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58.気持ち新たに

2024年。
彼からの初LINEは「今年も元旦から大好き」だった。

この年末年始はわりと連絡が取れた。だからかもしれないがあっという間に三が日が過ぎた。

親友ちゃんと会ったりしていたから、寂しいとも思わなかった。ただ、逢いたいとそう思った。


5日に帰ってくると思っていたが、3日の夜に帰ってきた。

4日の夜に電話が来て、翌日に1時間逢うことになった。

お正月太りしてなくてよかった。お風呂にゆっくり入り美顔器を当て翌日に備えた。


5日に私の前にあらわれた彼は私服だった。

理由を聞くと、今日本当は会社行かなくていい日で、でも家出れば少しでも逢えると思って出て来た。会社には顔出す程度だったから私服だと言った。

逢いたかったと言われ、彼は私を抱きしめながら「早くこうしたかった」と言った。


1時間はあっという間だったけど、逢えて嬉しかったから3連休は頑張れそうな気がした。


三が日の3日間より少し長く感じたが、やっと長い休みが終わった。


水曜日からまた数日間母が不在だったので、彼とは金曜日に逢った。数ヶ月に一度ゆっくり逢える日。嬉しくて嬉しくて、朝から待ち合わせの時間になるのを待っていた。

13時に待ち合わせ。
ホテルに行き、夜はどこかで飲もうと事前に話していた。

13時待ち合わせとなると、彼がお腹空いてるかもと思い、おにぎりをふたつ作った。

もし何か食べたあとだったら、差し出さずに持って帰ろうと思って紙袋の中に水のペットボトルとともに忍ばせた。


13時ぴったりに迎えに来てくれた彼の車に乗り込み、ホテルに向かった。ホテルの前にあるコンビニに差し掛かると「ちょっと腹減ったからおにぎり買うわ」とコンビニに寄ろうとした。

「あ、おにぎり作ってきたよ?」と言うと、「まじで?!なんなのそのわかってる感じ!きゅんだわー」と48のおじさんがきゅんしていた。


ホテルに着き、すぐおにぎりを食べてくれた。
塩昆布と鰹節と胡麻と青ネギとごま油を入れて混ぜたおにぎり。

うまい!と食べてくれて、毎日この人にお料理作れたら幸せだろうなと思ってしまった。そんなこと一生ないけど。


一緒にお風呂に入り、ベッドに戻り今年初めてのSEX。やっぱり毎回同じではない。何パターンもあるということはそれだけ経験豊富なんだろう。

そのおかげですっかり骨抜きだ。


2回して、ベッドで横になっていたら、彼が「今日金曜日じゃん!店あいてないんじゃない?!」と飛び起きた。色々調べるもだいたいの店は満席。

俺のいきつけでいいかと聞かれ、むしろ大丈夫なんですか?と思いつつ、頷くと電話をかけ予約をしてくれた。


行く店が決まりほっとして、身支度をしてホテルを後にした。


彼の行きつけのお店は、彼と同じくらいの歳の女性がやっているお店で、明るくていいお店だった。
彼が隣に座ってきたけど、私はそわそわしてしまった。

知ってるお店で会社の2次会にも使うお店なのに私を連れてきていいのかなと。


あまり気にしてないのか、それとも、またか、いつも違う女ね。と思われるほど色んな女性を連れてきてるのか、それは謎だった。聞きもしなかった。敢えて私不倫相手なのに大丈夫なの?と口にしたくなかった。彼が大丈夫だと思ってるから連れてきたんだろう。


明るくていいお店だったけど、寒い。1時間くらいで彼がギブアップ。違うお店に移動した。

完全個室で暖かい。

最初からここにすればよかったと彼が言っていた。

隣に座って、飲んで食べて時折キスをして。


楽しい時間が過ぎれば過ぎるほど、帰りの時間が近づく。


最後らへんに不満を言ってしまった。
今考えると何で言ってしまったのだろうと思う。

二軒目のお店は彼に初めて誘われたお店。

1年前はこうだったね、ああだったねと話をしていく中で、1年前よりすき?と聞いてみた。

変わらないよ、全く変わってない。と彼が言った。

全く変わってないのもやなんだよなーと私が言うと、なんで?!と驚いた。


だってあの時はお互いよくわからなかったわけで、1年経って私のこと色々知ってもプラスにはなってないんだなと思っちゃう。

私がこう言った。


彼は、いやいや1年前よりそりゃあ好きだし愛おしいよ。1日1日増してくよ。昨日より今日、今日より明日ってね。そりゃそうだよ。
と言ってくれた。

何でそんなネガティブな方に考えるかなー。変わらず大好きなままだよって意味なのに。と続けて話していた。


そこで私が、
私はネガティブなの。何もしないで寝てね、の返事が、疲れてるし朝早いから何もしないよだと疲れてなくて朝遅かったら何かするのと思ってしまう。
子どもがいるからしないよ、と言われると子どもが遊びにいっていなかったり巣立ったらするのと思ってしまう。と言った。

何でそんなネガティブなのーと笑われた。

じゃあ私が、今日は生理だからしないよ。と言ったら、生理じゃなかったらするのかよって思わない?と聞いたら、思う。思うし、それ俺も言う。と言った。

同じだよ。とふん、とすると、


安心するかなと思ったんだ。子どもがいるからとか朝早いからとか、そう言うことで安心するかなと。でもだったら…って考えちゃうんだね。俺不正解ばっかり踏んでたんだね、と彼が言った。


でも生理云々と言われ、生理じゃなかったらやるんかいって思ってそれを言ったとしても、本気では思ってないよ、心の中ではしてないってわかるよ。1年一緒にいればほんとしてないなって思ってる。と言われた。

