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中土井僚 × 小山龍介 『ビジョンプロセシング』出版記念対談 〜生起するビジョンとビジネスモデルのプロセシング〜(1)

【日時】2024年9月4日(水)19:30〜21:30
【会場】BMIA高輪オフィスからライブ配信
【登壇者】中土井僚・小山龍介


小山龍介(以下、小山) 中土井僚さんをお迎えしまして、『ビジョンプロセシング』出版記念対談「生起するビジョンとビジネスモデルのプロセシング」をお届けします。

中土井僚(以下、中土井) お招きありがとうございます。

小山 「U理論」をきっかけに中土井僚さんのお名前を知った、という方も多いのではないでしょうか。私も、『U理論』が出版されたあとに僚さんとラジオで対談させていただきました。

中土井 そうですね。

小山 それが僚さんとの出会いで、七、八年前になります。それからもどんどん活動を広げられていて、そのジャーニーのなかで出会ったさまざまなものがこの本に込められて、2024年に「ビジョンプロセシング」というかたちで結晶化、結実した、と。

『ビジョンプロセシング――ゴールセッティングの呪縛から脱却し「今、ここにある未来」を解き放つ』英治出版 (2024/6/22)

小山 中土井僚さんは、組織に関するさまざまなコンサルティング活動をされてるんですけど、この本にも出てきてますが、SOUNDカードを使った組織開発のメソッドも開発されました。僚さんにとっては、まだまだ、ひとつの通過点だと思うんですけれども、いったんここまでの集大成として、お話を伺えればと思います。

中土井 ご紹介ありがとうございます。

小山 BMIAでも読書会をやりましたし、すでに読んでるらっしゃる方もいると思います、『ビジョンプロセシング』。すごいページ数ですね。読んでるといつ終わるのかなっていうぐらい(笑)。まずは、560ページあるこの本を、なんと15分で(笑)、ご紹介いただきたいと思います。

中土井 わかりました。改めまして、みなさん、こんばんは。中土井と申します。ご参集いただきましてありがとうございます。まずは、書籍『ビジョンプロセシング』のポイントをご紹介させていただきます。

環境変化が激しい、 だから?

中土井 『ビジョンプロセシング』という特殊なタイトルになっているんですが、このプロセシング、プロセスという言葉に込めているところがすべてを表していると思っています。

これまで、ビジョンとは「めざすもの」だし、「到達するもの」っていう考え方が主流になっていたと思いますし、いまもそう思われる方が多いと思います。「ビジョナリーな人」といえばそういう人を思いつくんじゃないかと思いますけど、そもそも、「それって本当だっけ?」っていうお話だったり、これからの時代においては時代遅れになっているんじゃないか、というところからいろいろ書かせていただいています。それが、この書籍のポイントです。

ここでテーマにしているのは、環境変化が激しいということです。環境変化に激しさがあるというのは、もはや言わずもがなだと思うんですけど、もう少し踏み込んで見てみると、意外と説明しづらいことがたくさんあるなと思っています。

環境変化が激しいってどういうことでしょうか。環境変化が激しいとなにがどうなるんでしょうか。環境変化が激しいと結局なにをどうすればいいんでしょうか。

そう問われたときに、けっこう答えづらいですよね。「環境変化が激しいので、行動を変えなきゃいけない」っていうのはなんとなく思いつくかもしれませんが、それも聞き飽きてる感じだったり、なにか強制感があって心惹かれないなって思う、いわゆる変革疲れみたいなものもあるかなと思います。

もしそうだとしたら、「そもそも環境変化が激しいとはどういうことか」から見直してみよう、と、私はこれを出発点として「ビジョン」について考えてみたい、というのが始まりです。

VUCA=私たちの認知と能力の限界を超えて積み木崩しが群発すること

中土井 山頂を目標地点到達点として、そこに向かってギャップを明確にして前進する。ありますよね? たとえば「2030年に売上2030億」、よくある経営目標です。「夢に日付を入れよう」みたいな語られ方もします。

ワタミの渡辺美紀会長も、社長当時に「夢を描くだけじゃなくてそこに目標という形で日付を入れることで、より具体的になっていく」と言っていました。現状と夢、目標のギャップを明確にして、そのギャップを埋めるために前進していこう。それが、ここにきて「そうは問屋が卸さない」っていう感じになってきました。

