

“We”nnovation の実現のために、できること

イノベーション創出のための阻害要因は実はとても普遍的で、世界じゅうのイノベーターや新規事業開発者が頭を悩ませています。
そして、頭を悩ませてはいても「ではそれをどのように打破すれば良いのだろう」という問いにいざ向き合ってみると驚くほどに思考停止してしまっている自分たちに気づいてしまう…。
そんなところもやはり世界共通の悩みなのです。

しかし、その悩ましい迷路には実は地図があり迷路の抜けかたが存在している。
そして、その迷路にはひとりで挑まなくてもいい。孤軍奮闘しなくてもいい。
僕らはひとりじゃないし、個に依存したイノベーション(“I”nnovation) ではなく組織のちからを結集した、みんなで起こすイノベーション(“We”nnovation”) こそが必要とされている。

このことに気づき、ハイスの情熱とクリアな解説とプロセスに触れたこと、そしてこの場でまさに仲間とつながることができたことこそが“We”nnovation のはじめの一歩だったのではないでしょうか。

イノベーションは、100%の不確実性そのものへの挑戦です。
誰だって怖いし不安にもなる。
それでも立ち向かうためには勇気しかないのはさすがに怖すぎる。
正しいやりかたとマインドセットは存在しますし、そのためのやりかたや仲間も存在する。

BMIAとしてもそんなメッセージをこれからも伝え、実践し続けてゆきたいとあらためて感じる1日でした。

『イノベーションの迷路』著:ハイス・ファン・ウルフェン、訳:高崎拓哉監修:三宅泰世、山本  伸(サウザンブックス、2021年)


西村祐哉

  • 株式会社NTTデータ エグゼクティブ・イノベーション・アクセラレーター/ビジネスデザイナー

  • FORTHイノベーション・メソッド公認マスター・ファシリテーター(LIVE/ONLINE)

NTTデータ, ライブドアを経て起業。スタートアップ経営者として立ち上げとターンアラウンドを担当。
その後コンサルティングファームでの戦略・ビジネス・IT各領域のコンサルティングおよびプロジェクトマネジメントに従事。
2011年からの10年間、日本電気株式会社(NEC) にてプラットフォーム系領域のサービスビジネスの立ち上げ・運営や主にEMEA領域を中心とした海外スマートシティ系事業開発を担当。
CSIS(Center for Strategic & International Studies; 戦略国際問題研究所, WashingtonDC) 客員研究員を経て共創を基軸とした新事業創出・ビジネスデザイン・社内事業部の伴走支援部門を部門長として立ち上げ、運営する。
Gijs van Wulfen氏とともにNECに世界ナンバーワンのFORTHイノベーション・メソッド公認ファシリテーターの陣容を形成。社内外に”イノベーションのおこしかた” を展開した。
その後2021年4月より株式会社NTTデータに”帰還”。
まちづくりやスマートシティといった、都市空間におけるDXや経年的なライフスタイルの変遷に寄り添う価値提供の創出に関する新規事業開発を担当。
それと並行して、イノベーションの民主化を目的とした、共創型新事業創出やビジコンやステージゲート等の制度設計、新規事業人材の育成や教育などを包括的に取り扱う、イノベーションエコシステムの創出と定着の伴走組織の部門長としても活動している。

ひとのいとなみと空間との関係性に着目した都市構想の検討と実現支援者としての顔と、イノベーションの仕組みの形成者という2つの顔をもつ、”憑依型アクセラレーター”。

※BMIAのイベント情報はこちらからご覧いただけます。


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