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マイ・ラスト・ソング 2023 久世さんが残してくれた歌 Billboard Live YOKOHAMA 2023.05.07.

開始から15年の節目でもある今年、全国8カ所のツアーが組まれ、『マイ・ラスト・ソング アンソロジー』と題されたCDもリリースされた。

会場購入特典「マイ・ラスト・ソング劇場」は過去の演奏曲データが収録されているのが嬉しい

ツアー初日のBillboard Live YOKOHAMA。1stステージに足を運んだ。

浜田真理子がひとりステージに登場し、鳴らされたピアノの1音を聴いただけで、違う場所にココロが飛ばされた。後を追って来た小泉今日子が朗読を始めたら、知っているはずなのに知らない世界が広がった。

今回はこれまで演ってきた内容を80分に凝縮したようなメニュー。オープニングからグッときたが、通して楽しい舞台だった。ある意味、原点回帰と言ってもいいかもしれないが、僕が体験したマイ・ラスト・ソングを思い返してみると、毎回が、イチからスタートしているみたいにも思える。特別なテーマが設定されたり新機軸で開催されても、その都度で第1回のような気になる不思議な舞台だ。

世に出た音楽や映画、本は、そのままでそこに存在し続けるが、それを聴き、観て、読む自分は、聴き続け、観続け、読み続けることで成長していく。好きなレコードは何回も聴くし、好きな本を繰り返し読み、好きな映画も何度も観る。把握していることだとしても、あるメロディや歌詞、そして言葉や物語に感動する。知っていることだとしても、あるシーンやセリフ、そして映像に感動する。同じモノなのに、触れたときの気分で、その時点で自分に流れた時間分の、新しい何かを受け取る。受け取ったものは、言葉や文字にできるものもあれば、アタマや心の中だけに生まれるものもある。100人いたら100通りであり、" 何か " の定義は決められないが、この何かを得ることの繰り返しで、人は道を進んでいくのだと思う。

僕にとってのマイ・ラスト・ソングも同じだ。開催されるたびに新たな色付けがされるが、2008年、第1回からの、良い曲を聴かせ伝え残すという柱は不動・不変。久世光彦のエッセイ。小泉今日子の朗読。そして浜田真理子の歌が、演目に異なる深みを毎回与え、違う景色に変えてくれるだけ。それに触れる僕は、そこにそのときだけの何かを見て、何かを受け取っているのだ、15年も。マイ・ラスト・ソングと共に、時間を重ねていることの喜びを感じている。

6月の東京公演がツアー千秋楽。横浜で受け取った何かと共に、そのときに受け取る何かを、今から僕は楽しみにしている。

2023年マイ・ラスト・ソング~久世さんが残してくれた歌~(株式会社 明後日のページへ)


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