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52.私の取説

三連休前の金曜日、夕方彼から電話があった時に、
「今日はゴルフの練習22時くらいになりそうだ」と言われた。

「言っておかないと待ってると悪いから」とも。

その時は何も考えず、じゃあ私はジム終わったらすぐに帰るね、と言った。


その電話が17時半頃だった。

どこかに到着したらしく、じゃあ行って来るわと彼が電話を切った。


いつもならだいたい18時台に仕事が終わったとLINEをしてくる。毎日そうしてくれている。
だがその日はなかった。

18時半くらいに私が送ったLINEに既読がついたのは21時前くらいだった。

そこから1時間ほど経った22時過ぎ、ゴルフ練習行ってきますとLINEが入った。


その日は
彼の大好きなアーティストのライブがあった。18時半開演。だいたい2時間ちょっとだろう。

でも行くとは言ってなかった。行ったかもわからない。ただ、そのアーティストのライブがあったな。連絡が来なかった時間帯もバッチリ合うな。と思った。
私に連絡ができないということは、奥さんと一緒に行ったのかな。そんなことを考えた。


あともう一つ。その日は近隣学校の終業式だった。

だからご家族でご飯を食べに行っていたのかもしれない。

いづれにせよ、そういうことなのではないかと思った。


そこにきて私は生理前だ。なんだか悲しくなってしまって、その気持ちが止まらない。

仕事が終わったというLINEくらいいつものようにしてきてほしい。いちいち違うことをするからこうして色々考えてしまうのだ。


ゴルフ練習中に送ってきたLINEに私が既読をつけると

「はい!既読ついたー!」と陽気に送って来た。

こっちは返したく無いんだが。家族や奥さんと仲良くしてんなら私要らんだろ。と思った。


「見たタイミングでしょ?偶然でしょ?」と返したら、
「違う、3球打つごとにチェックしてる」と返事が来た。


とりあえず気をつけて帰ってくれと返事をし、
その日はおやすみも言わずに寝た。


翌日の土曜日は朝から彼からLINEが来て、私はあまり返さなかった。
3回に1回くらいの割合で返した。

夜の電話も、私はジムが終わったらさっさと帰ったのでタイミングが合わずできなかった。

彼が私の機嫌の悪さを察知している気はなんとなくした。


いつもなら待ってるからだ。


でも待ちたくなかったので帰っただけ。


女ってすぐ手のひら返したようになる。
男性もそうなのかな。わからないけど。

土曜日もおやすみは言わなかった。

日曜日もずっとそっけない態度をとってしまった。

夜電話がかかってきて、出れるタイミングだったので出たけど、こんなに気持ちが乗らないことあるんだなと自分で驚くくらいだった。


金曜日は何していたのかなんて聞く筋合いもない。権利もない。


そして連休最終日も、ほとんどLINEの返事をしないで終わった。


寝る前には

翌日から忙しくなる旨伝えた。


彼が何を考えてるかわからない。
私の様子がおかしいことに気づいているかどうかもわからない。

今は気が乗らないし、伝えることもできない内容だし、どう乗り越えたらいいかはわからない。

そのうち自然と機嫌は直るだろう。今はいいや。


そんな想いのまま、3連休が終わった。


やっと平日になった火曜日電話がかかって来た。

どうして怒ってるのか聞かれたけど、言えなかった。

翌日の予定を聞かれ、病院の採血検査があると伝えた。それが終わった午後に逢おうと言われ、なんで?と聞いたら、怒ってるから。と。

怒ってるから逢うの?なら、怒ってないから別に大丈夫だと言ったら、ちがう、俺が逢いたいんだと言われた。

何度も電話がかかってきたけど、私が忙しく、ゆっくり話をする時間はなかった。


こういう時は素直に伝えることが大事だ。いつもわかってるのに最初にどうしたの?と聞かれた時に絶対言えないのは何故だろう。

男の人に「察してほしい」は無理だとわかってるじゃないか。

ちゃんと伝えようと決めた。


夜になりジムに行き、帰る頃彼からゴルフの練習に行って来るとLINEが入った。


ちょっと電話できる?と聞いた。

すぐにかかってきた。

私がこういうことを言うことは稀だ。

どうした?と優しい口調で聞く彼。


金曜日の日、17時半くらいに電話が終わっていつもその後仕事終わったってLINEが来るけどその日は来なくて、22時くらいにゴルフ練習行くって言ってたしそれもいつもと違ったからなんだか不安になって、どんどんやだなぁって思ってしまった。そのまま3連休だったからなおさらで。でも不機嫌になっててごめんね。

と正直に伝えた。

彼は何もしてないよ、とは言ってくれたし、そうだねLINEしなかったねごめんね。とも言ってくれた。

何をしていたか、用事があったのかは彼は言わなかった。言わなかったけど、またさらに私を落ち込ませるようなことを言わないという彼の配慮だと思う。お子さんの誕生日だったのかもしれないし、結婚記念日だったのかもしれない。

