【不思議な夢】光と闇
謎多き男剣士と再会する不思議な夢の話。
気付いた時には夢の世界に居た。
私は赤と黒で装飾されている少し尖った片手剣を2本持ち歩いている。
廃墟の中をあり得ないほどの猛スピードで走り回っていた。
時折敵対者の姿を見かけると蹴り飛ばしたり二刀流で容赦なく斬りつけている。
今までの弱い私ではなく、迷いが一切ない戦い方をしている。
以前のような嘆きの剣士ではない。
目の前に現れる敵は化け物のような姿をしたもの、ネガティブ系宇宙人といったような少し厄介な相手が多かったかもしれない。
それらを一瞬で斬り倒せるほど成長できている。
夢の中では自分の職種を騎士だと自覚していた。
いつの間にか違う職種に転職していたようだ。
敵を倒しつつも廃墟の中をひとつひとつ調べている。
誰かを探しているのかもしれない。
ズシィィィィィン!!
地響きと共に大きな揺れが起きた。
私は焦っていた。
時間がない。
イチかバチかで入った部屋にうずくまっている小さな子供を発見する。
天井がグラグラしている、危ない。
崩れる!?
高速移動で子供の元へ駆け寄る!
ガシッ!
ザザッ!
子供を抱えて床を蹴る。
ガラガラガラ・・・天井が崩れて瓦礫の山と化した。
救助は間に合ったようだ。
ぎゅっと抱きしめた子供の姿を確認すると・・・。
え?
消えてる。
あの子供は一体どこにいった?
子供を抱きしめた感触はまだ残っているというのに。
一体どこに消失したというのだ。
急な展開に私は戸惑う。
あんなに必死に助けたというのに。
スッ・・・。
背後に気配を感じる、今度は誰だ?
振り向こうとした私は真っ黒いオーラを感じ取る。
どうやら、新たなる敵対者のようだ。
恐る恐る相手の顔を確認すると・・・。
そんな、まさか!
あの人だ。
謎多き男剣士の彼だった。
漆黒の衣装と身長より大きな大剣を持っている。
今まで何度も私の夢に出てきたあの人だった。
だが、様子がおかしい。
私のことを覚えてないのか、大剣を構えて近づいてくる。
今にも斬りかかってきそうな勢いだ。
彼の視線からは戦う意志が読み取れた。
私のことを敵だと思い込んでいる様子。
話し合いが通じそうな雰囲気ではなかった。
戦うか逃げるか、瞬時に判断しなければならない。
まずい、彼と戦っても勝ち目はなさそうだ。
今の私は以前とは違う、騎士としての力がある。
といっても、今の彼は私の知っている彼とは全然違う。
全身から溢れて出てくる異様な雰囲気でかなりの戦闘力を感じたが、以前よりもっと強くなっているのが分かった。
姿形は以前のままだが、魂や精神といった中身が違うような気がした。
正面から戦うのはやめた方が良さそうだ。
私は彼に背を向けて猛スピードで逃走を図る!
彼も物凄いスピードで私を追ってくる。
あんな大きな大剣を軽々と抱えてあのスピードで迫って来るなんて!
恐怖しか感じられなかった。
捕まったらやられる。
逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ!
どんなに走り回っても彼を振り切ることが出来ない。
それほどまで彼の走る速度が速かった。
埒が明かない・・・これ以上走ると体力がなくなる。
もう、覚悟を決めて戦うしかない。
私はくるっと彼の方に顔を向ける。
剣を構えて対峙する。
彼は不敵な笑みを浮かべて大剣を構えている。
どうやって彼と戦うか・・・。
私の頭の中はどうやって動くか、どうやって斬りかかるかと考えながらじりじりと距離を縮めていった。
・・・剣を握る手に力を入れた瞬間に目が覚めてしまった。
また、見てしまった。
謎多き男剣士の夢。
ただ、今回はいつもとは違っていた。
いつもの友好的な彼ではなかった。
私のことを敵と認識していた。
一言も言葉を交わすことがなかった。
闇の中に消え失せた後、彼の中身は全く別モノと入れ替わってしまったのだろうか。
それとも記憶だけ消されてしまったのだろうか。
もう、私の知っている彼は居なかった。
次に彼が夢に出てくる時は再び仲間として迎えられるか、それとも敵として戦い続けなければならないのか。
どんな関係に変わっていこうとも、私は前を向いて歩いて行かなければならない。
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