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61.別離

GWはひとつ嫌なことがあった。

彼が帰省する前日、いつものように夜電話をかけてくれて話をしていた。そこに親友からのLINEが入り、さらには電話もかかってきた。

LINEの内容からしてもこの電話は取らなくてはいけないと思い、彼との電話を切った。ごめんね、と言いながら。


そのまま彼は私の電話が終わるまでしばらく待ってくれていたけど、親友からの電話は長く、仕方なく彼は家に戻った。家に戻る時にLINEを入れていてくれて、1時間は待ってくれていたことがわかった。

親友との電話を終えてから、
翌日から帰省で何日か話せないのに、話が途中になってしまってごめんね、と、いつも言ってくれる大好きが聞けなくて残念だった、とLINEを入れた。


彼からは親友の大変な時だから仕方ないよ、大丈夫だよ、大好きだからねとLINEが帰ってきた。


翌日、彼が何時に出発したかはわからない。聞いてもないし、わざわざ言ってもこない。

普段通りに過ごしていると、彼からの着信があったことに気づく。留守電も入っていた。

それを聞くべくスマホを耳に当てた。


メッセージは一件です。と機械の女性の声。早く彼の声を流してほしいと思っていると、メッセージが流れた。


何も声がしない。聞こえるのはどこか騒がしい場所にいるときの音。ガヤガヤ、館内放送のような音も聞こえた。
そしてメッセージは切れた。


きっとどこかに行って家族仲良く過ごしているのだろう。楽しそうな音なんて聞きたくなかった。

なんだかひとりぼっちになった気がした。

彼に「どこにいくの?」とLINEをすると、「今からアウトレットだ」と返事が来た。

「さっきはサービスエリアで電話したんだよ、昨日大好きって言えなかったから留守電に残したんだけど。」ともう一つLINEがきた。


「周りがうるさくて聞こえなかった。楽しんで。」と返すと、「楽しくはないよ、あなたがいないから」と返事が来た。

「なかよし♡たのしい♡お気をつけて」と嫌味たっぷりで返信した。


それには反応せず、「留守電が聞こえてなくて残念だな」と返事がきた。


家族で帰省。帰省途中にアウトレットでショッピング。

なんだか自分が惨めだ。

GWは必要最低限の連絡のみとなった。

彼にしてみれば私もLINEできる状況じゃなかったり、自分が帰省してるから気を遣って連絡を控えてるようにしか思ってなかったと思う。私が何を考えたり、傷ついたりしてるかはわかってないと思う。

彼がいないGWは、私も楽しむことにした。飲み会三昧。

すごく楽しくて、彼がいなくてもいいな、いやむしろいない方が自由だなと思った。こんなふうに思うのは付き合ってから初めてだ。冷めてきたんだなと実感した。


帰省から戻ってきて、何も変わらない様子で連絡をくれる彼。

めんどくさくて電話が億劫になる私。

電話がかかってくるからなかなか遊びにいけない。そんなふうに思ってしまっている。


この私の気持ちに気づいているからなのか、やたらと夜に電話をかけてくるようになった。しかも私の家に車があるかまで確認するようになった。


ここまでくるとストーカーじゃなかろうか。

何時にいなかったね、と言われると震える。


私ばかり制限されることは疑問だ。
自分は家族と帰省、ショッピング。好きにやってるじゃないか。

それは家族行事だからオッケーという考えなのか。

私は友達と遊んだりする時は必ず誰となのか、場所や時間を知らせなくてはならない。

帰宅したらLINEもしなくてはいけない。

帰りが遅いと怒られる。なぜだろう。

自分勝手な束縛がとても窮屈だ。


嫌だなと思いながら過ごしている。


ある日彼から10分電話いい?と言われた夜があった。珍しいなと思った。普段10分、とか言わない。

予定があるのだなと察した。

電話をして10分経ったくらいで、彼の車のナビの音が聞こえた。

「次、右です」

慌てて彼がナビの音量を下げているのがわかった。


またこれか。また背景の音で傷つけられた。


飲み会終わりの奥さんでも迎えにいくのか?
その合間に私に電話?切ったらしれっとした顔で奥さん隣に乗せて帰るのか?

もう最高にイラついた。

「もう10分経ったよ、どっか行くんでしょ?」と聞くと、「家じゃないね、迎えに」と彼が言う。

「ナビぐらい切れよ。お迎え頑張ってー。じゃあね。」と言い放ち電話を切った。


後にお子さんの迎えだったと聞いたけど、どうでもよかった。


もう疲れた。


こんなことがあり、私はもういやになってしまった。


嫌味を言われるのも嫌だろう。言うのも嫌なのだ。


GWも過ぎ、5月も後半になり、大学生の娘が帰省したいと言ってきた。久しぶりだし、たった数日でしかないので、彼に数日連絡が取れないと伝えた。さみしそうにしていた。少し嫌そうだった。


そんな態度にも苛立ちを覚えた。


自分は家族と仲良くしてるくせに。


いつも私の心にあるのはこれだ。


もう自分が嫌だ。


そして私は彼に1通LINEを送った。


私ばかりが縛られることへの不満。
一度うそをつかれたことによる不信感。
それはきっとこれからも思うだろうということ。

距離を置きたい。私から連絡します。このLINEの返事も要らない。

と。


私が言ったのだからそうなるに決まってるのだが、彼から返事はなかった。

もうすぐ1週間。

私も連絡はしていないし、これからもしない。

彼ももう呆れたのだろう。


今思うことは、少しの喪失感と、自由の素晴らしさの痛感。1年7ヶ月がたった1通のLINEで終わる脆さ。あれだけ好きだと言ってくれた彼がなにもアクションを起こさないことに少し戸惑いと寂しさもある。

でも後悔はない。

バレる前に家庭に戻る。

側にいられないのだから。

いま彼が何を思っているかはわからない。

何も思ってないだろう。もう忘れて次の女性を探してるかもしれない。


胸は痛まない。


私たちの物語はあっけなく終わってしまったけど、
これを読んでくれている方の中で婚外恋愛をしている人がもしいらしたら、必ずいろんな感情を乗り越えてほしい。

私みたいに、疑ってばかりいるとつらくなるから。

辛いと負けてしまうから。逃げたくなるから。


逃げないで乗り越えてください。

婚外恋愛でも、恋愛。
好きになって、好きになってもらえて、幸せな時間、愛情、満たされることがあった。


2度と触れることのできないあの人が、家族と笑い、仕事で成果を出し、さらに輝けるよう、陰ながら祈る。


たくさんつらかったけど、たくさんたくさん大好きでした。ありがとう。

CからHへ。

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