Talking Machine

“曲からインスパイアーした文章シリーズ~その10~”

「Talking Machine」

朝、目が覚めた瞬間は悲しい気持ちになる。それは自分自身が何物にもなれずに、空虚な一日を過ごすと決まっているからである。


感情は沸いてくる物だと言う事をすっかり忘れて、無機質な部屋でベッドから起き上がってから、カーテンを開けて朝の光を浴びる。起き上がる瞬間の様子は、まるでパソコンが再起動するかと思うほどに静かなものだった。

眩しいばかりの朝日を浴びつつも「こんな、ありきたりな日常は嫌だな…」と気だるい表情を浮かべながら、思わず本音が漏れ出てしまう。

「いや…そんなわけはないだろう」と言い、直ぐさまかぶりを振って打ち消そうとしたが、否定し切れない自分が確実にいる事を自覚した。毎日、何も代わり映えしない日々を過ごしている。そんな現状に対する不満が、悲しい感情の正体である事実に気付かされた。気を紛らわせる為にTVをつけてみると、ニュースでは政治家の不祥事が報じられている。このニュースの内容が本当かどうかなんて、おれにとっては別にどっちでもいい。

その瞬間に ‟なんでこんなにも人生は思い通りにいかないのだろう?” と苛立ちを募らせていた自分に気付いた。もう何年もこんな風にイライラをごまかして何とかやり過ごして生きているのが、もはや “辛い” とさえ感じている。

まるで宇宙空間に浮かぶ衛星から、地球に住む人間を見るかの如くちっぽけだ。おれはこの星から空を見上げているだけで一生を終えるのだ。

感情が沸かない、体温も感じない、ただの人形に変わり行くまでこの生活が続くだけ。諦めているのか恭順しているのか、それさえも分からぬまま今日も街へと出掛ける。




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