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SONY ST-S333ESA 修理調整記録6

 ・2024年5月連休明け、333ESAの故障機が届きました
 ・本来の性能を発揮していないようだ、との事でしたが、、
 ・調べたところ、確かに「重症の難あり品」でした


■製品情報--------------------------------------------------

 ・オーディオの足跡 SONY ST-S333ESA ¥55,000(1991年発売)
 ・Hifi engine SONY ST-770ES FM Stereo / FM-AM Tuner (1991-92)

SONY ST-S333ESA フロントパネル
SONY ST-S333ESA リアパネル

■動作確認--------------------------------------------------

【提供者様からの不具合情報】
 ・電波状況は良いのにシグナルインジケーターがフル点灯しない
 ・RF:DIRECT のポジションではほとんど点灯しなくなる
 ・IF:WIDE に切換えると全く点灯しなくなる
【当方での確認事項】
 ・外観は目立つキズも無く状態は良さそう
 ・外装の汚れは洗浄すれば綺麗になりそうです
 ・電源オン、周波数窓の表示も輝度劣化なく問題なさそう
 ・アンテナ線を接続して名古屋地区のFM局で受信テスト

●RF=DIRECT
【IF:WIDE、MUTING:ON】
 ・オート選局上り下り方向とも受信不可
 ・シグナルインジケーター全く点灯しない
【IF:NARROW、MUTING:ON】
 ・オート選局上り方向:周波数ズレなく放送局周波数で自動停止
 ・オート選局下り方向;+0.1MHzの位置で自動停止
 ・シグナルインジケーターは1/3レベルまで点灯する
 ・STEREOランプ点灯、実際のステレオ感あり

●RF=NORMAL
【IF:WIDE、MUTING:OFF】
 ・オート選局上り下り方向とも受信不可
 ・シグナルインジケーター全く点灯しない
【IF:NARROW、MUTING:OFF】
 ・オート選局上り下り方向とも:放送局周波数で自動停止
 ・シグナルインジケーターは半分程度まで点灯する
 ・STEREOランプ点灯する、実際のステレオ感あり

●検討
 ・IF BAND=NARROW時はそこそこ受信できるようですが、
 ・IF BAND=WIDE時はほとんど受信不能
 ・WIDE/NARROWでこれほど違いがあるのは調整ズレ?それとも故障?
 ・一方AM放送は純正ループアンテナで名古屋地区のAM局受信OK
 ・AMはオート選局でシグナルインジケーターがフル点灯します

■内部点検--------------------------------------------------

 ・底面や背面にメーカー修理の記録シールは見当たりません
 ・内部を見ると交換済みの部品なし、すべてオリジナル状態です
 ・しかし内部を詳しく見ると、いろいろビックリな状態でした
 ・まず調整用VRがすべて右一杯または左一杯に回されていた
 ・さらにフロントエンドのRFコイルのコアが割れていた
 ・WOIS回路のコイルコアもすべて最深部までネジ込まれた状態でした
 ・調整箇所を適当に弄った先人がいたようです
 ・続いてヒューズ抵抗を測定してみると、、何とほぼ全滅状態でした

 ・R119 (100Ω) → 103Ω
 ・R203 ( 10Ω) → 26Ω
 ・R207 ( 10Ω) → 42Ω
 ・R211 ( 10Ω) → 35Ω
 ・R227 ( 10Ω) → 29Ω
 ・R259 (100Ω) → 122Ω
 ・R274 ( 10Ω) → 23Ω
 ・R279 (220Ω) → 434Ω
 ・R292 (100Ω) → 145Ω
 ・R301 ( 10Ω) → 16Ω
 ・R327 ( 47Ω) → 94Ω
 ・R403 (220Ω) → 411Ω
 ・R410 (150Ω) → 291Ω
 ・R511 (220Ω) → 330Ω
 ・R516 (180Ω) → 289Ω
 ・R626 ( 47Ω) → 93Ω
 ・R910 ( 22Ω) → 57Ω
 ・R921 (220Ω) → 389Ω
 ・R931 (220Ω) → 468Ω(1w)
 ・R-JW ( 10Ω) → 14Ω

ヒューズ抵抗

 ・ヒューズ抵抗がここまで劣化している事例は初めてです。
 ・たぶんアンプの上に載せられた状態で長期間稼働していたか、
 ・あるいは放熱口を塞ぐように上に何か機器を載せていたか、、
 ・もし熱の影響なら電解コンデンサーも劣化が進んでいそう、、
 ・まずはヒューズ抵抗を交換してから仮調整してみます

■修理記録:ヒューズ抵抗交換--------------------------------

 ・フロントエンドのR119以外は全数交換
 ・今回はすべてカーボン抵抗(1/4wサイズで1/2wタイプのもの)に交換
 ・R931(220Ω)のみ1wタイプに交換
 ・これまで多くの見てきた333シリーズを見てきましたが、
 ・ヒューズ抵抗ではなく普通のカーボン抵抗が使われた個体もありました