「VUCAという言葉が昨今注目されるようになりました」という、この言葉自体も1990年代には生まれてたみたいなんですが、特にコロナになってから、検索キーワードとしても一気に伸びていたりするぐらい一般的な用語になってきたなと思います。

私自身、コロナ前からこの言葉をご紹介していたんですけども、その頃は「いまひとつ刺さらない」っていう感じがあったんです。「環境変化が激しいということに対してバズワード的に言ってるだけでしょ」感があったんですけども、これがコロナ禍以降は非常に肉感を持って伝わりやすくなったなと思ってます。

このVUCAという言葉、変動性、複雑性、不確実性、曖昧性は、「私たちの認知と能力の限界を超えて積み木崩しが群発することだ」と理解していただくといいかなと思います。

仮に、私たちが全知全能な存在なのであれば、現状のすべてを知ることができるだけではなくて、未来に起きることも全部予測できる。予言できる。そしてスーパーマンのように能力があるのだとしたら、VUCAというものはそもそも問題にならなかったんじゃないかなと思うんです。

ところが、私たちは全知全能ではないので、私たちが持ってる能力をはるかに超えた動きが生まれますよ(「変動性」「複雑性」)っていうことですし、私たちの認知、私たちが知ることができる範囲を超えた物事が起きますよ(「不確実性」「曖昧性」)っていうこと。それによって私たちは翻弄させられる。そう見るとわかりやすいんじゃないかなと思います。

ちょうど2020年という節目で中期経営計画を新しく見直す会社もけっこう多かったので、その前年の2019年に、「2020年からの3ヶ年はこうだ」って目標を掲げた。しかしながら、2020年になった途端、2月の末には、コロナが始まって、その計画は全部ご破算になっちゃったんですね。

そして、2022年にようやく脱コロナだって新しく計画を立てたところ、ウクライナ紛争が始まって、強烈な物価高、インフレが起きて、またもや計画の根底が崩れてしまった。

夢、目標を掲げたとしてもそれがなし崩しにされて、計画の破綻がどんどん起きることで成り行きの未来に引きずられてしまう。よくよくあることなんじゃないかなと思ってます。

目標を立てられないのに、力を合わせないとならないというジレンマ

中土井 そんな「いくら目標を掲げたとしてもそうは問屋が卸しませんよ」っていう、時代がつくり出すプレッシャーのさなか、私たちに突きつけられていることがあるだろうと思ってます。それを「計画のジレンマ」と表現しています。

環境変化が私たちに突きつける要件、「明確な目標、綿密な計画を立ててもそうはいきませんよ」というなかで、個人の能力で対応できることには限界があります。どうやら、環境からは「みんなが力を合わせないといけない、それが必須条件ですよ」って突きつけられている。ところが、私たち人間って、そんなに器用なんでしたっけっていうのが、次にポイントとして生まれてくるなと思いました。

先行きの見通しが明るくない、勝ち筋が見えてないと、そもそもモチベーションが上がらない。コスパとかタイパが見えていないと、そもそもやる気が起きないっていうことが、私たちによくある話なんじゃないかなと思います。

冷静に考えてみると非常に厄介な話だなと思うんですけど、環境変化のほうは、「あなたたちの小さい脳みそでいくら考えようがそうはいきませんからね」って言ってるのに、私たちは「自分たちが考えるコスパやタイパが合ってないとやる気が出ません」って言っている。

そしてもうひとつ、環境変化のほうは「あなたたち個々人は非常に微力だし、場合によっては無力だったりするんだから力を合わせなさいよ」って突きつけているのに、私たちは「力を合わせるうえでは、同じ目的、目標を握らないとそもそも力が出せない、力を合わせられない」と思っている。
ここに計画のジレンマと呼ぶべきものがあるような感じがしてるんですね。

実は私たちが向き合わないといけないことに、ジレンマがあって、計画を立てようにも立てられないし、計画が立たないとそもそも存分に力を発揮することができない。このことが、これからの時代も避けがたいものとしてずっと立ちはだかるんじゃないかなと思っています。

郷が変わったのだ

中土井 そのことを端的に示しているものが、クネヴィンフレームワークです。[『ビジョンプロセシング』35ページ参照]デヴィッド・スノードンという方が提唱してるモデルで、複雑なモデルなんですけれども、わかりやすく、右側の象限と左側の象限で分けて考えてみたいと思います。
右側の証言は、「秩序系」といわれるもので、私たちが環境をコントロールできる。左側の「非秩序系」は、環境をコントロールできないっていうことになります。

