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中村健太郎×小山龍介「コンサル脳をつくるー3大基本スキルを身につけて市場価値を最大化する」ーBMIAリスキリング・セッション(4)

中村健太郎×小山龍介「コンサル脳をつくるー3大基本スキルを身につけて市場価値を最大化する」ーBMIAリスキリング・セッション(3)の続きです。


その場でアウトプット

小山 すごく具体的な話になっちゃうんですけど、コンサルをやるとき、初回のヒアリングである程度(自分の経験則とかパターンだとかで)、わかるものがあるじゃないですか。だから、私はできるだけその場でアウトプットして、方向性をかなり絞り込んでしまおうとバンバンその場でアイデアを出していくんです。

一方で、ヒアリングを全部を聞いて、持ち帰って考えるパターンもあるじゃないですか。持ち帰って研究したり勉強したりして、すごくクオリティ高いものを出すっていう。

その場で、稚拙だけどもまずアウトプットを出すパターンと、持ち帰っていいアウトプットを出すパターンがあって、私なんかひとりでやってるので、持ち帰っても自分がやるだけなので、その場その場で出していくんですが、このあたりのアプローチについて、中村さん、どう思われますか?

中村 個人的には、ここ二〇年で、大きく後者から前者に移っているように思います。もともとは、やっぱり持ち帰って、ミーティングも月に一回で、きれいなストーリーとスライドつくって、バチンと当てにいくのが主流でした。多くが戦略のページに時間をかけたんで、「ミリオンダラーチャート」って、金額換算すると一枚一〇〇万円スライドとかって言われてました。

小山 おぉ……!

中村 いまは、事業創造のテーマが多くなってきたので、ミーティングの頻度がすごく増えてきています。コ・ワーキングで一緒に考える、インスパイアーするっていうテーマになってくると、持ち帰ってしまうとコミュニケーションが断絶しちゃうので、ミニマムで週に一回ミーティングやりますし、一緒にやる設えのコンサルティングだとクライアントによっては、一日おきにやったりします。

初期にこそリソース投下を

中村 ただ、私としては、その場で打ち返すっていうのは、これは自分の能力のために、またはメンバーの教育のために、奨励はしてないです。そこにはやっぱり「編集の妙」が絶対にありますし、人間って考えた順には喋らないですし。思いついたことが、クライアントの意向に合ってるかわからないですよね。出てきた議論をきちんとまとめる。正しくまとめて、構造的に整理すると、議論中には見えなかったお客さんの真意とか、本当は成立してない論理が整理できるんですよね。

頻度は高く行くんですけど、必ず持って帰ってその真意、本当の意図はなんなのかっていうところと、こちらからのソリューション(完成されたものではなくドラフト)を持っていく。この「インプット」、「編集」、「アウトプット」っていうサイクルが回せるように、いったん、われわれは持って帰るようにしてます。

小山 なるほど。私もいまちょっと極端な言い方をしましたけど、持ち帰って二ヶ月後にいい提案を持ってきますみたいなことだと、二ヶ月の間に状況も変わるし、言ったことも忘れてるし、こんなことだったっけみたいなことになるとそこの期間の短縮というのはすごい重要ではないかと。

とくに、いまこれを見ている方のなかには、BMIA認定コンサルタントも多いんですけれども、個人のコンサルタントは、たとえばリソースも少ないので、その期間がちょっと開きがちになると思うんですよね。できるだけ短期間に返していくこと、つまり、スピードアップをしていくことが重要だと思うんです。

思いつきで言うんじゃなくて、ちゃんと考えたうえでアウトプットを出す。それが翌週には出せる。そうなると、スピードの遅くなりがちな日本のコンサルの弱点克服のポイントのひとつだと思ったりもするんですが、どうやったら短時間に相手からのインプットを編集し、それをアウトプットできるんですかね。

中村 私もそんなにめちゃくちゃ速かったわけではないんですけど。トータルの作業量が同じだとすると絶対にそれは早く終わらないですよね。なので、トータルの作業量を減らすしかないですよね。