ヒューズ抵抗交換

■修理記録:フロントエンド----------------------------------

 ・RFコイル L102 のコアが割れていて回すことが回せません
 ・コアだけ抜き取って交換すればよいのですがそもそも回せないので
 ・L102を基板から取り外した状態でコアを粉々に割って除去
 ・代わりにジャンクパーツから取り出したコアを挿入しました

L102

 ・続いて最大電圧がビシッと決まらないトリマコンデンサを3個とも交換
 ・トリマコンデンサCT101,CT102,CT103(10pF)交換

CT101,CT102,CT103

 ・次にIFT101の対策
 ・IFT101のコアが最深部までねじ込まれていたが、
 ・ところがコアネジがバカになっているようで回しても上がってきません
 ・これはIFT101(4046-6611-1380)を丸ごと交換するしかないですね
 ・333ESXIIジャンク機の基板にあった同型IFT101(4046-6611-849M)を移植
 ・これで調整可能になりました

IFT101

■修理記録:ハンダクラック修正------------------------------

 ・アースバーがあちこちでグラグラ状態です
 ・すべてのアースバーのハンダ付けをやり直し
 ・続いて音声端子とアンテナ端子のハンダ割れも修正
 ・背面パネルを取り外すと補修作業や容易になります

音声端子のハンダクラック

■修理記録:PLL検波回路のトリマコンデンサ交換---------------

 ・CT271に触れるだけでガサガサノイズが発生する
 ・繰り返しグリグリ回してもノイズは解消しない
 ・新しいトリマコンデンサ(20pF)に交換
 ・ガサガサノイズは解消して気持ちよく調整できました
 ・パーツリストを見ても容量不明ですが 20pF で良さそうです

CT271

■修理記録:キャパシタ交換----------------------------------

 ・放送局をメモリー登録しても翌日には消失している
 ・キャパシタ:C605(0.1F/5.5V) → 1F/5.5V 交換 
 ・タンタルC604(10uF/6.3v)→ 電解コンデンサ(10uF/50v)交換

C605,C604
交換部品

■調整記録--------------------------------------------------

【FM同調点調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・IC251(LA1235)7pin~10pin間電圧計セット
 ・83MHz受信 → IFT251調整 → 電圧ゼロ
【VT電圧調整】
 ・フロントエンド内JW8 電圧計セット
 ・アンテナ入力なし
 ・90MHz → L104調整 → 21.0V±0.2V ※調整前実測21.1V
 ・76MHz → 確認のみ → 8.0V±1.0V ※調整前実測 8.1V
【トラッキング調整】
 ・IF BAND = NARROW
 ・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
 ・90MHz受信 → CT101,CT102,CT103 → 電圧最大
 ・76MHz受信 → L101,L102,L103 → 電圧最大
【PLL検波調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・TP201を短絡 ※これによってIF回路をパス
 ・TP271 電圧計セット
 ・IFT272調整 → 電圧ゼロ ※調整前実測+4.2V
 ・CT271調整 → 歪最小 ※Wavespectraにて波形確認
 ・TP201を開放
【IF歪調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・MUTING = OFF
 ・IC251(LA1235) 13pin(又はR261右足)電圧計セット
 ・RV201、RV202 時計回り一杯に回す
 ・SSG出力40dBモノラル信号送信
  ・IFT201調整 → 電圧最大
 ・SSG出力40dBステレオ信号送信
  ・IFT202調整 → 電圧最大
  ・IFT101調整 → 電圧最大 ※IFT101フロントエンド内
 ・RV201、RV202 回転範囲の中央位置に回す
 ・SSG出力80dBモノラル信号送信
  ・IFT203調整 → 歪最小へ
 ・SSG出力80dBステレオ信号送信
  ・IFT204調整 → 歪最小へ
【STEREOインジケータ調整】
 ・IF BAND = WIDE
 ・MUTING = OFF
 ・SSG83MHz 出力20dB
 ・RV251調整 → ステレオインジケータ点灯
【MUTINGレベル調整】
 ・IF BAND = WIDE
  ・MUTING = ON
  ・SSG83MHz 出力25dB
  ・RV252調整 → MUTING調整
【IF NARROWゲイン調整】
 ・IF BAND = NARROW
  ・RV203調整 → NARROWゲイン調整
【Sメーター調整】
 ・RV241調整
【パイロットキャンセル】
 ・RV303、L301 19kHz信号漏れ最小 左右バランス確認
【セパレーション調整】
 ・RV301 R→L ※調整後実測62dB
 ・RV302 L→R ※調整後実測65dB
【CAL TONE】
 ・Peak Level-6dB 398Hzの波形が出ていました。
【AM調整】
 ・RV401 Sメーター調整
 ・RV402 AUTOSTOP調整

受信調整作業

■試聴------------------------------------------------------

 ・当初の不具合はすべて解消しました
 ・シグナルインジケーターがフル点灯、STEREOインジケータの点灯
 ・FM/AMとも気持ちよく受信できています
 ・当時のカタログ写真ではチューナーの定位置はアンプの上でしたね
 ・さぞかし熱かったことでしょう、、
 ・電解コンデンサの劣化も気になるところですが、今のところセーフ、、

SONY ST-S333ESA

ココログ BLUESS Laboratory

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