たとえて言うなら、秩序系は、何日も仕事が続いて家事をやる暇がなくて洗濯物の山に襲われる。見るのも嫌なぐらいの山になってるんだけども、週末に一念発起して何回か洗濯機を回しているうちに、その洗濯物の山は片づけられる。私という存在に対して洗濯物の山はコントロールできるので秩序系です。

それに対して、今度はみなさん、自分が1匹の蟻になったと想像してください。1匹の蟻になってある家に入りました。トコトコ歩いていると白い壁が見えてきました。その白い壁をガーッて上がっていって頂上に上がったと思ったら、大きな穴があってそこにストンと落ちました。そこには柔らかいものがあって、そこに軟着陸するのですが、そこはさまざまな山谷があって、上がったり下がったりする。そうこうしてるうちにものすごい音がして、四方八方から水が流れてくる。と思ったら、勢いよくそれが動き始める。あっちこっちから水が流れてきて動いてる状況に翻弄される……。蟻であるみなさんは洗濯槽に落ちてしまったんですね。蟻は洗濯機のなかであっちこっちに振り回されながら、せっかく壁にたどり着いてもまた剥がされる。この蟻から見た洗濯機は非秩序系です。蟻は洗濯機をコントロールできません。

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デヴィッド・スノードンさんが明確にしたのは、「私たち人間は状況をコントロールできるって思いがちなんだけども、実は置かれた状況によってはそうはいかないんですよ」ということ。彼は意思決定のフレームワークとしてこれをつくったんですけども、「郷に入っては郷に従え」という言葉がある通り、秩序系という状況においての意思決定はいままで通りでいいんだけども、郷が変わったなら、いままでの意思決定のパターンでは通用しないので、非秩序系の意思決定の仕方に変える必要があります。まさにその「郷に従う」っていうことが必要なんだということを表してると思っていただければと思います。

私はそれが意思決定もたしかにそうだなっていうふうに思うものの、行動様式を変えていくにしても、いろんなものを見直していかないと変わらないと思ってます。それが先ほどの計画のジレンマにも関係するところなんです。

平たく言えば、「非秩序系においてはアジャイルで物事をやっていく」みたいな一言になるんですけど、「アジャイルにやっていく」っていうのも、これまた矮小化されすぎてるように私は感じています。「単なる試行錯誤」の言い換えのようになってしまってるんじゃないか、と。でも、実は「アジャイルにやっていく」って、もっと複雑だし、人間がそんなにやりたいことかというと、そうでもなさそうなんですよね。

非秩序系ではスタンスそのものを変える必要がある

中土井 そこで私は『ビジョンプロセシング』のなかで、非秩序系に進んでいくうえでは、なにをどうするかというやり方の前に、私たちの立つべきスタンスそのものを変える必要がある、ということにたどり着きました。それを体系化したのがこのモデルです。

中土井 「ひとつの原理と三つのパラダイムシフト」としているんですが、このひとつの原理というのは「私たちが拠って立つべきところ」で、三つのパラダイムシフトは「いままで私たちが常識だと思ってるものを変える必要がある」って感じです。

この書籍を「すごくよくわかる」って言ってくださる方は、まさに非秩序系でお仕事なさっているような方、とくに経営者の立場にいらっしゃる方で、「まさに自分がモヤモヤしてたことが書かれてる」っておっしゃる。一方で、「難解だ」って言われる方もけっこう多いんです。その理由のひとつが、一つひとつのパラダイムシフトが私たちにとって非常に馴染みがないからだったりします。

環境変化が突きつけている、計画のジレンマを乗り越えていくうえでは、私たちが根本的に見直す必要があるものがあるんじゃないか、というのが、この書籍でお伝えしたいことでもあります。

本当に大切にしているもの=心の羅針盤×本質的な課題

中土井 ひとつの原理は、「学習する組織」を提唱したピーター・センゲの言葉です。
「創造することと問題処理することの根本的な違いは簡単である」
「問題処理する場合、私たちが望んでないことを取り除こうとする。一方で、創造する場合は本当に大切にしてることを存在させようとする。これ以上に根本的な違いはほとんどない」と言っています。