インテンション、イシュー、インサイト

中村 われわれはスリーアイズとかって言うんですけど、いちばん大事なのはやっぱりインテンション(intention)。お客さんの意図をどこまで深く理解できるかが勝負だと思うんですね。お客さんが一から一〇まで言いました。それが全部重要とは限らないので、そのうち重要なものは一と三だ、と見極めて、そこにフォーカスして次に持ってく。ほかのことはやらない。作業をいかに減らせるか。もっと言うと、注力ポイントにフォーカスできるかっていうのは非常に重要です。

どうやるかという方法論はないんですけど、多くの方は、リソース投下をあとのほうに増やすんです。最初はよくわからないから、ヒアリングを重ねて、ちょっと調べたりして持ってって、やっとだいたい理解できてきて、ファイナルレポートをつくり込もうっていうときに、リソース投下がぐっと増える。

だけど、諸先輩方を見ていると、仕事が早い方って圧倒的に、最初が多いんです。最初に、めちゃくちゃ時間使います。往年の、みなさんも名前を知ってるような有名なコンサルタント、たとえばBCGのときでも、日本代表の方とかシニアパートナーの方とかが一緒にプロジェクトやるわけですよ。僕がまだ三〇代のペーペーのマネージャーでね。プロジェクトの初期って、現場の方とインタビューとか、エキスパートのヒアリングとか、要するに、コンサルティングファームではどっちかっていうと現場の若手がやるような仕事なんですが、これについてくるんですよ。ついてきて、「現場の人の話を全部聞かせろ、議事録も書くな」って言うわけです。「お前らが書いたことは信じられないから録音してこい」って。初期はこういう感じですが、後半はほとんどなにもしません。もうなにか答えがあるんでしょうね。

最初の設計に時間を使う。コンサルティングは所詮対面なので、やっぱりクライアント満足度なんですよね。クライアントがOKと言えば、極論、間違った解でもアクセプトされて満足する。とすれば、業界の理解も必要ですけど、いちばん時間かけなきゃいけないのは、その相手がなにを求めているのか、本件についてどうして自分でできないのか、なんでわざわざ他人に安くないお金を払ってやるのかっていう、このインテンション(intention)を見ることが非常に重要かな、と思います。

小山 なるほど。

中村 さっき言いかけたスリーアイズっていうのは便宜的にかっこよく英語にしてるんですけれども、インテンション(intention)、イシュー(issue)、インサイト(insight)。お客さんがやりたいこと、やりたいのにできないところには課題が必ずあって、課題に対しての示唆がある。この順番を必ず守る。

課題から入りがちなんですが、これは絶対にミスにつながります。こういう言い方はしませんけど、「そもそもなにがやりたいんですか」「なにを達成したいんですか」「どうなりたいんですか」「このプロジェクトの三ヶ月でなにしたいんですか」インテンションを捉えてからでないと、課題がなぜ発生しているのか、問題意識はどうして発生しているのかっていう紐づけができない。そうなると、ソリューションも表面上のものになってしまって、結果「そういうのを頼んだんじゃないんだよね」って言われて、あとからすごく工数かけることになる。

小山 「そんなこと頼んだんじゃない」っていうときは多分、そのレポートなり、その提案書が、どちらかと一般論的にお客さんには見えるんでしょうね。一般論としてはそうかもしれないけど、それはわれわれの意図と違う、という。

中村 そうですね。だからやっぱり最初のお客さんはなかなか難しいですよ。それは日本特有です。仕様書がないんで。海外だと、ちゃんとなにをしたいかが書いてあって、その仕様書通りにクラリファイします。だから「だめだ」となったら、こっち(コンサルティング会社)も「いや、仕様書に書いてない」とクレームしたりしますが、これは日本では通用しません。

小山 なるほど。松岡正剛的にいえば、「地と図」ですね。地がなにで、図がどう浮かび上がっているか。どこにスポットライトを当てるかによって浮かび上がってくる絵柄が変わってくる。だから状況は同じだけれども、どう「地」を定義して、「図」が現れてくるかっていう、その「図」を表すような編集が必要だっていうことですね。

中村 松岡正剛からは学びが多いですけど、彼の高みにはちょっといけないですよね。おっしゃる通りで、ハイライトの仕方によって同じものが違うように見えますし。なるべくその見方を、クライアントと合わせたり……。

小山 そうですね。やっぱりその部分は、日本のコンサルタントの強みですよね。
インテンション、明文化されてないことを察する。さきほどのお話のトップのコンサルタントの方たちは、その強みを最大限発揮して、初期のインタビューでの喋り方とかニュアンスから意図や目的を察知するんでしょうね。

