日本の作曲家⑭

好きなミュージシャン特集でも書いたので被るのですが、やはり個人的にこの方は外せないんですよね。今回は力入れていきます。

AIKOさんです。

誤字ではありません。作詞・作曲のクレジットは大文字です。まあ同じ方なんでどっちでもいいんですが(笑)。

もちろんそれほど好きではない曲もあるのですが、この方の場合好き嫌いを超越していると言うか、凄い曲書きますね。

コードの読解とか、メロとコードのバランスとかで苦労される方も多いと思うのですが、何故かこのことはあまり話題にならない...。

この方の曲、ちゃんと聴かれてないんじゃないかなあ...。

普通に考えると、「何で?」という部分が極めて多い方です。鍵盤で作曲する割に同じ根音でメジャーとマイナーのコードが混在するし、ロングトーンがコード内に無かったりすることもしばしばです、というよりかなり多いです。

普通に考えたら「でたらめな曲」と思われかねません。でも聴いてでたらめと感じる方はそうそういないでしょうし、あのクオリティであれだけの数をこなせる方は他にいないと思います。

で、理論的にも実は説明出来るんですよ。多分aikoさんは意識していないと思いますが(笑)。

まず同じ根音のメジャーコードとマイナーコードが混在する件ですが、これはあまり不思議なことではありません。同主調の和音の借用ですから。

aikoさんの曲、Ⅵがメジャーコードになることが多いのですが、セカンダリードミナントと言えない進行になることも多いです。

実はⅥがメジャーとなる場合、借用という言葉では語れないコードであるため、同主調の借用、という表現だけでは説明としては不充分だと考えています。aikoさんのコード進行を語る上で、半音移動が多い、という点を抜きに考えることは無理です(「半音進行」という表現は誤解を招く可能性があるため、敢えてこのような表現としています)。

ノンダイアトニックコードになる原因を作っている音(ハ長調で言えば黒鍵の音)、前後のいずれかもしく両方でほぼほぼ半音進行して、白鍵の音に移行していると思います。

例えば花火の冒頭部のコード進行ですが、Ⅰー♭ⅦーⅥ(m)ー♭ⅥーⅢ(m7)となっています。

Ⅰー♭Ⅶの進行はノンダイアトニックコードを使った進行としては良くあるパターンなので省略して、次のⅥに行く際に、黒鍵である根音は次のコードの根音へ半音下降しています(当たり前ですが、5度の音も次のコードの5度に半音下降)。で次に出てくるノンダイアトニックコードの♭Ⅵ(これも根音が半音下降ですが)で出てくる黒鍵である根音は次のコードの3度の音へ半音下降、5度の音は次のコードの根音に半音下降するイメージです(この場合、根音より上の音の積み重ねは無視して考えています。何故なら根音が維持されている限り、その上にどんなコード内のどの音を充てようがコードの機能としては変らないからです。根音・3度・5度の順番で並んでなきゃいけないなら、ギターのバレーコードの存在自体がおかしなものになってしまいます)。

そうして考えると実はこのコード進行、理にかなった進行です。こういった進行がaikoさんの曲には多いのですが、これも半音で移動することの意味を実感しているのかと。

ドミナントの代理和音は何か、と言ったら、Ⅶと♭Ⅱですから。半音移動は主和音へ解決しやすい、ということを考えると実は自然な流れです。で、一般的には♭Ⅱは属七の和音を使うように言われていますが、実はその必要はない、というのが自分の考えです。

前にも書きましたが、Ⅴの和音は属七の和音でなくてもドミナントです。その理由は一つには根音が強進行になっていること、主音に対する導音を含んでいることにあります。トライトーンの話は後から出てきた話に近いです。もちろん、トライトーンが曲に緊張感を与え、トニックに解決する、という点を否定している訳ではありません。あくまでも「後から出てきた話」というだけです。

で「導音」ですが主音の半音下のことを一般的には指します。ただ何故この音が導音かというと、主音と半音違いのため、主音に解決しやすいこと、で「普通の音」だからです。

「普通の音」とは調性を構成している音を指しているのですが、もはやこの考え方は時代にそぐわなくなっていると考えています。別に短2度上の音から主音に下降して何が悪いのか、という話です。効果として然したる違いはない、というのが自分の考えです。

この「強進行」ではないことに拘る必要もありません。そもそもこの場合不安定なコードを半音移動で主和音に解決させようとする強い進行ですから。

ただ単に半音で移動し続けるコード進行すら「あり」だと思っています。極論してしまうと、同じ構成のコードを半音づつ移動させるだけで曲になります(半音のコードの流れを「DーT=DーT=D」と見做せるから)。どこかで元に戻さないと永遠に下がり続けますが(笑)。

まあそんな極論はともかく、不安定な半音は安定した音に解決しようとするのが普通の流れです。aikoさんの曲はこれを実に上手く使っていると思います。

ただaikoさん自身がどこまで意識しているのかは分かりません。前にも少し書いたのですが、aikoさんって12音の世界に生きていないんじゃないか、と思うことが多いんですよ。

aikoさんの歌を聴くと実にピッチコントロールが見事で、半音という単位でもなく、1/4音という単位でもなく、1/8音という単位でもなく、シームレスにピッチを意識しているように聴こえるんですよね。

譜面に表せない次元のところでピッチコントロールをしているようなイメージです。

もしかしたら普通の方と全く違う感覚で音が聴こえているのかもしれません。

まあ単なる妄想かもしれませんが(笑)。

ほぼ書きたいことを書いていて、読んでいただけることも期待していませんが、もし波長が合えばサポートいただけると嬉しいです!。