『猫と造船の街』尾道でしか得られない体験から考える観光業のUX
自分にはこれまで5回以上も訪れている観光地がある。
同じ場所に何度も観光すること自体がそもそも珍しいであろう。
それがここ、尾道である。
尾道とは、広島県と愛媛県を繋ぐしまなみ海道がある地区としても有名である。
新幹線のぞみが停まる福山駅から電車で20分となかなかの好アクセスなのである。
街の雰囲気としては、少々昔ながら雰囲気が残る外観である。
街中をほどなく歩いていると、思いがけない発見がある。
それがこの街の最大の魅力の1つ。
猫が人と一緒に暮らしているのである!
人慣れした猫達は、観光客にも平然と近寄ってくる。
観光客の子どもも、猫に興味津々である。
猫に導かれるまま、千光寺の登山道へ向かう。
とある分岐点ですっかり縮こまってしまった彼。どうやらここで自分の使命を全うしたようである。
通称、猫の小道と言われるこの山道は、他にも色々な猫に遭遇する。
なぜか道端でボーッとしている猫もいる。
そんなこんなで道を歩いていると、山道の途中で感じが良い喫茶店が佇んでいたので、遅めの昼食をとることにした。
この景色で食べるたらこクリームスパゲティは正しく最高の体験であった。
山道を登りきると、尾道から瀬戸内海を見渡せる展望台が存在する。
時は16時30分。
日没時間は17時10分だったので、写真家界隈で俗に言われているマジックアワーの時間帯であった。
マジックアワー:夕焼けに照らされ、全てのものが良い感じに撮れてしまう魔法のような時間帯である。
まさしく絶景である。
昔は造船所としても栄えた尾道の街並みが、夕焼けを一層彩る。
猫に象徴される尾道のモニュメントもニッコリ。
片道320円のロープウェイで帰りはさくっと。
ここから見える景色もまたとても素晴らしいのである。
駅に着く頃はすっかり日も沈み、先ほどとまた違った顔を見せてくれた。
以上が尾道で得られる体験である。
前職の先輩が経営されているホテルが福山にあり、一晩を過ごさせてもらうことに。
港町を思わせるホテルのデザイン、倉敷のジーンズ素材を使った寝具が、旅行の非日常体験に花を添える。
普段味わうことができない感情に酔いしれながら眠りに…
と思ったが。
ふと考えたことがある。
ここまで何の気もなく尾道観光について徒然と筆を進めたわけなのだが、実は本題はここからである。
観光業こそ、ユーザーエクスペリエンスデザインの温床ではないか。
なぜ、人々は旅に出るのか。
それは、日常体験とは異なる非日常的な体験を求め、新たな刺激を得ようとする心理が働くからである。
ソフトウェアサービスの設計の文脈でユーザーエクスペリエンスの議論が為される印象を受けるが、その考え方やスキルはリアルビジネスでも活用されるべきだ。
強い観光コンテンツを持つ市街地の方々は、観光客(ユーザー)目線に立って、観光客心理を捉えた上でサービスを構築していくべきなのである。
それこそ、日本のおもてなし文化は最高のユーザーエクスペリエンスデザインと見受ける。
観光客の感情を最優先に考え、自分達が出来る最高のアプローチで観光客の心を揺さぶる。
観光地やホテルにあるモノ一つ一つが、観光客のどういった心理を捉え、どういった体験を生み出しているかを考察してみると少し面白いかもしれない。
明日は瀬戸内海のギリシャと呼ばれる生口島に出向くので、その思考で観察してみたいと思う。
(地方採用の未来について熱く語る前職の先輩。時間を忘れて没頭できる観光体験を作り出すことに打ち込まれてました。素敵な宿泊体験をありがとうございました。)
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