インタビュー、会議、ディスカッション

中村 これは本には書いてないんですが、インタビューとか、会議、ディスカッションっていうのは、極めてアプリケーションの話ですけど、トレーニングが不足してる領域のひとつですね。最近うちの会社でも、単に「インタビューするだけ」という、安価なコンサルティングサービスがすごくヒットしてるんです。

コンサルティングファームって、海外のエキスパートにアクセスできますとかって謳ってますけど、ビザスクで頼めばだれでもインタビューできますし、英語がちょっとできればGLGに頼めば、世界中から情報が取れるわけですよ。業界のすごいマニアックなこととか、数字には出てこない裏側も、お金さえ払えば(しかもそんなに高くない)情報はとれるんですよね。

なので、われわれも手の内を明かして、クライアントに「自分でインタビューやってください。僕らをとおしてやる必要ないし、僕ら通すと、パッケージだ、スライドだ、僕の稼働だってお金かかっちゃうんで。なんならエキスパートも紹介します」って言うんです。でも、できないんですよ。情報が取れないんです。

小山 へぇ……。

中村 議事録を見せてもらうと、「いやいや、ぜんぜん聞いてないじゃん」っていう感じなんです。インタビュー、議論、会議についてのトレーニングが圧倒的に不足していると思います。

小山 どうトレーニングすればいいですかね。

中村 インタビューは、すぐできますよ。すぐ力がつけられます。当たり前なんですけど、目的を定めるってことなんです。インタビューは、聞かなきゃいけないこと、知りたいことがあってやるものですよね。情報を取るためにやる。

まずインタビューに臨むときにガイドを必ずつくります。インタビューで聞かなきゃいけないこと、インタビュイーの背景とか、ベースの情報で、クエスチョネア(質問票)がしっかりあって、そのとおり聞いていけばいいんですけど、このガイドのつくり込みが非常に甘い。

さらに依頼主とガイドをすり合わせてないことが多いんです。インタビューって、若手に頼んだりして現場に投げるんですけど、結局あとで、「これも聞いてない、あれも聞いてない」って、必ず出てきちゃうんですね。これは日本語の話に戻るんですけど、なにを定義するか、です。このインタビューが終わったあとにどんなことがわかってればいいんですかというコミュニケーションが極めて不全なことが多いんですね。

小山 なるほど。ほかについてはどうですか。

中村 会議はもうちょっと難易度が高いです。会議って、多くの人が一堂に会して、全員に対してインタラクティブであり、そこでなんらかの合意ができる。または、相手を変える必要があるものですよね。ほとんどの場合。それ以外の情報の伝達ならメールでいいわけです。一方通行でいいなら、別に会議やる必要はないので。本当の議論とか会議っていうのは、インタラクティブにやりながら、相手の状況を変える、自分の状況を変えるっていうことが目的でない限りやる意義はないわけです。

その本当の目的に照らし合わせると、「どういう会話をした後に、双方がどう変わってるのか」この定義がなされないまま会議に入ることが多いんですね。たとえば、社長との最初のミーティングの場合、向こうを変えるってことはありえないわけですね。だから変わるのはこっちなんです。なにを得なきゃいけないのかというと、本当のインテンションじゃないですか。だけど、一時間で社長の趣味趣向がわかって、アスピレーションがわかるのは無理です。

そうすると、経験則上、一時間の最初のミーティングでは、その前段で少なくとも自分を信頼してもらって、次のアポを取るっていう目的を設定します。そのためだけに設計すればよくて、余計なことは言わないほうがいいんです。信頼につながらないことは言わない。

会議、ミーティングには、インタラクティブにやる価値があるはずです。こういったことに対してこう答える。こういったことに対してこう答える。それと、ミーティングのゴールで、双方がどう変わっていなきゃいけないのかという定義が極めて曖昧なまま、なんとなくミーティング、になっちゃうんですね。みんなミーティングで時間が埋まってるんですよね。さらに言うと、役員会とか、単価の高い人ほど会議で埋まってて、そのアウトプットがゼロです。忙しい、忙しいって言ってるけど、自分で仕事つくってない?って(笑)

