ナガヤマ・カイジュー・ディフェンス社「ジェットセイバーⅤ」墜落事件
全長50mを超える巨大な怪獣が、住宅を、電柱を、自動車を、総てを圧し潰しながら歩みを進める。立ち向かうのは、上半身が緑、下半身が黄色に塗られた、全高10mほどの人型ロボット。サイズの差を物ともせず果敢に挑みかかるロボットだが、怪獣が吹き出す暴風に押し返され、有効な攻撃が与えられない。
もはやあの怪獣を止めることは出来ないのか。人々がそう思った矢先、赤、青、紫で構成されたロボットが雲中から猛然と急降下し、怪獣に一撃を加えた。
思わぬ攻撃にのけぞる怪獣。その隙に二機は飛び上がると、上空でバラバラに分裂した。怪獣の攻撃で破壊されたのか?否。
その二機は一機にして五機。五機の小型機が任意の組み合わせで変形・合体し、変幻自在の性能を発揮する、最新型対獣機――ジェットセイバーⅤ!
そして五機は一点へと集まり、実戦では一度も見せたことがない形態への変形を試みた。五機の力が一つになった最強の形態、グレートソードスタイルへ!
――
怪獣の侵攻ルートに沿って一直線に破壊された街並みから少し外れた地点。大型商業施設だったそのビルは、屋上から地下に至るまで躯体が激しくえぐれ、顕わになった内装は尽く焼損している。その中心地、五色のカラフルな破片の中心に、巨大な機械の残骸があった。
いまだ消火剤の滴るビルの低層階には規制線が張られ、その中で「対獣機事故調査委員会」と書かれたジャケットの一団が動き回っている。
その中で、残骸の前に立ち尽くす若い男が一人。目の前の惨状に言葉もない様子の彼に、一人が近づき声をかけた。
「そらそら、調査官に新人がいようが世間は待ってくれないぞ」
「奈多先輩……すいません」
奈多と呼ばれた女は、頷くかわりにこう切り出した。
「今、全国、全世界の人々がキミと同じ疑問を持っている」
――あの瞬間、このビルの上空で、「ジェットセイバーⅤ」に何が起きたのか。
「答えを出せるのは、私達だけだ」
【続く】
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