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【治療日記23】5回目のキイトルーダ点滴

キイトルーダの点滴入院もすでに5回目。慣れたものである。
いつもの手順で採血・採尿を済ませ、問題ないことがわかったので入院病棟へ。
今回は大部屋でも場所が入口付近ではなく奥のほうの部屋で、なおかつ部屋の中の窓側だった。ラッキー!
入口付近と違って静かだし、トイレと給湯室もすぐ目の前。たった1泊だが、快適に過ごせるに越したことはない。

しかし、場所は良かったのに、同室者が……。
前の人は昼間からものすごいイビキをかいていて、看護師さんとの会話が聞こえにくいほどだった。さすがに看護師さんが起こしにいって、「横向きで寝るといいですよ」などアドバイスをしていた。
それはまだいいほうで、斜め前の人は病気の症状なのだろうが、痰のからんだすごい音の咳をゲホンゲホンと勢いよくする。病気なんだから仕方がないと思うが、それにしても多少の遠慮というか、気遣いのようなものが感じられればいいのだが、そういうものがまったくなく、天に向かって大きく勢いよくやっている感じだった。もちろんカーテンで仕切っているので、どういう体勢なのかはわからないのだが……。この咳が一日中(夜中も)続いた。

そして、お隣さんは大人しい高齢の女性だったが、手術の傷口が開いてしまったようで、「ガーゼを替えてください」と看護師さんに何度かナースコールしていて、最終的には「縫いましょう」ということになった。
しばらくするとお医者さんと看護師さんがぞろぞろと4、5人やってきて、ミニ手術みたいなことが始まった。私のわずか1m先のカーテンの向こうで、「麻酔しますね。これが一番痛いところだと思います」「はい、縫いますね」など、ミニ手術の実況中継が聞こえてくる。患者さんが痛みで「ギャー!」とか言ったらどうしようかと、一人で想像力を働かせて、布団の中でびびっていた。(まったく声はしなかったのでホッとした)

そんな感じで、せっかく良い部屋だったのに、騒がしいというか、なんだか落ち着かない時間を過ごした。

私自身はといえば、また点滴ルートをとるのに3回失敗された。
今回は若い男性の研修医で、見るからにやる気に満ちている。私も多少は協力しようという気になり、一応、左腕の「おすすめの血管」は紹介したが、「これ以外でも、どこでもやりやすいところでいいですよ」と両腕を差し出した。
すると、やる気満々の研修医は
「じゃあ、右腕見せてください。あっ、いい血管あるじゃないですか!」
と、これまで全員が失敗してきた血管を触る。
「あ~、これ、一見良さそうなんですけど、まだこれでとれた方はいないですよ。なんか、難しいみたいです」
私は忠告したが、「いや、これはいけますよ!」となぜか自信満々のその人は、魔の血管にトライした。結果は当然アウト。そら、みたことか!と心の中で思ったが、若者のやる気を応援したい気持ちもあり、「みなさんいけそうだと思っても、無理みたいなんです」とフォローにまわる私。
それが研修医のやる気をさらに燃え上がらせ、「もう一度、チャレンジさせてください!」と言われたので、仕方なくまた右腕を出した。
案の定、また失敗。
「……すみません。やっぱり最初におっしゃってた左の血管にさせてください」
さすがに3回目とは言わず、引き下がって、左のおススメ血管に針を刺した。ところが、これも失敗したのだ。おいおい……
「あ~、すみません!!ちょっと待っててください」
焦った研修医は、またいつものパターンで、「上の者」を呼びに行った。

今回の「上の者」は若い女性で、研修医とそれほど年齢も変わらないように見えたが、やはり経験が違うのだろう。左のおすすめ血管で一発で決めてくれた。最初のチクッとした針の痛みだけで、「え、もう終わったの?」というくらいスムーズだった。
研修医は完全に心折れた様子で、「すみませんでした」と何度も謝って病室を出ていった。
若者よ、がんばれ。こうやって多少の犠牲のうえに良い医師が育っていくのだ。私ももう慣れてきたから、いくらでも犠牲になるさ。(嫌だけど)

点滴は1時間もかからず終わり、あとはひたすら本を読み続けた。今回持っていったのは、中山七里さんの「おわかれはモーツァルト」。今ハマっているクラシック音楽ミステリーのシリーズだ。相変わらず面白く、22時の消灯の少し前に読み終えた。

翌朝、退院。
今回も特に大きな問題はなくホッとしたが、とにかく血圧が高かった。点滴後、180まで上がったので、降圧剤を飲んだが、寝る直前に測った時もまだ177あった。特に頭痛やふらつきなどはなかったので、とりあえず寝て、翌朝また測りましょう、ということになって寝た。
朝一番に看護師さんが来て、起きると同時くらいに測られた。133/86で、なんとかセーフ。やや高めなので一応薬は飲んでいる。

帰ってからは腹痛と倦怠感で何もできなかった。本当は残りの原稿を書き終えてしまいたかったのだけど。
来週からは仕事も本当になくなったし、ぼちぼち家のことをして体を休めながら、エッセイ集の編集を進めていこうと思う。副作用のために思っていたより何もできないまま、あっと言う間に夏が来てしまったが、なんとか年内には発行したい。(エッセイ集のことなどすっかり忘れていたと思うが、実は出版計画は続行中だ)

まずは26日のCT検査までは、できるだけレンビマを休薬せずにがんばろうと思う。次の治療日記で良い報告ができるように。

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