ミーティングコミュニケーション、とくに、会議、インタビューは、目的を設定して、事前準備をするだけでかなり改善されます。

小山 そうですね。

中村 これは日本特有なんですけど、会議って正しく設定すると、それが終わった後にも変数をいじくれるんです。日本にはすばらしい「議事録」という仕組みがありますね。なにを言ってるかわからないとき、議事録の修正がめちゃくちゃ入るじゃないですか。要するに言葉の定義が曖昧なので、議事録を見ながらクラリファイしていくわけですよ。だったら会議やらなくても議事録だけ回せばいいんじゃないのって思うんですけど(笑)。

なので、自分が意図したミーティングがあって、合意したいっていうとき、目的の定義さえすれば、議事録改ざんしまくって回せばいいわけです。それを粘り強くやれば、後からでも変えられるんです。

なので、事前準備をしっかりして、そのとおりにミーティングをやって、その目的に合わせた議事録を書いて、それを合意文書として何度も回すっていうのをやると、けっこうミーティングの質は上がりますし、主催者としては目的にかなり誘導できます。極めてROIの高い領域です。

相手がしゃべりだしたら黙る

小山 細かなテクニック的な話を聞きたいんですけど、たとえば社長との最初の一時間の面談があって、次のアポを取れるポイントって、具体的にどんなところにあるんですか?

中村 いろいろあります。いろいろありますけど、一般論で言うと、いかに、その人にとって価値になる宿題を出してもらえるか、ですね。すごく端的に言うと、「僕にもう一回時間もらえれば、1億円の宝くじ持ってきます」ってことです。一億円の価値があるものを持ってきます、と。これをミーティングの最後に言えば、お金に目ざとい人だと、じゃあもう一回ってなるじゃないですか。

どんなお話をしながらも、お悩みがあるかどうか、関心がどこにあるかっていうのをなるべく多く拾って、そのなかで持ってこられるものを、その関心に近づけてご用意しますよ、っていう。すごいベタですけど、やっぱり競合の話は大好きですし、海外の話もそのエグゼクティブのアジェンダに合う場合はヒットしますね。

最初は一般的な話からせざるを得ないじゃないですか。私は通信が領域なんで、「最近どういうふうに世の中見てますか」「通信の発達、5Gって今後どういうふうに伸びますか」「5Gに乗るアプリケーションってなんですかね」みたいな話になるじゃないすか。「5Gのアプリケーションってなかなかないんだよね」「いやいや、サンフランシスコでスタジアムの横にめちゃくちゃたってますよ」「どうなのそれ?」「次にちゃんとお持ちしますんで、もう一回時間ください」みたいな。
とにかく関心と宿題をもらう。

その宿題がせせこましいものだと、レポート回しといて、とかって言われるんで、なるべくその議論のなかで、関心の高さ、彼、彼女らにとっての価値の大きさを頭のなかで深掘って、「それちょっと持って帰りますわ」っていうふうにするといいですね。

小山 なるほど。やっぱり売り込み、というか、自分のことばっかり喋ってると当然良くないわけですよね。社長から課題も聞き取れないし、次に持ってくるのってまたお前の自慢話か、みたいなことになると二度とアポもとれない、と。いかに、相手にしゃべらせるか、ですね。そのなかでも最も重要な事柄を瞬時に判断して「次回ちょっとお時間いただければ」と。

中村 これはエアタイムマネジメントって言うんですけど、八割はやっぱりこっちで誘導しなきゃいけない。それで、ミーティングの終わり頃に、向こうが八割しゃべってるっていうのが理想ですね。そのときに呼び水としての話題をやっぱりいっぱい持ってないといけないんですけど、大切なことは、相手がしゃべり出したら黙るってことですね。相手がしゃべり出したら、しっかり黙る。

“Why”に深掘るネタがある

中村 みなさん、WhatとかHowとか聞きがちなんですよ。「昔、あの新規事業をつくったんだよ」って言われると、どんな新規事業だったんですか、どうやってつくったんですかって。経営者が話したいのは、Why、なんです。その “Why“ に、おもしろい話とか、深掘りたいものがあるので、「新規事業つくったんだよ」「どんな問題意識でつくられたんですか」とかね。「上からの指示ですか? 自分でやられたんですか?」って。指示されたのか、自らやったかで、ぜんぜん違うじゃないですか。

