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タキシードサム

人の目を気にするということを覚える前の幼稚園児時代。誕生日が近い園児達の保護者による合同誕生日会が、サンリオの「いちごのお家」で行われたときのこと。

園児達には一人ずつ、選んだサンリオのキャラクターグッズがプレゼントされた。皆それぞれに、自分の好きなキャラクターを担当の保護者に伝えていく。

私はタキシードサムが好きだった。丸いフォルムとつぶらな瞳。何よりも大きな青い体に対して小さな赤い蝶ネクタイをつけている所が最高に可愛いと思っていた。私が保護者に「タキシードサム」と伝えると、その反応は思ってもみないものだった。

「本当にこれでいいの?」

その保護者は実際にタキシードサムのグッズを私に見せ、言い間違いをしているのではないかと確認したが、私が否定しなかったため、さらに少し不思議そうな顔をしたのである。

確かに周りを見れば、キティちゃんにはじまり、マロンクリームやキキララと、暖色を基調とした女の子らしいキャラクターのグッズを手にして皆嬉しそうにしている。

タキシードサムのグッズを手にして喜んでいるのは私だけだ。その時に芽生えた感情は、誠に厄介であり、それから先の拗らせ人生の基盤となったことは間違いない。

みんなと同じじゃない。私一人だけだ。私だけが、タキシードサムの可愛さに気づいてあげられたんだ!


年齢を重ねるにつれ、「人と違うこと」が大変生きにくい世の中であると実感し、そんな自分が嫌になる事も多くなる。が、所詮「人と同じじゃない、変わっている」が最高の褒め言葉である水瓶座に生まれた故に、そんな自分が密かに好きなことは、私だけが知っていればいい。





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