私たちはミーティングをするとき、人が採用できないとか、離職率が高まってるとか、不祥事が起きた、売上が上がらない、など、望んでいないことに対処しようとするんだけども、「創造する」のであれば、本当に大切にしていることはなんなのかをど真ん中に置く必要があるよっていうことです。「そもそもなにがしたかったんだっけ」に立ち戻る必要があるんですね。

私は、この「本当に大切にしているもの」は、「心の羅針盤」と「本質的な課題」のかけ算だと思っています。「心の羅針盤」は、どれだけ環境に振り回されようと翻弄されようと、心に太陽を持つかのように、嵐のなかで北極星を見失わないかのように、自分たちはなにを情熱として持っていたいのか、自分たちは何者として存在しているのかを、しっかりと根っことして持つもの。

そしてそれはある意味、エンジンになるものではあるんですけれども、それがあるからと言って、荒波を薄乗り越えていけるわけではない。エンジンに対してハンドルになるのが「本質的な課題」だと思っています。

エンジンだけだと、闇雲になにかやるだけになっちゃうので、外したことをたくさんやってしまう。一方、「本質的な課題」は、狙いを定めていくことなので、これだけをやっていると、ある意味、頭でっかちなものになってしまって、結果、周りからの支援が得られないこともあるだろうなと思います。

これが原理です。

ビジョンは到達点ではなく、現在の自分に力を与えるもの

中土井 では、ビジョンのパラダイムシフトについて説明します。実は書籍を読んでいただいた方で、私が初めてお目にかかる方々のほとんどがこのビジョンのパラダイムシフトに非常に共感を覚えてくださるんです。「はっとした」って言っていただけることが多いです。

これまでのビジョンは、さきほどの山頂のたとえのように、たどり着くべき未来が「目的」で、現在は「その未来に向かってどんなふうに過ごしていくか」っていうふうに「手段」として置かれてますよね。未来は「私たちがたどり着くところ」だし、「そこにたどり着いたら私たちは幸せになる」っていう話だったりするんですが、VUCAワールドはそれを許してくれないわけです。

これからの時代は、「ビジョン」、「望ましい未来」が「手段」であって、「現在」が「目的」になる。どういうことかというと、あまりにも先行きが不透明で、心が折れそうな状態になったとしても、心に太陽を抱くかのように、明日世界が滅ぶとしてもリンゴの木を植えるかのように、いまこの瞬間沸き立っている、エンパワーされているっていう状態が必要なんです。そう思ったとき、ビジョンはいまの自分に力を与えるものとして存在する。まさに未来のほうが手段になる。この転換が起きることじゃないかなって思っています。

中土井 非秩序系、状況をコントロールできない状態においても、思考停止にならず、パニック状態にならず、場合によっては自分たちの首を絞めることにもならずに、とにかくアジャイルに、それこそ一歩一歩建設的な実験をしていく。この右側の非秩序系では、「ビジョンを『問い』として持つ」と私は言ってるんですが、これからのビジョンは、「自分自身を呼び覚ますもの」として、「問いとして向き合う」と紹介しています。

山登り型プランニングでは通用しない

中土井 次にプランニングです。プランニングはビジョンともちょっとつながりがあります。これまでのプランニング、ゴールPDCAに代表されるようなものを私は山登り型のプランニングと言っています。まさに現状と頂上を明確にして、そのギャップを埋めに行くんですけども、実は、これには二つの前提がないと成り立たないんです。それは「地面が動かない」ということと「山頂が存在している」ということ。

「地面が動かない」というのは想定を超えた変化が起きないっていうことを意味してます。まさに2020年、コロナが起きて、大前提が全部ひっくり返ってしまたことなどがそれにあたります。

「山頂が存在している」というのは、まさにチャットGPTが出たときに、それが起きた会社が多かったなと思います。私の知り合いの経営者も、スマホのアプリ開発で上場をめざしていたのが、生成AIが出てそんなの簡単にできてしまうという状態になったことで、上場という目的が達成できないどころか、自分たちの存在意義自体がなくなってしまった。まさに頂上が吹っ飛んでしまった状態に陥りました。

山登り型では、計画を立てたら前進できるという前提がありますが、そうとは限らないとしたら、これからは「波乗り型」が必要になってくるだろうと思っています。サーファーは、当てずっぽうに波に乗ってるわけでもなく、だからといって、波をコントロールしてるわけでもない。波の動きを察知しながら、体幹をしっかり持ったうえで舵を切っている。そういう動きが必要になってくるんじゃないかなと思ってます。秩序系では山登り型、対して、非秩序系では波乗り型が必要になってくると思います。