どうしてそういうことをやったのか、いや実は僕文系でね、とか、東大でねって言ったときに、東大ってどういう経緯で入られたんですか、どうして文系なんですか、理系じゃないんですかっていう、経歴についても、 “Why“ に踏み込むっていうのはけっこう大事です。

そうするとね、いっぱい話してくれます。自分の価値観について。そうすると連鎖で 、どうしてですか、どうしてですか、って永遠に深掘れますし、そして大事にしているポイントとか価値観まで行き着くので。What&Whyとかっていうんですけどね。

ついつい「どうやってやったんですか」ってHowを聞いちゃうんですけど、それではアプリケーションの話にしかならないので、その先がないんですよね。「そうだったんですか。すごかったですね」で終わっちゃいますよね。

だけど、 “Why“ でさかのぼって、あとは黙って聞いて、この辺だなっていうところがあったら、「ちょっとおもしろい案があるんですけど」って差し込む。しっかりその社長のことを調べて、ある程度のネタを用意するっていう準備があれば、次のアポは、比較的取れます。そんなに難易度は高くない。

ビジネスモデル・ヒアリング

小山 ビジネスモデルを関連づけた話をちょっとしたいのですが、ビジネスモデルイノベーション協会には認定プログラムがあるんですけど、そのなかで、ビジネスモデルヒアリングというワークをやってます。

五分ぐらいの短い時間で、初対面の人から相手の業界とか、相手の会社、事業のビジネスモデルを聞き取る。聞き取ってみると課題も見えてくるので、こういうところが課題なんじゃないですかっていう、ある程度の当て推量で言えるようになる。相手の人からすると、「短時間に自分の業界や会社のことを理解して問題をけっこう的確についてきてなかなかやるな」みたいな。そういうコミュニケーションっていうのは、いまの話からするとどうなんですかね。

中村 われわれが、いわゆる大企業向けのコンサルティングをする場合は、昔は事業の診断をして勝ち筋を定義するっていう、わりと普遍的な経営テーマって多かったんですね。いまは、業界のこととか、当社のことは全部知ってますっていう前提になってきてますね。もちろん金の稼ぎ方、競合の動向、あとはクライアントのクライアントの動向も、頭に入ったうえで、しかもその企業のポリティクスとか組織構造とか、課題も頭に入ったうえで会話しにいく。そういうコンサルタントが増えてるので、逆に「私、今日初めて来ました。携帯のことを教えてください」っていうのは、昔は大丈夫だったんですけど。新しいクライアントに行くときには重要かもしれないですね。

小山 とくに中小企業だと、外に情報が出てないので、ヒアリングのときに情報を取るっていうのが重要で、たとえばマネジメント層はどのくらいの年齢なんですか、とか、若手がなかなか育ってないんですか、みたいな課題抽出をするんですよね。その場合、社長としても会社のことを理解してほしくてしゃべるみたいなことがあるので、ビジネスモデルに関するヒアリングが有効だったりするんですよ。でも、たしかに、大企業だったらそんなことも知らないのか、って門前払いになりますね。

中村 私の経験だと、新しいお客様と長い関係になる場合、事業に加えて、どれだけパーソナルな関係になるのか、が大きいです。たとえば、マッキンゼーのパートナーって、クライアントとスキーに行く、っていうのがKPIに入ってたりするんです。

小山 スキー?

中村 はい。会食や家族のパーティーは当たり前で、そのうえで、スキー。スキーって泊まりを伴いますよね。だけどこれはやってみてわかったんですけど、それぐらいの関係になると、なんて言うんですかね、家族ぐるみのつき合いになります。お子さんとも話します。そうなると、取れる情報の粒度がぜんぜん違う。なので、けっこう初期の段階から、パーソナルな話をする間柄に持っていけるかどうかっていうのを、僕はものすごい大事にしますね。

どこの学校を出たかとか、なんの車に乗ってるかとか、お子さんはどういう方とか、どこの中学でどこの高校行ったのかってめちゃくちゃ聞きます。もしかしたら事業とかよりも遥かにこういう質問が多いかもしれないです。趣味がサッカーなら、サッカーの話しますし。

