7/3 蟹座12度

高校2年生の頃に、教育実習でやってきた先生に運命を感じた。今日の占いで出会い運は最高だって言っていた。この人は運命の人に違いないと私の直感が告げていた。教育実習の期間は限られている。だから私はなんとしてでも先生と距離を縮めなければならなかった。

彼女はいない。先生は確かにそう言ったけど、本当のところはわからない。でも、いたっていいんだ。だって、別れて私と一緒になってくれればいいんだもの。

それから数週間。努力虚しく、先生と距離を縮めることはできなかった。でも、運命の人なら再会ができるはずと思っていた。先生との再会は、予想を裏切る形でやってきた。

私は大学4年になっていた。家族に大きなイベントが迫ってきている。姉が結婚することになったのだ。私は姉が大好きだった。姉と結婚する人に会えるのも楽しみにしていた。まさか、姉と結婚するのがあの人だったなんて、夢にも思わなかった。

姉の婚約者は、あの教育実習の先生だった。大学時代にはすでに姉と交際していたという。姉からは何も聞いていなかった。彼女がいないなんて嘘だったんだ。ひどい。私はひっそりと泣いた。

数ヶ月後、姉と先生は夫婦になっていた。私は2人が住むマンションを訪ねて行った。事前に義兄が開校記念日で休みだと知っていた。姉は仕事に出掛けている。期待しなかったと言えば嘘だ。

私は、今は義理の兄となった先生とたわいもない話をした。教育実習で私のことはわかっていたと言った。実は姉から私のことを聞いていたらしい。
「先生のことが好きでした」
愚かな私ははっきりと口にした。
酷い先生は何も答えない代わりに、キスをした。
キスに慣れてるような気がして、少し悲しくなった。でも運命だと思った人とのキスは天にも昇るような気持ちにさせた。

私と義兄の間に人に言えない秘密ができてからも、私は懲りずに義兄の元に通い続けた。
数ヶ月後、私たちは身体の繋がりを持った。姉への優越感が産まれた。たぶんドス黒い感情だ。

それから大学を卒業して就職をして、職場の同僚と付き合って別れたりして数年経った。同窓会で再会した元クラスメイトと付き合うようになって、それから結婚をした。姉夫婦には子供も産まれて今度で2歳になる。男の子だ。私は29歳になって、義兄との秘密の関係はまだ続いている。なんだかんだ姉にはバレていない。

ある日、夫と姉の家を訪ねた。姉は優しい。女の嫉妬に心が惑わされても、妹としての私は姉が大好きだ。そんな姉の顔を見て、何故だかさむけを感じた。自分と同じ種類の女のような気がしたのだ。
ふと夫の横顔を見た。左目の下には泣きぼくろがある。姉の子供にも同じ位置にほくろがあった。
これは偶然だろうか?さむけはまだとれなかった。

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