これは、どっちかというと、切り替えの問題なので、それこそ二刀流で行く必要があるっていう感じなんですけども、私たちは、まだまだ山登り型しか知らないんじゃないかと思っています。

その瞬間、その場で生まれる協働=チーミング

中土井 最後が、チームワークのパラダイムシフトです。ハーバードビジネススクールの教授エイミー・エドモンドソンさんが提唱してる概念を紹介しています。彼女は「チームとチーミングは違うものだ」と表現してるんですね。チームは、オーケストラの楽団のように役割分担が明確で、それぞれが個別最適的に高めていって、集まってみんなで音合わせをして、場合によってはチームビルディングするようにお互いのことを知り合っていくようになるんだけれども、いまの世の中は、固定したチームメンバーでずっとやり続けられるかというと、そうでもない。状況が変わったら、メンバーのスキルが全然通用しなくなることってありますよね。

もっと言うと、テクノロジーでいろんな人とつながっていて、国内外の人たち、社内外の人たちとやり取りしながら課題解決を進めていくことが可能になった。すると、固定されたメンバーで固定された役割でチームをつくっていくというよりも、とにかくなにかの問題解決のために、その瞬間、協力し合っていく。その人たちは自分たちがチームメンバーだという認識はなくて、(たとえば、ネット上で自分の困りごとを投げたら見知らぬだれかが答えてくれるのも含めて)、協働がその場その場で生まれていく。これをチーミングだと言っています。

この言葉も少しずつ一般化してきているんですけども、多くの誤解もあります。チーミングをチームビルディングと同じ文脈で語られるケースが多いんです。でもこの2つはまったく違う概念なんですね。なので、チーミングをチームビルディングと読み替えてる人がいたとしたら、それは違うよって、ぜひ教えていただきたいと思います。

エイミー・エドモンソンさんの観点からすると、チームというもの自体がそもそも時代遅れになってきている感があるので、チームビルディング自体も時代遅れになってるかもしれない。彼女は、協働していくという意味でのチーミングの重要性を言ってるんですが、「率直に意見を言う」とか、「内省する」といったことが柱として重要になると言っています。

私はそれをひとつのサイクルのように表現しました。「率直で自由な発言」、「建設的な衝突と葛藤」、「シャープな実験」、「内省による学習」。これをチーミングサイクルと名づけたのですが、これを社内外の人たちと、国内外の人たちといかに回していけるかが重要だと思っています。

ところが、それにはさまざまな障壁があります。その障壁を乗り越えていくうえで「心理的安全性」「文脈競創」「当事者意識」「視座共進化」といったものが、必要になるんじゃないかなと思っています。それらを統合していくものとしてSOUNDメソッド®を開発しました。これを使って対話すれば、チーミングサイクルが進められると考えています。

小山 ありがとうございます。これで560ページの全部がわかったわけじゃないですが、お話を伺うとやっぱり違いますね。体温を感じるというか。

いまのお話だけだとちょっと抽象的に感じる方もいるかもしれませんが、本を読んでいただくと超具体的な世の中の事象や、ビジネスの場面、企業での事例なども紹介されたりしていますので、ぜひ書籍を手に取っていただけたらと思います。

ここまでは無料でも配信させていただきました。ここからは有料配信となります。BMIAに会員登録していただくと続きの動画もご覧いただけます。ぜひご検討ください。

(2)に続く


登壇者プロフィール

中土井僚 (なかどい りょう)

広島県呉市出身。同志社大学法学部政治学科卒。
リーダーシッププロデューサー、組織変革ファシリテーター。「自分らしさとリーダーシップの統合と共創造(コ・クリエーション)の実現」をテーマに、マインドセット変革に主眼を置いたリーダーシップ開発及び組織開発支援を行う。

コーチング、グループファシリテーション、ワークショップリードなどの個人・チーム・組織の変容の手法を組み合わせ、経営者の意思決定支援、経営チームの一枚岩化、理念浸透、部門間対立の解消、新規事業の立上げなど人と組織にまつわる多種多様なテーマを手掛ける。
過去に携わったプロジェクトは、食品メーカーの理念再構築、業績低迷と風土悪化の悪循環が続いていた化粧品メーカーのV字回復、製造と販売が対立していた衣類メーカーの納期短縮など100社以上に及ぶ。
アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)とその他2社を経て独立。2005年よりマサチューセッツ工科大学上級講師であるオットー・シャーマー博士の提唱するU理論における啓蒙と実績に携わり、現在に至る。

