鉄道絵本レビュー(11) ふみきりくん
鉄道絵本紹介、第11弾はこちらです。
「ふみきりくん」
文:えのもと えつこ
絵:鎌田 歩
福音館
「踏切もの」第2弾
前回に続いて、「踏切もの」です。
前回の「カンカンカンでんしゃがくるよ」は、1990年(平成2年)の発行、まだ国鉄民営化まもない頃で、登場する車両は、国鉄型車両ばかりでした。
それに対して、今回紹介する「ふみきりくん」は、2016年11月に「こどものとも年少版」として発行、単行本化が2019年(令和元年)10月と、わりと最近の発行で、グッと現代的なお話です。
とはいえ踏切の姿や、電車が行き交う1日を描いているあたりは、「カンカンカンでんしゃがくるよ」と変わりません。
構成も似ているので、オマージュした作品なのかもしれません。
ただ、「ふみきりくん」は、舞台設定がとてもリアルです。
ふみきりくんの舞台について
具体的には、京成本線の海神駅のすぐ脇にある踏切です。
うっすらとですが駅名も描かれているので、間違いありません(笑)
京成電鉄のホームページ内、駅紹介のコーナーにも「(海神駅は)絵本『ふみきりくん』の舞台になっています」との記載がありました!!
ちょっと変わった名前の駅ですが、京成本線の京成船橋から上野方面に一駅お隣りの、普通列車だけが停車する駅です。
かつて京成線沿線民だった自分にとっては、馴染みのある駅名ですが、いつも特急や急行で通過する駅の一つで、降りてみたことはありませんでした。
登場する車両について
さて、そんな海神駅のふみきりくんの1日を描いたこの絵本。
当然ながら京成電車しか出てきません。
しかも、一本だけスカイライナー用の特急車AE形(2代目)が登場する以外は、3000形(2代目)ばかりです。
どちらも(2代目)と書いたのは、どちらも初代の同名の形式があったからです。
自分はどちらも初代の方が思い入れがあるのですが、話題がそちらにそれると脱線しすぎてしまいそうなので、またの機会にします(笑)
3000形(2代目)は、2003年(平成15年)に登場し、2019年(令和元年)までに326両が製造された、現在の京成を代表する形式となっています。
2018年(平成30年)2月時点で京成電鉄の保有営業用車両は582 両だったそうなので、過半数が3000形(2代目)ということになりますね。
だからでしょうか、登場する通勤電車は始発から終電まで、普通も急行も全て3000形(2代目)。
個人的には3600形・3500形など、一緒に活躍する他形式も登場してくれたらもっとよかったな〜と思いますが、そこは主役のふみきりくんを引き立たせるため、あえて割り切ったのかなと思いました。
AE形が登場するということは
ついでに言うと、AE形(2代目)は2010年(平成22年)の登場です。
列車種別としての成田空港連絡特急「スカイライナー」は、この車両が登場すると同時に、京成本線ではなく、成田スカイアクセス線経由になりました。
なので、AE形(2代目)がふみきりくんのいる、京成本線の海神駅に登場するということは、朝の「モーニングライナー」か、夜の「イブニングライナー」ということになりますね。
時間帯や、絵の向きから上り列車と思われるので、「モーニングライナー」で間違いないでしょう。
唯一無二の倍速踏切音
ところで、京成電車の踏切には、他にはない特徴があります。
上り下り両方向から列車が接近している時、一本目が通過した後、カンカンカンという警報音が、カンカンカンカンカンカンと、倍速になるのです!!
反対側からも来るぞ、油断するな!!という感じですね。
これは日本全国でも京成電鉄だけの特徴のようです。
絵本では上下の列車が行き交う場面が2度もあり、せっかく京成電鉄の踏切を取り上げたのだから、倍速の警報音も表現して欲しかったなあと思います。
しかし、京成沿線の人か、鉄道マニアにしか理解されないのも、絵本としては困るので、取り上げなかったのでしょう(笑)
それにしても、京成電鉄の海神駅の踏切が、なぜふみきりくんのモデルになったのか、気になるところです。
トラックくんについて
絵本の後半、急いでいるトラックが、警報音を鳴らしはじめたふみきりくんに突っ込んできてハラハラしますが、実はこのトラックを主人公にした姉妹作「トラックくん」が「こどものとも年少版」として、2023年3月に発行されています。
こちらには電車は登場しませんが、トラックくんが急いでいた理由がわかったり、ふみきりくんと出会う前後の別の物語を見ることができて、おもしろいです。
ぜひ合わせて読んでみてください。
では今日はこの辺で。
ありがとうございました。
〜この絵本に登場する車両〜
京成電鉄
3000形(2代目)
AE形(2代目)
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