映画と元彼
映画を観ると、元彼のことを思い出す。
これも音楽と同じじゃないか。
映画なんてそんなもので、「オレンジ」を観れば恋愛映画が好きな友人に合わせるために面白いと言って一緒に見ていた中学時代を思い出すし、「実写版アラジン」を観れば文化祭で声をかけてきた男子高校生と一緒に高崎の映画館い一緒に見に行った世間知らずな高校3年生の夏を思い出す。
同じように「君の名前で僕を呼んで」を観れば、付き合う前にAmazonプライムのウォッチパーティーで一緒に電話を繋ぎながら観た幸福な時間を思い出す。何も話さないのに電波だけ繋いでいるのって最高の贅沢だと思った。映像や音楽の美しさ、なによりもイタリアの夏の光景に心を奪われた。将来はイタリアに住みたい、なんて話したっけ。
「Before Sunrise」を観れば、ベネチアのユースホステルのロビーで出会った自分たちのことに映画を重ねる。美しい映画だったな、また観たいな。浜松の部屋で寝転がりながら彼に抱かれて観たから、平気な顔で一人で見れる自信がない。
「ラ・ラ・ランド」を観れば、プロジェクターで一緒に寝転がりながら観て泣いたことを思い出す。ハッピーエンドかバッドエンドか話し合ってずいぶん夜遅くになった。自分の夢か、ロマンスか。わたしたちのエンディングはこの映画がフラグだったのかな。完璧なright person wrong time movieだと思う。エンディングは何回観ても泣ける。
元彼とのことをひきずり始めてからは、元彼と観た映画を何回も観た。音楽も同じように、一緒に聴いた音楽をたくさん聴けば慣れてきて辛くなくなると思った。傷口に塩を塗りたくれば、少しは強くなれると思った。
ぜんっぜん強くなんてなれなかった。あーあ。
逆に、二人で笑い合いながら適当なことを話して映画を観た幸せだった時間と一人で惨めに小さい部屋で小さい画面で映画を観る時間を比べて惨めになるだけでした。わかりきったことを、希望的な観測にのせて、勝手に傷つくという阿保ムーブ。
私は今、実家のソファーで一人でワインを飲みながら”Stand by Me"を観ている。図書館で借りたDVDで観ているんだけど、吹き替えしかなくてちょっと萎えちゃった。声優の声に気が散る。今度はちゃんと字幕のバージョンを観たい。
最近は映画館で映画を観るのがお気に入り。家だと気が散って映画に集中できないから。雑誌を捲り始めたり、調べ物を始めたり、本を読んだり、noteを書いたり。映画館ならつまらなくてもスマホは触れないし他にすることもなく座っているだけだから、映画に集中できて好き。
いつから映画を一人で集中して観れなくなったのか、もう覚えていない。
お酒を飲みながら観る映画が一番幸せだけど、隣にあなたがいてくれたら宇宙で一番幸せな映画鑑賞になるのに。
もしくは、プライベートな空間でも集中して映画を観ることができた私が恋しいだけかしら。
ララランドのエンディングが描いたみたいに、別れた二人にもう一度チャンスがあったらいいのに。この際幻影でもいいから、幸せな時間を想像させてほしい。悲しくならないやり方で。
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