ときどき通りがかる道の壁に
おおきく天使の羽だけが描かれている
右の翼
左の翼
それぞれに描かれている
にんげんがそのまん中に立って
羽を生やせるのなら
生やしてごらん、と
描かれている
まん中に立って堂々と羽を生やし
どこかに飛び立つか、と思うが
一度たりとて
そうできたことはない
天使になるには足りないなにかを
なにとわからないまま
羽を見ている
じっと見ている
わからないけれど
わからないまま
わからないから
まん中に立つそのかわりに
紡いだたりないことばたちを
いち枚、またいち枚、と
風にあずける
そうしておいて
どこなのかわからない
飛び立つどこかを
彼方に見続けている
#詩
#月音花声