Wiegenlied

数ある子守歌の中でSchubertが一番好きだったのだが、2番があることを知ってから、歌うのをやめた。その不吉さと恐ろしさに耐える事ができなかったのである。ぞっとして歌うのをやめたにもかかわらず、皮肉にも、歌の通りになってしまったのだが……。

Schlafe, schlafe in dem süßen Grabe,
noch beschützt dich deiner Mutter Arm;
alle Wünsche, alle Habe
faßt sie liebend, alle liebewarm.

一説にはこの曲に自身の母への思慕が込められているとも言われるが、いずれにせよ、はっきりとした作曲の経緯は明らかになっていないし、この2番の具体的な意図は謎のままである、とのことだったと記憶していた。

不勉強にして昨日、Schubertには成人できなかった兄弟がたくさんいたことを知り、合点がいった。Die schöne Müllerin, Winterreiseをはじめとして、死の影のちらつく作品をたくさん残したSchubert。彼にとって死は常に身近にあるものであったし、恐らく彼の母は早世した子供たちのことを終生祈り続けた(そうせずにいられる母親がどこにいるだろうか!)。このWiegenliedは在りし日の母の姿であり、母の愛であり、またSchubert自身の根幹にある早世した兄弟たちへの祈りであったのではないだろうか。

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Wiegenliedといえば、Die schöne Müllerinの終曲もDes Bäches Wiegenliedである。個人的主観であるが、この2曲は曲想がよく似通っている。一日の終りの穏やかな眠りと、死者の安息とが、Schubertの中で如何に連続性を持っていたか、ということをよく表しているように思われた。


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