空と原っぱの間、虹をわたって|あるモノローグ
初めて空を見上げたときから、ぼくはあの青が好きだった。
巣の中で、かあさんがごはんを運んできてくれるのを待ちながら、空を見ていた。
初めて空を飛んだとき、原っぱに落っこちそうになって、あわてて着地したんだ。雨上がりの、少しひんやりした緑色の匂い。
今でも忘れない。
なのに今日、ぼくは...
木も草も川もあの雲も、今日がその日だと、遠巻きにぼくにささやく。
神様、と、ぼくはお日さまを見上げる。
このまえぼくの友だちが、アスファルトのうえに横たわっているのを見つけたとき、胸がつぶれそうだった。飛び去りたいのをこらえて、ぼくはじっと、街路樹の葉陰の奥から覗いてた。
茶色っぽい影が、さっと疾風(はやて)のように過ぎたとき、ぼくの友だちはいなくなっていた。
神様、今日がその日なら、せめてぼくは緑の草の繁る木陰に横たわりたいのです。
初めて見あげたあの空と、羽を休めた緑と...その間にいたいのです。
――でも、違うのですね。ぼくも、友だちと同じようにアスファルトのうえで...。
でも...そのあとが、あるのですね――わかりました。それなら...少しだけ、救われる気がします。
* * *
それからしばらく、街のあちこちを訪ねて回った。どこもなつかしい風の匂い。
そしてぼくは見つけた。
あの人だ。
神様が言っていた、青緑色の髪の、女の人。
ぼくが、「もう一度、ぼくは雀に生まれ変わりたいのです」と言ったとき、神様は言ってた。
あの女の人がぼくをつつんでくれるハンカチが、ぼくが次の命を授かる時の、翼になるんだって。
それは、ぼくが、怯えながらも友だちを最後まで見届けた勇気のために、いただける恵みなんだって。
死んでしまうのは恐いけど、そのまま冷たくかたくなって、誰からも顧みられなかったり、粗末にされるのはいやだ。それは、死ぬのと同じくらいこわいことだ。
でも、あの人がその結末からぼくを救い上げてくれる。
空と原っぱの間。
青と緑の間。
それを混ぜた、青緑色の髪の人。
ぼくが願っていたのと、少し似ているね。
それに、なんとなく、晴れた日の海の色みたいで、なんだかキラキラしてる。
やさしい光みたいだ。
雨上がりの虹の、真ん中あたりの色。
そこを通って、向こう側まで渡り終える間、あなたにいいことがありますように――そう祈っていられるぼくでありますように。
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