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妄想深読み人間ドラマ

例によってまたしても病院のお世話になる。介護生活に疲れた身には、入院は合法的なゲッタウェイ手段であり、読書や映画鑑賞三昧の日々を、痛い処置の苦しみと引き換えに堪能させてもらって、日々の苦しさから逃避するのである。

実際のところ、現実には悠長なことを言える病巣ではないのだけれど、そんなのは検査結果が出るまで医師でさえ分からないことなのだから、知るまでは知らないことにして、この穏やかな入院ライフを満喫させてもらう。

持ち込んだ本は、面白すぎてあっという間に読み終わりそうだったから、途中からペース配分を変更した。
その後、見逃していたドラマや映画、入院時に見るくらいが丁度いいよと勧められていたアニメ番組も次々と制覇していく。
YouTubeもチラチラ見たが、やはり良質の映画やNHKプラス等の映像作品を見た後だと随分見劣りしてしまうものだった。

さて、一通り脳内が様々なフィクションでフル充電された後に、ふと病棟内に響く音や声に耳を澄ますと、様々な人間模様があちこちで織りなされているではありませんか。

足音だけでどの看護士さんが来たのか分かるようになるし、あそこのおじいちゃんにはたまにベテラン看護士さんがヘルプにつくんだなあとか、何となく今あるコミュニティを観察把握するのが楽しい。

ついでに、ナースステーションのメンバー構成もチラチラ見ては、あの方が婦長さんかしら、なるべく失礼のないようにしよう、と考えたり、土日の夜のシフトに入っているナースの皆さんを見ていると、「あーこれは先輩たちに押し付けられちゃったパターンの子ではないだろうか」と勝手に妄想して、この子に面倒が降りかからないようにと密かに私の快癒祈願と共に空を見上げて願ったりもした。

病院の栄養課が考え抜いた献立も、退院したら母のおかずに作ってみよう。入院生活はプロ介護スキルの学びの場でもある。

ありがとう、医療従事者の皆さん。
穏やかな夜になりますように。

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