個人的には、人と人との信頼とか、その人にとってのアスピレーションとかがわかったあとに、ゆっくり事業の話を聞けばいいんじゃないかなって思います。どういう事業なんですかとかって、二時間ぐらい、ネチネチネチネチ聞いて、なにがドライバーなんですか、利益なんですか、売上なんですか、単価なんですか、みたいな話っていっぱい聞きたいじゃないですか。そういうのは、個人的な信頼ができたら、いくらでもいけるかなって。

小山 本当は、そのとおりだと思いますね。ちょっと一般論で言っちゃいますが、大企業の方とスキーに行くというのは、それなりの規模感もあって、やっぱりそれなりに金額も動くのでそこまでコミットできるところもありますよね。一方で、個人でやっている中小企業診断士になると、いくつかのクライアントを持って、そこまで一社に時間割けないし金額的にもそこまでは……、っていうことになると、やり方も変わってきそうだなという感じはしました。

中村 はい、それはそのとおりですね。

(5)につづく

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中村健太郎

株式会社FIELD MANAGEMENT STRATEGY 代表取締役

大学卒業後、ベンチャーのITコンサルティングファーム、フューチャーに入社。
その後、ドイツを本拠とする外資系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガー、アメリカを本拠とするボストン・コンサルティング・グループを経て、2016年にアクセンチュアに参画。
通信・メディア・自動車・鉄道業界をはじめとする多数企業の成長戦略、新規事業戦略策定などを手掛け、技術トレンドにも精通し、ロボティクスや AI を活用した新規事業戦略策定/実行支援にも従事。
2022年9月にフィールドマネージメントに参画し、2023年1月1日よりFIELD MANAGEMENT STRATEGYの代表取締役を務める。

小山龍介(BMIA代表理事)

株式会社ブルームコンセプト 代表取締役
名古屋商科大学ビジネススクール 准教授
京都芸術大学 非常勤講師
ビジネスモデル学会 プリンシパル
一般社団法人Japan Innovation Network フェロー
一般社団法人日本能楽謡隊協会 理事
一般社団法人きりぶえ 監事

1975年福岡県生まれ。AB型。1998年、京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後、松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに広告メディア事業、また兼務した松竹芸能株式会社事業開発室長として動画事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。
コンセプトクリエイターとして、新規事業、新商品などの企画立案に携わり、さまざまな商品、事業を世に送り出す。メンバーの自発性を引き出しながら商品・事業を生み出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。また、ビジネス、哲学、芸術など人間の幅を感じさせる、エネルギーあふれる講演会、自分自身の知性を呼び覚ます開発型体験セミナーは好評を博す。そのテーマは創造的思考法(小山式)、時間管理術、勉強術、整理術と多岐に渡り、大手企業の企業内研修としても継続的に取り入れられている。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、ビジネスモデル・キャンバスは多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。
2013年より名古屋商科大学ビジネススクール客員教授、2015年より准教授として「ビジネスモデルイノベーション」を教える。さらに2014年には一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会を立ち上げ、4年間代表理事を務め、地域おこしにおけるビジネスモデル思考の普及活動に取り組む。2014年〜2016年沖縄県健康食品産業元気復活支援事業評価会員。2016年より3年間、文化庁嘱託日本遺産プロデューサーとして日本遺産認定地域へのアドバイス業務。2019年〜2021年大分県文化財保存活用大綱策定委員。2020年〜大分県文化財保護審議会委員。2020年〜亀岡市で芸術を使った地域活性化に取り組む一般社団法人きりぶえの立ち上げに携わる。
2018年京都芸術大学大学院 芸術環境研究領域 芸術教育専攻 修了・MFA(芸術学修士)取得。2021年京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 博士課程 単位取得満期退学。2021年京都芸術大学 非常勤講師。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。著書20冊、累計50万部を超える。最新刊『名古屋商科大学ビジネススクール ケースメソッドMBA実況中継 03 ビジネスモデル 』。

2013年より宝生流シテ方能楽師の佐野登に師事、能を通じて日本文化の真髄に触れる。2015年11月『土蜘』、2020年11月『高砂』を演能。2011年には音楽活動を開始、J-POPを中心にバンドSTARS IN BLOOMで年2回のライブを行う。ギターとボーカルを担当。2018年からフォトグラファーとしても活動を開始。2018、2019年12月グループ展覧会『和中庵を読む』に作品を出展。

写真・編集 片岡峰子(BMIA事務局長)



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