見出し画像

とある夜更け

縛られているのは体じゃなくて心

心が揺れると文章が書きたくなる。言葉にならない思いをどうにか丸めて飲み込んでもう一度描こうとする。無意味なようだけど嫌いじゃないこの作業。誰が見るかも誰も見ないかもしれないそんな言葉を綴るのも悪くないと思う。
夜になると涼しくなり始めた。カレンダーは1枚めくれてまた今年の終わりへと向かっていく。秋は呼吸が軽くなるような心地がする。良くも悪くも自分の存在が薄くなるようでもあって、息がしやすくもあって、少しの寂しさと共に。

変わらないものが欲しいと思う。移り変わる季節の狭間で。変わっていくから愛しいのだと理解している心で、同じように変わらないでいてと願う矛盾。空っぽになっていきそうなこの心を埋めてくれるものを、つい探してしまうのは悪い癖。例えばそう、昔の恋人に連絡を取るような。友人に連絡を取るのは良いのにどうして恋人となると急に苦々しい物になってしまうのか。ふと疑問に思ったけれど結局の所人の想いが複雑に絡んだ恋愛において綺麗な関係修復なんて出来ないのかもしれないなと思った。かくいう私も綺麗なお別れなどしてきたことがない。
何の話だったか。そうそう変わらないものの話。恋愛も友人関係も時間と共に変化していく。一層深まるものもあれば、気がつけばどこかに消えてしまった糸も。そんな不安定さに心細くなったのは自分だけ変わっていないからなのかもしれない。変化していく季節に環境に心についていけない自分。此処に居るのにどこか何かを見失っている気がしてならない。

縛られているのは体じゃない。動き出せずにいる心なんだとじわりじわり痛む何かが教える。大丈夫だと自分に言い聞かせるには不確定要素が大き過ぎるのかもしれない。変化出来ないでいる自分を自分が縛っているのか。

もう少しすれば金木犀が咲くだろう。その香りにつられて思い出す記憶を切なくないと思えるのはきっとまた少し先。それでも良いと思う自分もいる。
秋はこれから。ほの暗くつまらない自分を今日も抱えて、季節を迎えに行く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?