【詩】心臓のビート

失っていくこれまでの自分を
獲得していくこれからの自分を
今ここにいる自分を
探し出して見つかるわけもなく
周り続ける針の真ん中

私しか通れぬふるいを通り
落ちてきた
はるか坂の上

一番近くにいる、一番逃れたいと思う
自分自身

自己嫌悪の延長が環境の差延なら
あなたはきっと辿り着ける
自分自身に

始まりはいつも一歩
人が進むことのできる距離は一歩
自転車に乗って、降りて一歩
自動車に乗って、降りて一歩
機関車に乗って、降りて一歩
飛行機に乗って、降りて一歩

はるかかなたの遠い砂漠で
ようやく聞こえてくる
あなたが一歩進む音が

歩を進めた振動が
頬を伝って届く
身体でしか聞くことのできない
花火の音のように

存在を諦めなかったものだけが
知る音がいま
ここに聞こえている

心臓のビート

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