Everyone is fighting on this stage of Lonely

“曲からインスパイアーした文章シリーズ~その1~”


「Everyone is fighting on this stage of Lonely」


ここは四方を頑丈な壁に囲まれていた。そして男の前方には途轍もなく強大な敵が憚っていた。

今いる場所から周辺の壁の距離を測るかの様に、周囲を見回しながら脱出する方法を思索していた。 


「ヤバいな…膝が笑ってるぜ」


男は目の前の怪物に対して戦慄のあまりそう呟いた。
そして恐怖から自分の脚が震えていた事に気付く。
だがここで怯んでいては、自分の命さえも危ういと直感した。

正直言って怖い。だが “戦う” 以外の選択肢がない。


俺の周りに “逃げ道はない” のだ。これでは袋の鼠だ、だが目の前にいるアイツは確実に俺の命を狙っている様だ。

心の中でもう1人の俺が言う。


“何言ってんだ?諦めるなんて選択肢はお前にはないはずだろ?少なくとも今はな
詳しい状況がどうなってるか、よく分からねぇけど…進むしか方法はねぇ!!それ以外に生き残る術はない” と




決意を固めいざ敵に立ち向かう。

神なんて信じない、信じる物は己の力のみだ 

相手の懐に入り込み、頬骨を目掛けて拳で殴りつける。

しかし相手の拳の速度が一瞬ばかり速かった。
その拳は俺の頬骨を目掛けて飛んで来た、攻撃を躱す事が出来ずに抉る様な殴打を受けた。

その直後堪らず口から血が出ていた。口の中が切れて所々鉄臭い味しかしない。 立ち上がった時には気付かなかったが、倒れる直前に腹を殴られていた様だ。更にその衝撃で壁に背中を打ち付けられいた。

「くそっ…!!」

頭上から俺を嘲笑う声が聴こえた。
幻聴かと思い声のする方を向いてみたら、何故か観客席があった。

一瞬気のせいかと思ったがそうではなく、現実のものだと認識した。

「無駄な足掻きを」

「お前ごときが勝てる訳がない」

「わざわざ死にに行きたいのか?」


地上の遥か上からは、生死を掛けて闘う者に対する侮蔑の言葉を容赦無く浴びせている。
だがその言葉がかえって男の闘争心に火を点けたのだ。

敵を見据えたその眼差しには闘志が漲っている。

怪物の嘲笑う顔を、何とか歪めんばかりに攻撃を仕掛けた。相手の右の拳が跳んで来たが、左手で相手の腕を掴んで止めた。

“今に見てろよ、この俺を本気にした事をとくと後悔させてやるぜ!!”

“絶対に生きる!” と意を決して相手の懐に入り、溝尾に体当たりを食らわせた。

「ぐはぁ!!!!………」

呻き声を上げて怪物の上体が後ろに飛んだ、男はそこから更にボディーブローを入れた。

「ぐおぉぉ………」

怪物は呻き声をあげたまま仰向けに倒れた。

高みの見物を決め込んだ観客達の中に、この闘いを画策していたらしい人物が紛れ込んでいた。


「こ…こんな闘い……お前の勝利など儂は認めんぞ!!!!」

秘密裏に理不尽なバトルを仕組んだ首謀者は、予想外の結果に顔を真っ赤にしながら激昂していた。

卑劣な手段を用いた自分の命を弄び、踏みにじろうと画策した首謀者に向かって男は

「じきにお前も倒しに行く!」

と宣言し、足早に首謀者の元へと歩き出した。

前代未聞の怪物に勝利した男の足取りは誇りと自信に満ちていた。



 

 

 

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