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メイド・ウエスト・ガンパウダー

「お嬢さん、いい加減折れてくださいよ。紙切れ一枚にサインするだけの話ですぜ」

 ギャングじみた一団から進み出た大柄な男が、肩を怒らせながら、まだ少女と言っても良い年頃の「お嬢さん」、つまり私の主人に書類を突きつけている。内容は、この土地の一切の権利を渡す、とかそんなもの。

 少女の先祖が開拓し、代々維持してきたこの土地で、石油が出ると分かったのが数年前。以来、少女の一族は次々”偶然”事件や事故に巻き込まれ、あらかた他所へ逃れたか、あるいはRIPと書かれた石の下。
 多くの使用人が働いていた屋敷は寂れ、土地は荒れ放題。そこでいよいよ、怪しい連中が権利を直接奪いに来たという次第。

「土地中どこもひどい有様だ。お嬢さんに管理が出来ないなら、それを出来る人間に引き渡すのが道理でしょうや。このままじゃ先祖も浮かばれない」

 誰のせいだと言い返すでもなく、少女はただ両手を握りしめて黙っているばかり。そんな態度を貫き半刻、ギャング共は既に痺れを切らし始めていた。

「とっととやっちまおうぜ」
「どうせウチのボスと保安官はグルなんだ」

 そんな言葉が聞こえる中、先頭の男は静かに書類を破り捨てて少女に投げつけると私に近づき、額に散弾銃の銃口を押し付けてきた。

「考えてみろ、使用人も皆逃げて、残りはどこにも拾われねえ連中が数人。これで土地を維持できるわけがねえ。さらに人数を減らしてやっても良いんだぞ」

「やめて、彼女たちは関係ない!」

 初めて恐怖の感情を見せた少女を見て、男はニヤリと笑うと、散弾銃のトリガーに指をかけ、懐からの銃弾に頭蓋をブチ抜かれ、即死した。

 男のホルスターからリボルバーを抜き取り、初弾を持ち主に撃ち込んだ私は、引鉄を引いたまま腰だめに構え、左手で撃鉄を連続で叩く。ほとんど一繋がりになった5発の射撃音の後、5人が地面に倒れ伏していた。

「関係なくはない。事情も聞かずに雇ってもらった恩がある」

【続く】

タイトル画像:Photo by anne-marie robert on Unsplash

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