論語13

◇コラム◇
「論語」を読み進めてきたけど、孔子は農業にはあまり関心が無いようだ。君子のすることではない、という感じだろうか。そういう箇所がある。そこを考えていたせいだろうか、孔子が否定している小人や悪の肩を持ちたくなるような気持になったりもした。おれ自身も少し農業をやっているせいもあるだろう。ただおれも農業が本当に好きかどうかはいろいろ思ってしまう。けど向き不向きはあるにせよ、みんな少しは農業できたほうがいいんじゃないか。あとやっぱり「論語」、いいと思うよ。何か普通の人には理解できない、難しいことを書いてあると思いがちだけど、普通にいいことが書いてあるよ。


子路曰く、衛君、子を待ちて政を為さば、子は将に奚をか先にせんとする。子曰く、必ずや名を正さんか。子路曰く、是れ有るかな、子の迂なるや。奚ぞ其れ正さん。子曰く、野なるかな由や。君子は其の知らざる所に於て、蓋し闕如たり。名正しからざれば、則ち言順わず。言順わざれば、事成らず。事成らざれば、則ち礼楽興らず。礼楽興らざれば、則ち刑罰中らず。刑罰中らざれば、則ち民手足を錯く所無し。故に君子之に名づくれば、必ず言うべきなり。之を言えば必ず行うべきなり。君子は其の言に於て、苟くもする所無きのみ。

ここで子路は、孔子だったら衛君のもとでどういう政治をするかを問い、孔子は、まず名を正すと答える。それに子路は、それだから先生はまどろっこしいんですよ、何で名なんか正す必要があるんですか、と調子に乗って言うと、孔子はそれに、子路は粗野だな、と言って、その理由を説明する。


子、衛の公子荊を謂う、善く室に居る。始めて有るに曰く、苟か合まる。少しく有るに曰く、苟か完し。富んに有るに曰く、苟か美し。

自分の家になじんでいくような過程だろうか?ライフスタイルともとれるかもしれない。


子、衛に適く。冉有僕たり。子曰く、庶きかな。冉有曰く、既に庶し。又何をか加えん。曰く、之を富まさん。曰く、既に富めり。又何をか加えん。曰く、之を教えん。

孔子が冉有を連れて衛に行った。孔子は、人々がふつうの感じだね、と言った。冉有は、もうそんな感じですね、この上何をすればいいんでしょう、と言った。孔子は言った。富ませるんだよ。冉有は言った。すでに富んでいます、この上何を富ませるんです?孔子は言った。教育をして心を富ませるんだよ。


冉子朝より退く。子曰く、何ぞ晏きや。対えて曰く、政有り。子曰く、其れ事ならん。如し政有らば、吾を以いずと雖も、吾れ其之を与り聞かん。

冉子が朝廷での用事から帰った。孔子は、どうしておそかったのだ、と訊ねた。冉子は、政治のことで、と言った。孔子は言った。それは一大事だ。政治のことなら、私が参与しないとしても、その話は聴いておきたい。


子曰く、中行を得て之に与せずんば、必ずや狂狷か。狂者は進みて取り、狷者は為さざる所有るなり。

中庸を歩めなかったら、必ず狂狷になる。狂者は先を急ぎすぎ、狷者は何もできなかったりする。


子曰く、南人言えること有り。曰く、人にして恒無くば、以て巫医を作すべからずと。善いかな。其の徳を恒にせざれば、或いは之に羞を承くと。子曰く、占わざるのみ。

孔子が言った。南の人が言うには、人につねにつづくものが無ければ、巫女や医者にはなれない、と。良い言葉だ。易経にも、その徳をつねにつづけていかなければ、羞をうけることになる、とある。占わなくても分かることだ。


子曰く、君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。

君子はいい関係をつくるが、人に合わせているというわけではない。普通の人は人に合わせるが、いい関係にはならない。


子曰く、君子は事え易くして説ばせ難きなり。之を説ばすに道を以てせざれば、説ばざるなり。其の人を使うに及びてや、之を器にす。小人は事え難くして説ばせ易きなり。之を説ばすに道を以てせずと雖も、説ぶなり。其の人を使うに及びてや、備わるを求む。

君子にはつかえやすく、(知的な)よろこびを感じさせるのが難しい。道に外れたことでは、そのよろこびはあたえられない。君子は何かをやる時には、自分を器のようにして、他から取り入れる。普通の人にはつかえにくく、よろこびを感じさせるのは容易だ。道に外れたことでも、普通の人はよろこぶ。普通の人が何かをやる時には、自分にできないことはやろうとしない。


子曰く、善人民を教うること七年ならば、亦た以て戎に即かしむべし。

善い統治者が人々に7年指導したなら、戦争もできるほどになる。

ここは今の日本の価値観からでは、良くない文章だ。


子曰く、教えざるの民を以て戦う。是れ之を棄つと謂う。

指導していない人々で戦争をすることを、人々を棄てるという。

ここは1つ前のつづきだろう。こういった見方は、孔子がやはり政治家だということだろうか。普通の人なら1対1の付き合いが基本だが、孔子は民衆という見方をしている。

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