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ふたばZINEフェスティバルの白い幻

ふたばZINEフェスティバル、様々な方とことばを交わしたり旧知の方が通りがかってくださったりで、文芸アドレナリンが出っぱなしあっという間の5時間でした。

ひと瓶に川柳一句を詰めた「ことのはのこびん」は、ぽろぽろとお連れいただけました。自身のことを思うと、本1冊を手にとって開くのはすこし心に負荷がかかります。まして作者が目の前に座っていたりするとなおさらです。

作り手にすれば、本を手にとって開いていただけるところまで辿り着いていただけるならとてもうれしくはありますが、本を開くという負荷を負っていただかなくとも、透明なこびんひとつをひょいとつまみ上げ、中にあるたった1句だけにでも出遭っていただけるなら、と思い、ことのはのこびんをはじめました。1句のみに出遭ってくださった方がお求めくださるひとびんひとびんをお渡しするときに、たった一句を介してそこに生まれる、ことば以上のなにかが通う時間を愛おしく思います。


ふたじんに向けて作成した川柳18句掲載の『月を繕う』は、3冊ほど旅立ってゆきました。

印象的だったお一人の女性は、フリーペーパーとして用意していた、一句を手書きで記した葉書の中から

 鮫という狂気鯨という慈愛

を書いた葉書をお持ちくださいました。自身の句の中で、多くの方には届かないけれど好きな句があり、これはそのうちの一句です。その分類に入っている句を求めてくださる方に出会うと、わたしの核から剝がれたひとかけらを共有してくださるのだなあ、ととてもありがたく思うのです。

もう一人はおそらく二十代の、白いTシャツを清潔に着こなし、やはりうすくクリー色がかった綿のパンツを履いていた男性で、ブースに真っ直ぐに向かってきて、

「『月を繕う』をください」

と中味も見ずにおっしゃり、先のフリーペーパー葉書から

 紙の月不実の半分を愛す

を選んでお連れくださいました。この句も核のひとかけらとして偏愛する句で、「お連れくださりありがとうございます」感がおおきい句なのです。彼のありようは今思い返してもとても不思議で、雨の日の仄ぐらさのなかで発光しているような白いいでたちからしても、もはや素敵な幻だったのではないか、と思っています。

自身はなにものでもないものとしてことばを紡いでいるわけですが、拠って立つ足許の特異性から、多くの人には届かないことばを紡いでいる自覚はあり、その事実が自身の核にぎりぎりと錐をつきたててくることがあります。

錐のぎりぎりを一瞬ふっ飛ばしてくれた素敵な幻くんは、痛みを痛みとして抱えながらそのまま進めよ、ということを伝えに来てくれた天の遣いだったのかしら、と都合よく思ったりもします。


ありがとう素敵な幻くん。

天よ、どうか『月を繕う』を開いた彼を

失望させていませんように。


余談としてはわたしは白い洋服がとてつもなく好きで、ふたじんにも白いワンピースで行きたかったのですが、雨の日にはハネがあがって泥染みができてしまうのを恐れて、どれだけハネがあがってもいい洋服を着ていきました。彼が白を着ていたというのも印象的でした。パンツの裾、汚れただろうな、と変な心配をしたりして。


「きょうは白を着たかったんだけど」のくだりを話した『mimoza』でご一緒のとし総子さん、総ちゃんが「わたしだったら白を着て、ハネが挙がって泥染みができたら、それを雨の日用の白にします」と意気揚々と言ってくれたことは、目から鱗の痛快でした。「着たい日に着たい服を着なくてどうする!汚れるのを恐れてしまっててどうする!人生、守ってどうする!」と頬を叩いてもらったようです。自身を縛っているのはいつも自身でしかない。目から鱗をありがとう。

雨の日お出かけ用の白を作ります。



ということで、見逃したお店のほうが多いのですが😢、ふたじん、なんとも素敵な時間でした。ほかにも書くことはふつふつとあるのだけれど、ひとまずここまで。


出会ってくださった方々、運営の方々、ご一緒させていただいた城水めぐみさん、とし総子さん、とってもありがとうございました🌱 



#ふたじん
#ふたばZINEフェスティバル
#川柳 #Senryu #月音花声


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