○○系キャラだよね、と分類される世の中。
『推しのキャラ』と聞くと、皆さんはどなたを想像するでしょう?
その子はきっといくつかの属性に分けられているでしょう。
髪の色や服装、種族や性格。
ゲームやアニメによってキャラクターを商材として売り出されるようになってからというもの、膨大な数のキャラクターが日々量産されています。
だからキャラクターにはわかりやすさが求められてきている。
冒頭で想像した『推しキャラ』も属性を解体していけばご自身の好きな傾向がわかってくるでしょう。好きな属性の傾向は創作で生み出すキャラクターにも影響しがちです。
上述したように、今はわかりやすい属性を持つキャラクターが増え、キャラクターを生み出すのにもテンプレートが整っているといってもよいと思います。
自分で動かしたいキャラクターにもそのテンプレートに載せることは利便性があります。
金髪のツインテールで、ツンデレで、お嬢様口調で話すキャラクター。
もうだいたい想像できてしまいますよね。
でも、なぜ載せるのかを突き詰めて考えることはしないんじゃないでしょうか?
今回はそんなお話です。
なお、合成音声の界隈に関してのみいうと、外見となるキャラクターはすでに存在しているため、動画投稿者が考えるのは内面についてのみとなりますが。
わかりやすいキャラ付けは悪か?
キャラクターをどこかで見たような属性を割り当てるということは別に悪いことではないと思います。動画というコンテンツにするのなら、長くても十数分程度の時間になります。
理解を助けるという意味ではテンプレートに沿ってキャラクターを作るというのは合理的な手段です。
なので、わかりやすいキャラ付けはべつに悪いことではありません。
今回の主眼は『わかりやすい属性をつけたこと』を突き詰めて考えないことにより、もったいないことをしているのではないか、ということです。
たとえば、ツンデレのキャラクターを作りたいという動機があったとして、特徴を書き出してみます。
・好意的に思う相手に対してつい強気に当たってしまう
・ただし二人きりになれば甘えたがりな一面が表に出てくる
至極一般的な特徴ですが、まぁこれでもいいでしょう。
ところで、そんな性格が形成された理由はなにが原因でしょう?
原因を考えるとなると、生い立ちを考えることにつながっていきます。
・社会的地位の高い身分で周りから賞賛されて育ったから気位が高く、自分で好意を認められない
・理想の姉として親に強制されてきて、誰にも甘えられなかったから幼少時代の一面が残っている
・そもそもが違う性格を持つ二重人格者
など、キャラクターの生い立ちを考えていくことによって物語が生まれる契機ができるわけです。それが属性にまみれたテンプレートからすこし抜け出せる要素につながる。そんなふうに思ってます。
うちの動画を引き合いに出してみます。
私が扱いたいキャラクターは、いわゆる○○の属性や、特殊な口調で喋るといった特殊な要素は付けないようにしています。
そして、なるべく公式の設定に準拠するようにキャラクターの性格付けをしています。
一応名前を伏せますが、公式設定は、
・別の惑星から来た宇宙人
・おっとりしていてすこし天然
というような特徴です。なので表面的にはこう描くことにしました。
・誰に対しても丁寧な態度で接する
・静かな性格で多少世間知らず
・人を疑えない
いってしまえば良家のお嬢様というふうでしょうか。なぜこうしたかというと、『地球に来て日が浅い』、『外見の年齢と精神年齢が異なる』といった特徴を持っているからですね。
上述した特徴は、裏を返せば『精神年齢が幼い』『他人の悪意に気がつけない』ということにもなり、付け加えるのであれば『他人を裏切れない』という危うさもはらんでいます。
この弱さが露呈する部分に物語が介入する余地があるとは思いませんか。
そして、物語が入るときにキャラクターは『らしさ』を増す。
自分が好きなキャラクターの属性を割り当てて、そのキャラクターを動かすのは楽しいことです。こと動画を作るにあたっては、壮大な設定を組む必要もありません。小説を書くわけでもありませんし。
だからつい、カテゴライズ「してしまえる」キャラクターとして置かれてしまうのです。印象に残らずにそのまま見過ごしてしまう。
わかりやすい、表面的な属性が先行して別のキャラクターのイメージに塗り替えられてしまう。
そういうのがなんかもったいないなぁと思うのです。
冒頭に書いたように、最近は外見的なわかりやすさを前面に押し出すことがとんと増えた気がします。ですが、それは商材の価値が見た目に直結するからで、表面的に輪郭をなぞると内面的な描写が追いつかなくなるんじゃないでしょうか。
物語は結局、キャラクターの内面が引っ張っていきます。
それって○○系キャラだよね、と分類されてしまう世の中。
もうすこし、突っ込んで考えてみませんか?
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