曲と歌詞⑲
今度は雰囲気はがらっと変えていきたいと思います。
一旦このテーマも中断したいと思っているので。
このテーマだと音楽から離れていってしまうので、本来noteを始めた主旨とも違っているような気もするし、それでもまあまた気が向いたら再開するかもしれませんが(笑)。
で、最後に行きたいのが今井美樹さんの「半袖」です。
この曲については以前も書きましたが、涙ものの名曲です。北海道への出張時、飛行機のあの音の悪いチャンネルで聴いたのですが、速攻でCD借りてきました(笑)。結構複製といえども、所有していないと気が済まない人なんですよね。自分の曲がDLされると嬉しいけど、自分がDLはするのは好きではないんですよ(笑)。本当にストリーミングだけだと大した収入にはならないので。
結局金かよ!、と言われるかもしれませんが、それとも少し違っていて、サブスクで聴かれていても、恐らくリストの中の一曲でしかないと思うんですよ。それとダウンロードだと意味合いが違うような気がするので。
あ、歌詞の話してたんですね(汗)。
この曲の詩は岩里祐穂さんが書いてますよね。今井美樹さんに歌詞を提供していることで有名ですが、他にも結構色々な方に歌詞を提供しています。
でも何と言ってもやはり「半袖」を超える作品はないでしょう。
というより、J-POP史上でも最も優れた歌詞と言っても過言でないと思います。
最初は淡々と情景を描いていて、その情景描写が素晴らしいのですが、その後の展開が全く読めません。
で1コーラス目のサビで「清らかな空」の後「苦しくて 苦しくて 倒れそうになる」で、引きずり込まれるんですよね。
何で清らかな空なのに、苦しくて倒れそうになるのか、ここでひっかかるんですよ。
その前の描写が美しいだけになおさらこの部分が強調されて聴こえる、だからこそ聴き手はここで「戸惑い」を覚えると思います。
で2コーラス目の頭「さようならさえ、言い出さなければ 終わることのない二人だけど」の部分で始めてこの二人の関係がおぼろげに見えてきて、その次の「あなたは愛してはいけない人じゃなく 決して愛してはくれない人」でやっと二人の関係性が明確になる、ここで始めて最初からの歌詞の「意味」が見えてくることになります。
歌詞自体が上手く出来ているので、何を意図しているのか分からないのに、分からなくても聴かせてしまう、そして2コーラス目のサビ前、しかも1回だけしかないサビの前で始めて何を表していたのかが明確になる、そうすると、やはり最初の部分からその部分までを「再認識」させられるんですよね。
だからこそ歌詞に「深み」が出るのだと思います。
で、この歌詞の凄いところは、2コーラス目のサビ=最後の部分で
「愛し続ける勇気を それでも私は捨てない」
と来るところです。苦しくて倒れそうになっていた主人公は、それまでの表現だと、どちらかというと、「弱い存在」として描かれていたように感じられていたのに、ここで急に「強さ」を見せるんですよね。
ここで始めて主人公の「意志」が明確になるんですよね。でその言葉の清々しさにやられるんですよ。
どうしてもこのような内容だと、どこかしらドロっとした部分が出てくると思うんですよね。やはり報われない内容だから、不満であるとか、不安であるとか、そういった感情がどうしても出てしまうのが普通だと思います。でもこの歌詞にはそういう要素がないんですよね。強いて言うなら「苦しくて 倒れそうになる」の部分ですが、この部分もむしろ、辛さを自分の意志で自ら受け入れている、ということのように思えます。
やはり最後の部分が効いているんですよね。
1コーラス目のサビ前の美しい描写、1コーラス目のサビの心乱される部分、2コーラス目のサビ前で明らかにされる事実、2コーラス目のサビで語られる決意、これらが有機的に結び付けられて作られているから、この歌詞は素晴らしいんだと思います。
ただ大切なことはこの曲、語っているようで実は語っていない部分があるんですよ。実は二人の関係については明確にされていません。
「不倫」と捉えられることも多いですが、ただ一方的に想いを募らせているだけかもしれないし、そうでないかもしれない。
やはり「語りすぎないこと」って大切だと思います。ある程度聴き手に解釈の余地を残すことは大切だと思います。
やはり説明文じゃないんですから。全部を語ってはいけないのはもちろんですが、どれだけ「余白」を持たせられるか、が歌詞にとっては重要な要素だと感じています。
で、ここまで折角書いたので、明日は今まで書いてきて感じたことをまとめてみたいと思います。
歌詞を取り上げるのは今日で一旦終了にしますが、今まで書いてきて気付いたことがあるので、その点について考えてみたいと思います。