出産、それから分娩台で

分娩台で放心している間に、我が子は別室で体重を量ったり指の本数を数えられたりしていたらしい。我が子に対面したのは夫の方が先だったのだが、指の本数を看護師さんと数えたんだよ、と不思議そうに語っていた。

私と言えば、ああこれで終わりだ、汗を拭いてさっさと病室に移りたい、お腹すいた、眠い、疲れた、などといったIQ2くらいの思考を順番に手繰っていた。が、なんだか足元でまだガタガタやっている。そうだ忘れていた、「後産」だ。

赤子が出てきたからと言って、出産の終わりではない。胎児を子宮と接続していた胎盤を排出する必要があるのだ。放っておいても25分程度で自然に脱落して出てくるらしいのだが、さっさとはがしてしまった方が治りがいいらしい。というわけで、どういう方法をとったのか皆目分からないのだが、再び子宮になんか突っ込まれてびりびりゴリゴリ、胎盤をはがされた。これね、出産後で若干冷静になってるところにコレなもんだから、ねえ。内臓を引きはがされたらこんな感触なのかな、というようなことがIQ2の脳内をよぎった。

無事に胎盤が排出され、膣に栓をされて、縫合。縫合までくるともう麻酔も効いているし疲労で頭もボーっとしているので、なんかよく分からないうちに終わっていた。が、次の瞬間一気に現実に引き戻された。

栓を抜いたところからピッチャーの水をぶちまけたような水音がしたのだ。

そりゃそうだ、子宮と胎盤は癒着状態なんだから、それをはがせば当然出血する。妊娠中の酸素の供給や出産時の出血に対応できるように妊娠中に妊婦の循環血液量は1.5倍程度まで増えるらしいので、想定されている程度の出血量なのだろうと思ったが、体感ではかなり多く感じる(実際は600ml程度だった)。それでちょっと焦ったためか、一瞬意識が遠のいた。

その間にテキパキとパンツを履かされ衣服を直され、別室から赤子と夫がやってきた。分娩台に赤子を乗せてもらって授乳のまねごとをしてみたのだが、予想以上に吸引力が強くて驚いた。そこそこデカい。赤子という割に赤くない。そして、すでに髪が黒々生えている。結構身体作ってきましたね。頼もしいじゃないッスか。これからよろしくお願いします。

時間は深夜23時を回っていたかと思う。貧血で立ち上がるのも一苦労だったので、車椅子で病室へ。私が疲労困憊のため、赤子は一晩ナースセンター併設新生児室預かりとなった。


その前に分娩台で義母から受け取って食べたローソンのカルツォーネ、人生最大の旨さだったと記憶している。これから先、あれほど旨いカルツォーネには出会えないことだろう。あれ以来食べてないけど。


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