Project Wingmanとフライトシューティング考(21/10/10)

今日あったこと

・実は誕生日。近頃あまりアッパーな気分でもないのでひっそりと済ませる心持ち。
・と言いつつ少しはスペシャル感が欲しいなと、少し前から気になりつつもハードルの高さを感じていた寿司屋に行ってみた。しかし店内満席テイクアウトも売り切れ。精神力ポイントを使い切る。
・結局よく行くラーメン屋でいつもどおりのラーメンを食べ、帰りにスーパーで普段どおりのラインナップを買い揃えつつ、ヤマザキのパックケーキだけカゴに追加して帰った。今はこれぐらいでちょうどいいということにしておきたい。


本文

・Project Wingmanを遊んだ。XboxGamePass対象。
・エースコンバット04~6(以下AC)への強いリスペクトが詰まったゲーム。遊んでいての感触もほとんどACと同等で、AC7.5……とまでは言わずとも、それに近いような気持ちで一周楽しんで遊ぶことができた。
・なんと言っても個人制作で「AC」と並べて語れる水準のゲームを作った、という事自体が驚異的。海外向け展開で外部の会社が作ったシリーズ関連作ですよ、と言って出されてもそこそこ納得できるかも、という感じ。良作と言ってしまって良いでしょう。

・ただ「本家と同等」とまでは流石に言えないかなという印象もある。やはり個人制作のハードルがあるか、細かなところで不便さや粗が目についてしまう。
・特殊兵装において強制バースト射撃のものが多く、またそもそも爆弾の効果範囲に複数の敵が収まる配置のステージが少なかったりして、全体的に使用感が悪い。
・反撃チャンスが存在しないほどに連続する敵の攻撃など、所々に気持ちよさが阻害される瞬間がある。

・画面のビジュアルエフェクトが強すぎる場面があり、全体に画面が見づらい。特に炎上する地面によって赤く照らされた雲と煙の中で敵エースと戦闘するシーンでは、ほとんど赤色しか視界に映らない。
・こうなると空戦自体が互いの姿勢や位置が不明なままターゲットコンテナだけ見て適当にミサイルを撃つだけの作業になり、敵のトンデモ挙動と合わさり虚無感が強まる。
・後半ステージで「自由に戦域を選べ」「時間制限あり」みたいなブリーフィングのミッションがあり、ストーリー展開含め「6」リスペクトだ! と思ったが実際始まったら特にそういう要素がなくてトーンダウン。これは実装断念要素だったのかも。
・逆にこういう部分を磨いて「気持ちよく・楽しく」調整できることこそが「プロが集団で制作する」ことの強さなんだろうなと思わされ、何が「AC」を「AC」たらしめているか……という部分をかえって思い知らされたような思いがある。

・他方、ボス格となる敵エースが理不尽な急加速や急旋回、範囲攻撃、高耐久力……などによって戦いを挑んでくる構図に関しては「AC」の近作、とりわけ「AC7」と全く同様で、戦っていてのつまらなさも全く同じ。
・別のゲームで同様の体験をしてしまったことで改めて確信したが、これはもう個別の作品の調整の問題ではなく、フライトシューティングというジャンル自体が現状で抱えている限界なのだと思う。
・「AC7」を遊んだ時点でカジュアルな挙動のフライトゲームでエース同士の空中戦を表現することがそもそも困難なのだろうとは思っていたものの、それが更に確信に近づいた形。
・以下考えた内容をダラダラと。AC7に関して結局総括した文章を書く機会を逃してしまったので、それを含めて大分長めの文章になっている。