私がヒートアップしてしまった。

わかるよ、私もわかるよ。してないだろうなとは思ってる。私もしてない。でも、私は私が嫌で拒否してる。考えられないから、いやだから。でも子どもがいるから、疲れてるから、と言われると、本当はしたいけど、その環境でできないだけで考えらんないとか嫌とかじゃなくて、向こうがその気にならないから、できないってことだと思う。
できる環境になったらしたいってことなの?
私はそれまでのつなぎにはなりたくない。私はこどもがいるからしないと言ったことはない。

よくここまで言ったもんだ。自分でもびっくり。


彼は、「するつもりないよ、全然ない。それはもうずっとだよ。何年もそうだよ。」と言った。

否定してくれてるとは思う。

でもはっきり、

環境で出来ないとかじゃない。できる環境になったとしてもしない。あなたとしかしたくない。しない。と言って欲しかった。

つなぎなんかじゃないと、言って欲しかった。


なんとなく、濁されたように思った。


お店の人が入ってきて、お会計伝票を置いて行った。
彼が支払いを済ませてお店を出る。

私をタクシーに乗せて、バイバイする。

何であんなこと最後の最後に言っちゃったんだろ。と思っていた。


電話が来た。私が家に着くまで話をしてくれた。

帰宅すると、タイミングよくLINEが来た。

今日はありがとう
最高に楽しかった
最高に可愛かった
最高に大好きな1日だった

と書いてあった。

返事を返すとすぐに返事がきた。

怒ってる?嫌いになった?ハートマークがないから…。 と。


忘れてた、おじさんだからハートマークないと不安になっちゃうんだった。


慌ててハートマークに無限大マークをつけて、大好きだよ!と返すと満足そうだった。


彼は可愛い。私の行動や、少しの変化に不安になってくれる。
なんか私に似てきたねと言うと、1年一緒にいるとそうなってくると言っていた。

きっと私が思ってるよりずっと私のこと好きでいてくれてる。
わかるんだけど、さっきのことを否定してくれなかったことだけがモヤモヤする。


ちょっと腑に落ちなかったけど、言わない。

全部を知ろうと思わなくていい。

前に言っていた、私の前での姿と家での姿は違う。そう言っていた。


ちゅーたくさんして欲しいとセックス中におねだりしたり、私が横になってると可愛いとくっついて、水を取ろうと少しでも動くとすかさずどこに行くの?と抱き寄せる。
こんなことを奥さんにしてるとは思わない。

拗ねるとこも可愛い、可愛い顔、全部好き。
こんな言葉を日常的にお家で言ってるとは思わない。

余計なことまで考えてはいけない。

そして帰宅してからの私はいつも通りに夫の靴下やパンツを干している。


結局自分も家庭を壊さぬよう、努めてる。


現実はこうするしかない。


さっきバイバイしたばかりなのにすぐ逢いたくなるのはいつになっても変わらないな。

お母さん業をしながら考えていた。


土日も特に問題なく過ぎまた新しい週の始まり。
月〜木が過ぎ、毎日の電話やLINEは変わらずあるものの、今週は逢えなかったな、と思っていたら、木曜日の午後に「明日時間ないよね?逢ってないから元気がない。不足。充電3%」とLINEが来た。午後なら逢えると返事をし、翌日逢った。


車に乗る私に可愛い可愛いと言い、ホテルに着きコートを脱ぐと、お洋服可愛い、顔ばっかり見てた。可愛くて。とずっと可愛いと言ってくれた。


セックスが終わり、彼が私を抱きしめながら、可愛いなぁーと頭を撫で、ちっちゃいところがまずもって可愛い。本当に可愛い。大好き過ぎて困る。どうしよう。困る。と言った。

なんで困るの?と聞いたら、切なくなる。逢いたいけど逢えないから切ない。少しでも逢いたいと思って既読つかないなぁとかすごく気にする。毎日考えない日はない。と言ってくれた。


すごく嬉しかった。そんなふうに思っていたのかと。

あなたでも切なくなるんだねって言ったら、なる。すげーなる。大好きすぎるんだよ。可愛くてさ。


そんなこんなで仲良くお話ししていたら彼に電話がかかってきた。

知り合いの社長が亡くなったという知らせだった。まだ61だという。


電話を切った彼がベッドにもどってきて、病院嫌いの私を再度抱きしめ、「人間ドックとかして?」と言うから、「私死んだらやだ?」と聞くと、まるで子どものように泣きそうな声で、やだ。やだ。と彼が言った。


いつか誰かのコラム記事を読んだ時こんなことが書いてあったのを思い出した。

長年不倫をしていた相手の女性が亡くなり、会社関係でもあるからその女性の葬儀に参列した男性の話だった。不倫相手と奥様が知り合いだったため、夫婦で参列したと。奥様は棺桶の中の彼女を見て号泣しているが自分は泣けず、でも悲しくて、でも泣けなくて、胸が張り裂けそうだったと。

私も彼も、繋がりがあるからどちらか亡くなれば葬儀には出るだろう。でも泣けないんだな。泣いてもらえないんだな。不倫ってほんとにしてはダメな行為だなと思った。そのコラムを読んだ時は。


結局はその時思っても、私は不倫をやめていない。
ずっとこうなんだと思う。

このコラムの話は彼にはできなかった。



どこに向かうのかわからない。というか、向かう先もない。

この関係はどちらかの配偶者にバレるまで続くのだろう。


また今年も土日は凹み、長期休みは拗ね、逢ったら喜び、抱かれたらまた離れられない。

そんな一年になるだろう。

どうか私と彼が平和に穏やかに過ごせますように。

婚外恋愛なんて綺麗な言葉で語っているけど、つまりは人の道を外れたことをしている私に、まだバチが当たりませんように。


彼が私を今年も好きでいてくれますように。

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