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【人怖話】500円玉にまつわる話

普段は普通に生活をしているが、人はふとした瞬間に魔が差すことがある。
では、どういった時に魔が差すのだろう。

例えば道路にお金が落ちていたとする。
スルーするか拾って交番に届けるかそのまま頂戴するか。
ここで魔が差した人は拾ったお金をそのままお財布に入れてしまうだろう。

もちろん、その人は最初からお金を頂戴する気などなかった。
たまたま、目の前に落ちていたし周囲には誰も居ない、だからつい拾ってしまったのだろう、とその人の内面は容易に想像出来る。

ふっと、コンビニ勤務時代のある出来事を思い出した。
ちなみに当時勤めていたコンビニはすでに閉店しており、登場人物が今どこで何をしているのかは分からない。
少しフェイクを入れて書いていく。

15年程前まで時は遡る。

かつてコンビニで働いていた時に、駐車場に500円玉が落ちていたとバイト仲間Aが拾ってきたことがあった。
本来ならばこういうものは落とし物保管ケースに入れなければならないが、Aはその時レジに立っていたバイト仲間Bに「半分ずつ分けよう、250円あなたにあげるから拾ったことは見なかったことにして」と強引に言いくるめてまんまとお金をゲットしてしまった。

Bは何か言おうとしたのだが、それを言う前に勤務時間終了ということでAはそそくさと退勤してしまったそうだ。

では、その250円はどうしたのかというと・・・。

オーナーに相談するのはさすがにチクりと言われる可能性があるために、私とバイト仲間Cに拾った人の名前は出さずに相談をしてきた。

と言っても、2人体制だから名前を伏せたところでバレバレではあるが。
Cはコンビニの募金箱に入れたらどうかな?と提案し、私は拾ったのは250円ということにして保管ケースに入れたらどうかなと提案する。

Bが取った方法は募金箱に入れるというものだった。
やはり保管ケースに入れるとAにバレるかもしれないと思ったのだろう。
当時の勤め先の店舗のルールでは保管ケースに入れる際に〇月〇日、どこどこに落ちていたというような記入をしなければならない。

もし次に別の落とし物をAが発見して、それがお金でなければ保管ケースに入れるだろう。
その時にこの250円ってあの時の・・・とバレてしまう。
Bはそれを恐れた可能性がある。

性格が大人しくて真面目なBの精神的にかかる負担の少ない方法を考えれば募金箱に入れたことにした方が良いのかもしれない。
まぁ、当時勤めていたお店のオーナーは優しい人だから、募金箱に入れたと言っても怒ることはないだろう。

だから、一番安全な方法としては募金してしまうこと。
そうすれば、拾ったお金は誰かの役に立つから。
もし、落とした人が名乗り出たとしたら、その時はその時で考えるしかないよとCが言っていたのだが、たぶんBはずっともやもやしていたに違いない。

そのうちAは家の事情で急に辞めてしまったので、この500円玉問題は有耶無耶のうちに終わりを迎えた。
お金落としましたと名乗る人物も出てこなかった。

・・・何というか、巻き添え喰らったBが気の毒でしかない。

Bは真面目で嘘をつけない誠実な人なのだが、ちょっとしたことですぐに不安がるタイプであり、心配性すぎる懸念もある。
ただ、働き方を見れば丁寧でしっかりしており安心は出来る。

一方でAはハキハキして誰からも好かれるタイプ。
明るくて社交的でとてもではないが悪いことをするようには見えない。
気の良さそうなおばちゃんといった感じだ。

もちろん、人は外見だけで判断してはいけない。
悪いことを企む人は表面上よく見せることもあるからだ。
それに騙される人がどれだけ多いことか。

では、問題のAは何故500円玉を保管ケースに入れずにBと半分こずつにして頂戴してしまったのか。
おそらくは魔が差したのではないか。

元から悪いことを考えている人ならば、Bに教えずに自分のポケットに入れて発見しなかったことにするだろう。
Bにあげたのも気の良さそうな性格が災いしたのかもしれないが、真面目な彼からしたら迷惑極まりない話である。

当時のAの経済状況など分からないし、もしかしたら少しでもお金が欲しかったのかもしれないし、彼女にとって500円は落とし物のうちに入らないのかもしれない。

だが、500円だろうが1円だろうが落とし物は落とし物である。
マニュアル通りに対処するならば、保管ケースに入れなければならない。

※この辺の細かいマニュアルは店舗によって多少の差はあると思われる

コンビニの落とし物は多種多様だ。
お寺のお守りや神社のおみくじが落ちていることもあれば、競合店のポイントカードが落ちている時もある。
クレジットカード、財布、スマホや小さなバッグも時々見つかることもある。

財布やスマホは小銭と違って落ちると音がしてすぐに気付くと思うのだが、落としてしまったことに気付かないほど何かに夢中になっているのか?と聞いてみたい気もするが・・・。

店員が発見する場合もあるし、お客さんが発見する場合もある。
場合によっては商品を配送してくるトラックのドライバーが発見するというパターンもある。

ちなみに、当時はまだお店にはN子が居なかったので、あの飄々とした彼女だったらどのようなアドバイスをしたか気になるところではある。
N子はお金に関してはかなり真面目に扱うタイプであり、おそらくはAにお説教をしていた可能性は高いかもしれない。


◆N子が登場する話はこちら◆


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