聞かなくていいことだし知らなくていいこと。

聞かなくていいことや知らなくていいことは私達にはたくさんある。お互いに。

こんな時に親友ちゃんの言葉を思い出す。

家族は大事。戦友だからね。子育てや家庭の業務を円滑に進めるためにはコミュニケーションも必要。でも愛しかったり自分の感情が掻き立てられるのは他の誰でもないあなたのはずだよ。

そんな言葉を思い出す。


最近不倫報道があったミュージシャンがSNSに投稿した内容で家族のことを共に歩んできたチームと表現していた。


まさにそうだなと思う。

そのミュージシャンは叩かれていたけど、不倫をする人は家族のことはチームだと考えていると思う。 親友ちゃんの言う、戦友のようなもの。

毎回こういったことで悩むたび、そことは同じ土俵に立ってはいけない。別物。と言い聞かせている。今回もそうだ。別物なのだ。

彼から電話の後に「話してくれてありがとう。嬉しかった。」とLINEがきた。

どんなことでも聞いてくれる。こちらこそありがとうの気持ちだ。手のひらを返していた私はまたそっと手のひらを戻した。

いつもの気持ちで明日は逢おう。たくさん抱きしめてもらおう。抱きたいと言われたので明日も抱いてもらおう。


翌日はたっぷり甘えて、頭のなかが空っぽになるくらいの濃い時間を過ごした。

木曜日は私が関わってる仕事の会合があり、16時から会議、その後懇親会だった。

彼はまたゴルフに行っていて、毎度「仕事してる?」と思うくらいの自由な人だ。

おそらく17時過ぎにはゴルフ場から会社に戻ったようでメールチェックなどをして彼は自宅に帰る。はずだった。

なのに、私が懇親会中ずっとLINEをしてくる。
口説かれてないか、話しかけられてないか、連絡先聞かれてないか。

途中電話までかけてくる始末。
LINEはひどい時で2分に1回。

心配しすぎなのである。

確かに私と同年代の男性も出席しており、近くで毎週バレーボールをやってるから見に来てください、とか、お綺麗ですね、とか。そういう社交辞令はあるわけで。

それすら気に入らない彼は邪魔をしてくる。輩が話しかけて来れないようにLINEと電話をとにかくしてくる。

会が終わったと伝えるとまたすぐ電話をしてきて、私がタクシーに乗り行き先を告げるまでは切らない。ようやく安心して帰宅したようだ。

この束縛もかなりのもの。私が見せる拗ねっぷりと互角だ。

そして翌日金曜日。彼が夜出かけるというので、普段は絶対聞かない「誰と?」を聞いてみた。


「友達夫婦と」と言ったので、「じゃあ4人?」と更に聞いた。「こっちは4人で向こうは2人。」と彼は答えた。

仲良く2家族でお出かけらしい。

また急に元気がなくなった私。

ふーん。しか言わない私。

困ったようで、「来週休みの日あの韓国料理屋に久しぶりに行こう!」といきなり言ってきた。
木曜日に行くことが決まった。


あまりにもわかりやすく機嫌をとるので、私は「すげー機嫌取るじゃん。」と笑いながら言った。

彼は「とるよ、そりゃ取るさ。また拗ねてるんだもん。」

更に、その翌週は、母が不在の週なのでどれか1日、11時から22時くらいまで一緒にいられるようにすると言ってくれた。

完全に機嫌が直った私は「機嫌なおった!今日は楽しんできてね!」と電話越しでもニコニコがわかるくらいの明るい声で言った。

やだけど、こうしてすぐにわかりやすく機嫌をとり、長い時間を過ごせるようにしてくれる。

どうしたら私の機嫌がなおるのか、よくご存知だ。

でもそうしてくれるには、想ってくれてなきゃしてくれない。面倒くさがって終わりな話。

嫌になったらやめられる関係なのだから。

続ける努力をしてくれるのは愛情を感じる。


私たちができることは少ない。私の家庭と彼の家庭の場合だと泊まりは難しい。奥さんがいる時に連絡してくることも難しい。

できる範囲の中で最大限できることをしてくれる。

そこに、愛ってものを感じる。


今週、私たちは1周年を迎える。特に約束もしてないし、会う予定にもなっていないが、1年も私のめんどくささに匙を投げず付き合ってくれた彼に感謝だ。

1年前より確実に今の方が好きで、きらいになる時もあるけど、きらいがまた好きになる。好きにさせてくれる。

毎日の電話はすこし疲れることもあるけど、

毎日逢いたい、無理なら電話、それも無理ならLINEをする          

と付き合った当初に彼が言ってくれた言葉を思い出すと、まだ毎日逢いたいと思ってくれてるんだなと嬉しく思う。


明日はご機嫌取りの第一弾の韓国料理屋さんでのランチの日。

逢えることが嬉しい。

いつものことながら、今日は早めに寝てお肌の調子を整えて、彼にまた可愛いと言ってもらえるようにつとめよう。


そしたら私はまたご機嫌で、彼の隣でにこにこして、愛おしいと言われてまたご機嫌。


こうした日々がもう少し、続きますように。

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