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役
社団法人プレゼンシングインスティチュートコミュニティジャパン代表理事
特定非営利活動法人 Reach Alternatives (REALs)理事
株式会社ミライバ 取締役

<執筆・翻訳・監訳実績>
・「人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門」(PHP研究所)
・「マンガでやさしくわかるU理論」(日本能率協会マネジメントセンター)
・「U理論~過去や偏見にとらわれず、本当に必要な『変化』を生み出す技術~」
(英治出版)  C.オットーシャーマー著
・「出現する未来から導く~U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する~」
(英治出版)  C.オットーシャーマー著
・「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか~すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」を作る~」(英治出版) ロバート・キーガン、リサ・ラスコウレイヒー著

<資格・研修・プログラム等>
国際コーチ連盟認定資格CPCC(プロフェッショナルコーアクティブコーチ)
Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)プラクティショナー
CRR認定オーガニゼーション&リレーションシップシステムコーチ
組織人事監査協会認定パーソネルアナリスト
ヒューマンサイエンス研究所認定Self Expanding Program認定スーパーバイザー
GIALジャパン認定 アクションラーニングコーチ
オープンスペーステクノロジープラクティショナー
ワールド・カフェプラクティショナー
ストーリーテリング・プラクティショナー
プロセス・ガーデナープラクティショナー

小山龍介(BMIA総合研究所 所長)

株式会社ブルームコンセプト 代表取締役
名古屋商科大学ビジネススクール 教授
京都芸術大学 非常勤講師
ビジネスモデル学会 プリンシパル
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事
一般社団法人きりぶえ 理事
一般社団法人日本能楽謡隊協会 理事
一般社団法人Japan Innovation Network フェロー
大分県文化財保護審議委員
丹波篠山市日本遺産・創造都市推進委員会委員

1975年福岡県生まれ。AB型。1998年、京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後、松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに広告メディア事業、また兼務した松竹芸能株式会社事業開発室長として動画事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。

コンセプトクリエイターとして、新規事業、新商品などの企画立案に携わり、さまざまな商品、事業を世に送り出す。メンバーの自発性を引き出しながら商品・事業を生み出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。また、ビジネス、哲学、芸術など人間の幅を感じさせる、エネルギーあふれる講演会、自分自身の知性を呼び覚ます開発型体験セミナーは好評を博す。そのテーマは創造的思考法(小山式)、時間管理術、勉強術、整理術と多岐に渡り、大手企業の企業内研修としても継続的に取り入れられている。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、ビジネスモデル・キャンバスは多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。

2013年より名古屋商科大学ビジネススクール客員教授、2015年より准教授として「ビジネスモデルイノベーション」を教える。さらに2014年には一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会を立ち上げ、4年間代表理事を務め、地域おこしにおけるビジネスモデル思考の普及活動に取り組む。2014年〜2016年沖縄県健康食品産業元気復活支援事業評価会員。2016年より3年間、文化庁嘱託日本遺産プロデューサーとして日本遺産認定地域へのアドバイス業務。2019年〜2021年大分県文化財保存活用大綱策定委員。2020年〜大分県文化財保護審議会委員。2020年〜亀岡市で芸術を使った地域活性化に取り組む一般社団法人きりぶえの立ち上げに携わる。

2018年京都芸術大学大学院 芸術環境研究領域 芸術教育専攻 修了・MFA(芸術学修士)取得。2024年京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 博士(芸術)取得、2021年京都芸術大学 非常勤講師。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。著書20冊、累計50万部を超える。最新刊『在宅ハック』。

2013年より宝生流シテ方能楽師の佐野登に師事、能を通じて日本文化の真髄に触れる。2015年11月『土蜘』、2021年11月『高砂』を演能。2011年には音楽活動を開始、J-POPを中心にバンドSTARS IN BLOOMでギターとボーカルを担当。2018年からフォトグラファーとしても活動を開始。2018、2019年12月グループ展『和中庵を読む』、2023年グループ展『Inter-Action』に作品を出展、APA AWARD2024入選。


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