輪郭と肌と嘴と

 十日ほど前のこと、ようやく冬物のマスクを作った。布は大分以前から準備してあったが、またあの古式ゆかしいミシンを引き出して動かすとなるとどうにも初動が重くなってしまう。衣更えと同様に緩衝地帯のマスクで誤魔化して着たが、いよいよもって限界、冬にそぐう布でマスクを作り上げた。
 私が作る布マスクはプリーツタイプ。布で作るなら立体型が一般的だろうが、私はどうもこの形状が好きになれない。他人が立体型を着用するには全く問題ないのだが、自分が着用するのには抵抗がある。私が立体型を着けたらハシビロコウになってしまう気がするのだ。
 どちらかというと私は面長で、そして目付きが悪い。不機嫌でも何でもない時でも眼光が鋭い(らしい)。そんな私が嘴のような形状をした立体型のマスクをしたらハシビロコウになってしまう。いや、別に私はハシビロコウは嫌いではない。むしろ眼光が鋭い割には飛行は特に速くはなく、沼地で長時間の待ちの漁をするあたりはとても親近感が湧く。しかし日常からなりきりたい位にハシビロコウを愛している訳ではない。容姿を寄せるならチベットスナギツネの方がいい。
 夏に買った魚模様の手ぬぐいはまた次の夏に。今は冬の風情を楽しもう。


今日の英語:Beak

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