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小説『ウミスズメ』【全17話+あとがき】

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それは、名前の無い青年と少女の出会いから始まった。 存在と不在、日常と違和感の狭間で それぞれ行き場を見失った二人の 奇妙な四日間の物語。 「自分は何者なのか」「存在していると…
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小説『ウミスズメ』第三話:青いカフェ・魚・カラバッジョ

【前話までのおはなし】 僕の名前は「海宝悟」。それは本当でもないし、嘘でもない。 夏のある暑い朝、僕はバイトで吉祥寺のカフェを訪れた。 時代がかった建物と怪しげな雰囲気に怯んだものの、いまさら仕事を断る訳にはいかない。僕は観念して店の扉を開いた。  最初はそれが一体何なのか、すぐには分からなかった。  扉を開けると店内は全体的に薄暗く、ほの青い光に満ちていた。戸外から急に室内を見たせいで視覚がおかしくなったのかと思い、思わず目を瞬いてから改めて周囲を見直したが、変わらず薄