・大前提として「AC」などフライトシューティングの航空機の挙動は空気抵抗も重力も非常に影響が小さいもので、どんな角度でどれだけ急旋回を繰り返してもほとんど速度をロスしない。これが「AC」のプレイ感の気持ちよさを生み出しているのは確かな反面、戦闘機動によってエネルギーを失う事がない以上、戦闘機同士の空戦の妙味は体感しづらい。
・この挙動の中で理不尽な挙動を取らず、プレイヤーと同程度の性能の戦闘機で空戦機動を取ってくる敵エースを出したとして、それは双方がひたすら旋回戦を仕掛けてどちらが旋回性能が上か、というだけの勝負になる。
・これはあまり面白そうな感じはしない。そこを適度に忖度して「いい感じの空戦を演出する」AIを作ることも考えられるものの、それはそれで別種のハードルがありそうだし、結局どちらかがどちらかを追い回しているだけの時間が長く続くだけになってしまう。
・こう考えると、敵エースの機動として「プレイヤーを無視した超機動でドッグファイトに付き合わない」「定期的な範囲攻撃や角度無視発射のミサイルで常時プレッシャーを与える」というような方向性の調整になるのは理解はできる。

・また、今回「Project Wingman」を遊ぶ中で逆に発見したものとして、基本的に「AC」のプレイ中に要求される技術は「適切に敵機後方を占位してミサイルを撃つ」「適切に兵装と攻撃コースを選択して地上目標を破壊する」「適切な旋回と進路選択で敵ミサイルを回避する」といったもので、これが「AC」的体験、その楽しさのコアになっている。
・こう考えた時、「敵エースとの戦い方」、とりわけ極端な機動で飛び回るそれに対するものは、現状ひどく唐突かつピンポイントに要求される技能になっている。こうした「普段のプレイと地続きでないことをやらされている」感が、AC近作のエース戦への違和感や不満の原因に繋がっている気がする。

・こう考えると「プレイヤーを無視した機動でワンパターンなドッグファイトを避ける」「適度かつわかりやすい攻撃チャンスがある」「シナリオ上の納得感と盛り上がり」といった点で、「Zero」のPixy戦は間違いなく一つの正解にたどり着いている。あのタイミングで正解が出てしまったがゆえに作り手もプレイヤーも苦しんでいるところはあるような。
・こう考えると「ACAH」のDFMがやりたかったこと、解決したかった問題も見えてくる。同作はゲームとしての評判があまりに悪く、個人的な印象としても一緒に導入されてしまったガンシップやヘリはちょっとフォローできないものの、「エース同士の戦い」を表現するためには、空戦システムにおいて同種のチャレンジがまた必要になるのかな……と。

・しかしエースとの空戦時に何かのシステムを導入したところで、それは「無双」で敵武将との戦いのときだけ格闘ゲームになりますよ、みたいな話なんじゃないか、という気もする。
・そもそも「AC」のプレイヤーは敵エースとの戦いをどこまで求めているのだろうか。少なくとも自分は今回のプレイで「ACは大量の敵を鮮やかに倒していく過程が楽しいもんで、別に強力なエースと一対一で決着をつけたいわけではないのかもな……」と思ってしまった。
・しかしそれはゲームのコンセプトやシナリオを全否定する話になってしまうわけで本末転倒。「強力な敵エース」というのは今後もこのジャンルが向き合う厳しいテーマになっていきそうに思う。

・書きたいことは大体書いたのでこのあたりで終わらせておきますが、改めて「Project Wingman」に関して書いておくと、AC7に、フライトシューティングゲームに思うところがある人ほど一度遊んでみる価値があるゲームだ、とも言えるかもしれない。
・少なくとも自分にとっては、自分がACの何が好きなのか、何がこのジャンルの魅力なのか……みたいな部分を見つめなおせる体験になった。

・ジャンルと言えるほどの作品数が(特に近年)出ていないフライトシューティングという分野で、こういう形で相対化して考えられるような作品が出てきた……というのはそれ自体が本当に貴重で面白いことだと思う。
・AC自身やPWの続編、あるいは第三勢力の参入などの形で、今回書いたようなジャンルの限界感、手詰まり感……みたいなものを打破する名作が生まれてくることに期待したい。

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