小田和正 Kazumasa Oda Tour 2023 「こんどこそ、君と!!」東京・有明アリーナ 2023.06.04.
5年ぶりの小田和正を有明アリーナで。
まずは会場の印象から。初めて行く会場はそれなりの期待もあるのだけれど、元々○○アリーナと呼ばれる会場でコンサートを観るのは、交通の便、音、客席の作りからの見え方、導線など総合的な理由で苦手としている。はたして…。
ステージの設置や舞台演出などもあるから一概に言えないけれども、これまでと同じく苦手意識は変わらなかった。比較的新しい会場なので、音楽のコンサートも想定されて作られていると思うが、肝心の音も決してよいとは思えなかった。特にMCはほとんど何を言っているのかわからない瞬間が何度もあった。悪い音の代名詞だった日本武道館の音響が今では改善されていることを思えば、この点は残念だった。
最新作からの5曲に、ソロとオフコース時代の代表曲と定番曲を加えたメニュー。あいだに挟まれる『御当地紀行』を含めて2時間強と聴き応えのある内容だった。
初めて行ったときも驚いたものだが、いわゆる一般的な演出のコンサートではない。当たり前だが、バンドが演奏するメインのステージはある。あるのだけれど、小田和正がそこで歌うことはほとんどない。客席全体に広く設置された花道を歩き、走り、歌うのである。その花道にもマイクやピアノが置かれたサブステージが何カ所かあり、そこでも歌われる。だからメインステージに向かって最前列であっても、自分の身体の向きを変えて、かつ、背中を見ながら楽しまなければならないし、逆に後方の観客のほうが前方席になることが多い印象である。
これに加え、会場の四方八方には演奏される曲の歌詞が映される。これは主に花道ステージで歌うためのカンペ的役割も大きいと思うのだが、初めてこの演出にふれたときは面食らった。客席のどこからも歌詞が目に入るし、小田和正は歩き走り回るので、客として目で追うものが通常のライヴ…コンサートとは全く異なるのだ。落ち着かないったらありゃしない…が、正直な初体験時の感想だった。しかし、小田和正の場合、この演出は吉と出ていると思うのだ。
その理由は、普通のコンサートは ” 観に行く聴きに行く ” のが普通だと思うのだけれど、小田和正のそれは、そこに ” 会いに行く “ という気持ちがプラスされ、まさにそれがぴったり当てはまる…と、会場の空気から感じられることだ。この日も、演奏される音楽と共に、会場を満たしていた演者サイドとファン双方の強烈な " 会いに来た感 " が感動的だった。こうした空気に満ちたコンサートだから、歌われる曲の歌詞をその場の全員が共有することで生まれるファンそれぞれの思いや想いが、目に見えないものなのだけれど、コンサートを構成する重要な要素のひとつ…いや、それがすべてと言っていいかもしれない…になっているのである。こうした独特な雰囲気を持つコンサートは他にはないのではないか。
僕自身も、この日は思い切り個人的な思いや想いをぶつけることが出来た。中盤にさしかかるあたり。オリジナルに限りなく近いバンド・アレンジで歌われた「言葉にできない」。僕の中に1982年が降ってきた。過去のコンサートでも弾き語りで聴いたことがあったが、オフコースの曲がオフコースのアレンジで演奏されると、曲が伝えてくれるものは数十倍、数百倍にもなる。だって、それを歌うのが小田和正なのだから。
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